個人負担分の社会保険料を会社で支払った場合の取扱い

この度、従業員が里親となるため休職を申し出ました。この休職期間中、会社の方で本人負担分の社会保険料を支払った場合の社会保険、雇用保険、源泉所得税の取扱いはどうなりますか?(各種給付金の支給対象外の事由による休職です。)

回答

① 社会保険(健康保険・厚生年金保険)
会社が休職者の「個人負担分社会保険料相当額」を支給すること自体は可能だが、その金銭は社会保険料そのものではなく「金銭支給」として扱われる。
■法的整理・根拠
厚生年金保険法 第82条
保険料は事業主と被保険者が折半負担
健康保険法も同様に「労使折半」が原則
(実務上の扱い)
社会保険料算定の対象となる「報酬」に含める

② 雇用保険
雇用保険料は課されない(算定対象外)
■法的根拠
・雇用保険法 第4条第4項
賃金とは、労働の対償として支払われるすべてのもの
・労働保険徴収法
「賃金」は労務提供との対価性が必要
☆本件への当てはめ☆
・休職中
・労務の提供なし
・社会保険料相当額の補填目的
→労働の対価性がない
→ 雇用保険上の「賃金」に該当しない
(実務上の結論)
雇用保険料の控除・会社負担ともに不要
賃金台帳上も「雇用保険対象外支給」として整理可能

③ 源泉所得税(所得税)
源泉所得税は課税対象になる
■法的根拠
所得税法 第28条(給与所得)
給与、賃金、手当、賞与その他これらに類する性質を有するもの
■国税庁の通達・解釈
本来本人が負担すべき費用を会社が負担した場合、それは「経済的利益」として給与課税
☆本件への当てはめ☆
社会保険料の本人負担分は、本来従業員が負担すべきもの
会社が代わりに金銭支給・補填
➡ 給与として課税対象
(実務上の扱い)
源泉所得税の計算対象に含める
年末調整・源泉徴収票にも反映が必要

【ポイント】各種給付金との関係
各種給付金の支給対象外の事由による休職であれば、給与支給がその給付に影響する可能性は低いと考えられます。
ただし、「給与がある=就労実態がある」と解釈されないよう、理由と根拠を就業規則・覚書等で整備しておくことが望ましいです。

★まとめ★
▽社会保険 保険料算定対象  労使折半は法定、補填は保険料ではない
▽雇用保険 対象外      労働の対価性がないため
▽源泉所得税 課税対象     経済的利益の供与=給与
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