裁判員休暇の取り扱いについて留意すべき点は?

当社の社員が裁判員制度の候補者となり、休暇を取得したい旨の申告がございました。これまで前例はなく当社では初のケースとなります。休暇の取得にあたり気をつける点についてアドバイスをお願いします。またその場合、給与から裁判員の日当分を差し引いて支給するなどの対応は必要でしょうか。

回答

従業員の方が裁判員等に選ばれた場合、裁判員の仕事に必要な休みを取ることは労働基準法7条にて次のように定められております。
「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。」

記載の通り請求された休暇については拒むことはできません。但し、その休暇を有給または無給にすることについては各企業の判断に委ねられています。
法的に義務とされているわけではありませんが、裁判員に選ばれた従業員の方が参加しやすいよう特別の有給休暇とされることが望ましいです。無給としても問題ありませんが、従業員自らの申請により有給休暇の取得も可能であることを説明しておくと良いでしょう。

給与と日当の兼ね合いですが、裁判員には1日1万円以内,裁判員候補者には1日8千円以内の日当が支払われます。有給とする場合は、例えば「1日分に相当する給与額(例えば1万5千円)と日当相当額(例えば1万円)との差額(例えば5千円)を支給する。」というように、給与額と日当相当額との差額分のみ支払うことは問題ありません。裁判員制度の日当は裁判員としての勤務の報酬ではなく、職務を遂行することによる損失補填ですので、給与と日当を両方受け取ることは二重取りにはならないとされています。

但し、出勤率の取り扱いには注意が必要です。
出勤率の計算に該当の休暇を含めることは裁判員法第100条が禁止している不利益取扱いにあたる可能性があります。そのため、賞与の欠勤控除や有給休暇付与等で算出する出勤率8割の計算には、労働すべき日に含めないこととすることが妥当です。

また、裁判員休暇の取り扱いについては就業規則に明記しておくことが望ましいでしょう。裁判員に選任されたことを事前に把握しておく必要がありますので、従業員が報告することを規則に定める点を留意いただくようお願いします。


参考:法務省 従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のQ&A
http://www.moj.go.jp/keiji1/saibanin_qa_others.html
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公開日: 就業規則 有給休暇

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