懲戒処分の妥当性について

弊社従業員がクライアントとの間にトラブルをおこし、そのことについて懲戒処分を検討しています。就業規則上には戒告、譴責、減給処分、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇の計7通りの懲戒処分が明記されていますが、今回の行為についてどの懲戒処分が妥当なのか判断ができない状況です。

そこで、懲戒処分を決定する際のポイントを教えてください。

 

・トラブルの概要

営業代行を行う従業員が、自身の利益のために、クライアントとの契約に反した営業を行い、契約を成立させた。

外部から指摘を受け、事態が発覚に至った。本来ならば、弊社にとって大きな損害が発生するところではあったが、他の従業員の尽力により実際の損害はほぼなかった。

また、該当従業員について過去に社内・社外でトラブルをおこしたことはありません。

 

・就業規則の記載

(懲戒の事由)

1.労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出

勤停止とする。

① 過失により会社に損害を与えたとき。

② 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。

③会社の名誉を傷つけ、信用を落とした時

 

2.労働者が次のいずれかに該当するときは、出勤停止または降職、降格の処分とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては減給処分にとどめることがある。

④ 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。

⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。

⑥業務上の権限を越えまたはこれを濫用したとき

⑦ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若し

くは求め若しくは供応を受けたとき。

回答

懲戒処分については、最高裁判決において、使用者は労働者に対して、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ると述べられており、就業規則によるものである必要があります。また、いかなる処分を行うかは使用者の裁量によるものではありますが、この裁量判断を誤り不当に重い処分を選択すれば、権利の濫用として無効となります。なので就業規則と照らし合わせた上で対象となった行為に対する処分・程度が妥当であるか慎重な判断が必要です。

対象となった行為は、結果的には実損はあまり出ていませんが、会社の経営に大きな影響を与えた可能性があるもので、故意にクライアントとの契約に反し、会社の信用を傷つけたものとみなせます。

就業規則の懲戒事由としては、③会社の名誉を傷つけ、信用を落とした時、⑥業務上の権限を越えまたはこれを濫用したとき、にあてはまるものと考えられ、本来であれば出勤停止または降職、降格、もありうるケースではありますが、結果的に実損があまり出ていないこと、該当者にとっては今回がはじめての件で今後の反省等による改善の可能性、等を踏まえると、質問文の内容からは減給処分とどめるのが妥当ではないかと考えます。

以上はトラブルが発生してからの対応となりますが、トラブルを未然に防ぐためにも、また働き方が多様になってきた昨今の状況に合わせて柔軟に対応するためにも、就業規則の見直しや、コンプライアンス研修の実施等行うこともご検討ください。
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