自宅待機命令をするときの書式はありますか?

社員に対して自宅待機命令を発令しようと考えています。

自宅待機命令をするときの書式はありますか?

回答

自宅待機命令について、法令上の定型書式は存在しません。
もっとも、自宅待機命令は使用者の業務命令権に基づく措置であり、その有効性は「業務上の必要性」「合理性」「社会通念上の相当性」によって判断されます(労契法3条の趣旨、権利濫用法理)。
したがって、紛争予防の観点からは、必ず書面で発令し、以下の事項を明確に記載することが重要です。

1.発令理由(最重要)
自宅待機命令の有効性は「業務上の必要性」によって支えられます。
そのため、
・調査の必要性
・社内秩序維持の必要性
・関係者保護の必要性
・証拠保全の必要性
など、客観的かつ具体的な理由を明記する必要があります。
「総合的判断」「会社判断により」等の抽象的表現のみでは、後日、業務命令権の濫用と評価されるリスクがあります。
訴訟や労働審判では通常、
「出勤させながら調査できなかった合理的理由」
が問われます。

2.法的根拠の整理

自宅待機命令は懲戒処分とは異なり、原則として業務命令の一種です。
ただし、
・就業規則に懲戒出勤停止の規定がある場合
・実質的に制裁的意味合いを持つ場合
は、懲戒処分と評価される可能性があります。
その場合、就業規則の根拠規定、手続保障、比例原則の遵守が求められます。
したがって、書面上は「調査・秩序維持のための一時的措置」であることが読み取れる構造にすることが重要です。

3.自宅待機期間の設定
就業規則に期間規定がある場合はそれに従います。
規定がない場合は「必要最小限」でなければなりません。
長期化すると、
・業務命令権の濫用
・実質的懲戒処分化
・人格権侵害
・退職強要の疑い
と評価される可能性があります。
実務上は、調査工程・判断予定日を内部で整理し、期間の合理性を説明できる状態にしておくことが望まれます。

4.待機期間中の賃金の取扱い
自宅待機が「使用者の責に帰すべき事由」による場合は、労基法26条に基づき平均賃金の60%以上の休業手当の支払義務が生じます。
特に、ハラスメントや横領等の調査目的で、労働者の帰責性が未確定の段階では、原則として同条が適用されると考えられます。
したがって、60%未満の支給は高い紛争リスクを伴います。
なお、企業リスク管理上は、紛争抑止の観点から満額支給とする判断も合理的選択肢となります。

5.待機期間中の遵守事項
法定義務ではありませんが、紛争予防および秩序維持の観点から、以下を明記することが望まれます。
・会社施設への立入り禁止
・関係者との接触制限
・会社からの連絡への応答義務
・守秘義務の再確認
これにより、証拠保全と調査の公正性を担保できます。

6.実務上の留意点(高度リスク管理視点)
自宅待機命令は有効な統制手段である一方、
・理由の抽象化
・期間の長期化
・賃金処理の不備
が重なると、違法評価および損害賠償請求に発展する可能性があります。
発令時には常に、
「第三者が見て合理的か」
「懲戒と誤解されないか」
「期間と賃金の説明ができるか」
という視点で設計することが重要です。

・総括

自宅待機命令に法定書式はありません。
しかし、その設計次第で「有効なリスク管理手段」にも「違法な人事措置」にもなり得ます。
重要なのは形式ではなく、合理性を構造的に説明できる書面設計です。
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