1年単位の変形労働時間制について

2026年4月1日から1年単位の変形労働時間制を採用し、2026年4月1日開始日の年間カレンダーを組んでいます。大口受注で下半期が忙しくなりそうなので、閑散期想定で短く組んだ月を、繁忙想定の長いシフトに組み替えたいと考えています。従業員の同意も取れそうで、就業規則にも「業務上の都合で勤務を変更することがある」と明記しています。労使で合意のうえ、シフトとカレンダーを変更してよいでしょうか。

回答

結論:変更してはいけません。労使合意があっても、就業規則に変更条項があっても、対象期間の途中で会社都合により労働日・労働時間(シフト・年間カレンダー)を変更することは、原則として一切できません。強行すれば変形労働時間制そのものが無効となり、対象者全員・全期間の労働時間を原則(1日8時間・週40時間)で再計算する、すなわち多額の未払い残業代という重大リスクが生じます。

理由:
1年単位の変形労働時間制の生命線は、労働日・労働時間を事前に特定することです。後から自由に動かせれば社員の予測可能性が崩れ、制度の前提が失われます。裁判例(JR西日本〔広島支社〕事件・広島高判 平成14年6月25日)でも、「業務上必要なら変更する」という抽象的な規定は特定の要件を満たさず、変形制は無効と判断されました。つまり「書いてあるから危ない」のです。

違反のリスク
変形制が無効になると、8時間・40時間を超えた労働がすべて時間外として再計算され、対象者全員・全期間に25%以上の割増賃金を遡及して支払う義務が生じます(賃金請求権の時効は当面3年)。付加金や遅延損害金のリスクもあります。1か所の変更が全社的な未払いに発展しかねません。

例外は非常事態だけ
大規模災害(東日本大震災級)や感染症などで、実施が経営上著しく困難・不適当な場合に限り、協定の解約(変更ではありません)が可能です。通常の繁忙・受注増は該当しません。解約する場合も、超過分(週40時間超の平均)の割増賃金を清算し、所轄労基署へ理由・内容を届け出る必要があります(労働者を不利益にしない)。

正しい対応
カレンダーは触らず、36協定の範囲内で残業させ割増賃金を支払うのが最も安全です。繁閑のズレが毎期出るなら、来期は区分期間方式(後半の各期間を開始30日前までに確定する方式)で設計しましょう。
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