「知っていて損はない」社会保険の内容、主な手続き
2019年5月1日からの新元号が「令和」に決まりました。社会保険手続きに関わる人達にとってはもっと早くに発表をしてくれよ・・・なんて声も聞こえてきそうですね。
4月と言えば新入社員が入社してくる時期でもあり、多くの人事異動がある時期です。それに伴って人事に携わる人は社会保険手続きを行うことになりますが、社会保険手続きというのは、入社、退職などが発生した場合には必ず行う業務であり重要な手続きです。担当者の方々は既に手続きを進められている頃かと思いますが、その手続きについて正しく理解できていますか?機械的に手続きをこなすだけでは見落としなどのケアレスミスに繋がる可能性があります。人事のベテランの方も、異動したばかりの人事初心者の方も、もう一度社会保険の中身・手続きを確認しましょう。
1.社会保険
健康保険、年金保険(厚生年金、国民年金)、介護保険(狭義)の3つに加えて、労災保険、雇用保険の5つを広義の社会保険と呼びます。
①健康保険
病気やけがに対してその費用を一部、国が負担する保険です。
健康保険には、全国健康保険協会(協会けんぽ)、組合管掌健康保険、国民健康保険などがあります。
全国健康保険協会は協会けんぽとも呼ばれています。この保険は民間企業の従業員が加入する保険です。
組合管掌健康保険は、大企業の従業員などが加入する保険です。
国民健康保険は、自営業者などの方が加入する保険です。
健康保険は加入が義務付けられています。
加入先によって保険料や保障内容は違いますが公的な健康保険は自由に選ぶことは出来ません。
傷病手当金や出産手当金は健康保険組合や全国健康保険協会のみで、国民健康保険にこの制度はありません。
しかし、共通の内容はないわけではありません。
高額療養費制度は医療費が高額になった場合、自己負担を抑えることが出来る制度でどの健康保険も共通の内容です。
なお、上記であげた健康保険は公的な健康保険です。
民間の保険も存在します。こちらは、任意での加入となります。
民間の健康保険の特徴は年齢によって保険料が変わることです。
また、もう一つの特徴は審査があるということです。
公的な健康保険は保険証を提示すると自己負担額は3割になりますが、民間の医療保険は給付金を支給する形になっており、保険会社に申請しなければ支給されません。
②厚生年金
第2号被保険者の方は厚生年金の制度を通じて国民年金に加入しています。国民年金の給付である「基礎年金」を加えて、厚生年金を受け取ることになります。
分かりやすく説明すると、国民年金に厚生年金を上乗せした金額を収めると考えるとイメージしやすいと思います。
また、国民年金と厚生年金の両方を支払うことになると、支払う金額も多くなりますが
老後などに支払われる金額も多くなります。
③国民年金
20歳から60歳未満の全ての方が加入します。老後、障害、死亡により「基礎年金」を受けることが出来ます。
第1号被保険者—自営業者、学生、フリーター、無職の人
第2号被保険者―厚生年金の適用を受けている事業所に勤務している者は、自動的に国民保険に加入しています。
第3号被保険者―第2号被保険者の配偶者で20歳から60歳未満の人を指します。しかし、年収130万円以上で健康保険の扶養となれない人は第1号被保険者になります。
厚生年金を払っているから国民年金は払っていないと思っている人は多いのではないでしょうか。私もそのような考え方のひとりでした。厚生年金を払っている人は国民年金も払っているのです。
④介護保険
介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるように、社会全体で支えあうことを目的とした制度です。
介護保険は、健康保険と年金保険とは違い40歳になると加入が義務付けられ保険料を納めることになります。
被保険者である国民は65歳以上になると介護サービスを利用できるようになります。
65歳以上は第1号被保険者、40歳から64歳は第2号被保険者となります。
介護保険料は健康保険料に上乗せする形で徴収、天引きされます。
介護サービスを受けるにあたり、どの程度の介護サービスが必要か判定する要介護認定というものが行われます。要介護認定は要支援1~2、要介護1~5に分けられ、段階に応じた介護サービスを受けることとなります。
介護サービスが必要となった時には、居宅サービス、施設サービス(介護老人保険施設、特別養護老人ホーム介護療養型医療施設)、地域密着型サービスがあります。
⑤労災保険
業務をきっかけとして怪我や病気になった場合に治療費や生活費を補償する制度です。業務のほか、通勤や災害がきっかけでも補償を受けることができます
健康保険とは何が違うのか。怪我や病気の原因が仕事内容に関係あるかないかで適用範囲が変わってきます。仕事内容に関係がある病気などが労災保険の適用範囲、関係ないのが健康保険の適用範囲です。
雇用形態を問わず1人でも従業員を雇っている事業所は、原則加入しなければなりません。労災保険の保険料は事業所が負担します。
⑥雇用保険
労働者が失業し所得がなくなった場合に、生活の安定や再就職促進を図るために失業給付などを支給する保険です。
雇用保険の加入条件は、勤務開始時から最低31日間以上が働く見込みがあること、週20時間以上働いていることです。
正社員の方は上記の条件を満たしているので加入しなければなりません。
雇用保険で受給できる1日当たりの金額を基本手当日額と言います
原則として離職した日の直前の6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額のおよそ50~80%となっており賃金が低い方ほど高い率となります。
2.健康保険と厚生年金の対象者
正社員の場合は社会保険に強制加入となります。
会社が従業員を社会保険に加入させる義務があります。
これを怠ると法律違反となります。
アルバイト・パートの場合は加入条件があります。
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の3/4以上である方は被保険者とされます。
また3/4未満の方でも以下の5つに全て当てはまる人は加入対象となります。
1.1週間の所定労働時間が20時間以上
2.賃金月額が88,000円以上であること
3.勤務期間が1年以上見込まれる方
4.学生ではないこと
5.被保険者が501人以上の企業の従業員
(被保険者数が500人以下の場合、労使合意が取れた場合加入できます。)
アルバイト・パートなら加入しなくてもいいというのではなく、上記の条件を満たしていれば加入しなければなりません。
条件を満たしているのにも関わらず加入しないと、過去2年まで遡り保険料を請求されることがあります。
3.健康保険と厚生年金の喪失手続
社会保険に加入している従業員が退職する場合、被保険者資格喪失届を日本年金機構及び加入している健康保険組合に提出しなければなりません。
被保険者資格喪失届は退職した日から5日以内に提出しなければなりません。
その際に、健康保険証を返却しなければなりません。
4.協会けんぽの扶養手続き
協会けんぽの被保険者となった者に被扶養者がいる場合や被扶養者の追加があった場合、被保険者は事業主に被扶養者(異動)届を提出します。
事業主はこれを日本年金機構に提出します。
(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-02.html 日本年金機構より)
収入要件
年間収入130万円以下、かつ、同居の場合収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合収入が被保険者の仕送り額未満であることが収入要件です。
提出は事実発生から5日以内です。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
社会保険手続きは重要な手続であり、人事に携わる人は必ず行う業務です。
社会保険手続き関連の業務というのは、従業員の生活に直結するもので、また、会社の信用にも繋がります。
会社によって加入する保険が変わるものがあります。社会保険手続きをスムーズに行うためにも改めて社会保険の内容を確認しみてはいかがでしょうか。
人事部サポートSRでは社会保険手続きのご相談だけではなく、人事関連全般のご相談を承っています。
お悩み事があればこちらからお気軽にご相談ください。
宮尾雄太
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