特定の期間だけ変形労働時間制にできる?注意点は?

弊社は1日の所定労働時間8時間、土日祝を休日としていますが、毎年5~7月の3ヶ月間は業務多忙で、日曜日しか休日が取れない状況です。この期間の1日の労働時間に変更はありません。3ヶ月間のみ変形労働時間制とすることは可能でしょうか。また、変形労働時間制を採用すると、3ヶ月以内の期間であれば労働日数に制限がないと聞いたのですが本当ですか。

回答

変形労働時間制は1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができる制度ですが、対象期間を平均して1週間の所定労働時間40時間以内が達成できることが要件であり、長時間労働を認める制度ではありませんので、まずそこをご理解ください。

変形労働時間制は1年を通じて適用しなくともよく、特定の期間のみ適用とすることが可能で、代表的なものに
「1ヶ月単位の変形労働時間制」、「1年単位の変形労働時間制(以下、1年変形)」がありますが、今回ご質問に「3ヶ月以内の期間」とあるため、1年変形について説明します。

1年変形は、1ヶ月を超え1年以内の期間を平均して1週間の労働時間を40時間以内とする制度で、1年以内のある程度長い期間の中で繁閑がある会社に向いていると言われています。対象期間が3ヶ月であっても6ヶ月であっても「1年単位の変形労働時間制」と呼びます。
就業規則に1年変形を採用する旨を定め、且つ、労使協定を締結し管轄の労働基準監督署に届け出ます。
1年変形は制約が多く、主なもので以下があります。
・労働時間の上限は、1日10時間、1週52時間
・連続労働日数は原則として最長6日
・労働日数の限度は原則として1年あたり280日

上記、労働日数の限度ですが、対象期間が3ヶ月以内の場合は確かに制限はありません。ですが、3ヶ月間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えないようにできていることが要件となります。
貴社は5~7月において日曜日しか休みがなく、1日8時間労働とのことですから、3ヶ月間の平均で1週40時間を達成できませんので、より長い期間を対象期間とすることとなります。
例えば2022年5月1日から10月31日までの6ヶ月間を対象期間(歴日数184日)としたとき、労働日数の上限は141日となります。
(計算式)280日×184日÷365日=141.15

変形労働時間制は協定を締結したり、また、今回説明を省略しましたが、時間外労働時間の集計も完全週休2日制と異なるため、煩雑となります。何より社員への周知・理解が必要です。
完全週休2日制のままで、時間外労働・休日労働に関する協定の範囲内で時間外労働をさせる方が、社員にとっても処理を行う部署にとっても負担がかからないことも考えられます。
貴社の実態をもう一度精査し、変形労働時間制を採用することが適正であるか見定める必要があるでしょう。
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