同業他社への転職は禁止できる?

このたび、当社を退職する社員がおります。同業他社への転職についてですが、当社としては避けてほしいため、「同業他社へは転職しない」という旨の誓約書を書いてもらいたいと考えていますが、現実的にこの誓約書は有効となりますでしょうか。

ご教示いただけますと幸いです。

回答

同業他社への転職の禁止は法律用語にて「競業避止義務」といいます。
この「競業避止義務」ついては、日本国憲法第22条「職業選択の自由」と相反するため、実効性についてはかなり判例でも様々です。
「競業避止義務」契約の有効性の有無は経済産業省の以下資料にまとめられており、次の6つの観点から、判断されています。
「参考資料5競業避止義務契約の有効性について」https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference5.pdf
  
①守るべき企業の利益があるかどうか
→不正競争防止法によって明確に法的保護の対象とされる「営業秘密」はもちろん、個別の判断においてこれに準じて取り扱うことが妥当な情報やノウハウについては、競業避止義務契約等を導入してでも守るべき企業側の利益と判断されている。

②従業員の地位
→従業員の地位が競業避止義務を課す必要性が認められる立場にあるものといえるか。

③地域的な限定があるか
→業務の性質等に照らして合理的な絞込みがなされているかどうか。

④競業避止義務の存続期間
→形式的に何年以内であれば認められるという訳ではなく、労働者の不利益の程度を考慮した上で、業種の特徴や企業の守るべき利益を保護する手段としての合理性等が判断されている。

⑤禁止される競業行為の範囲について必要な制限が掛けられているか
→企業側の守るべき利益との整合性が判断されている。

⑥代償措置が講じられているか
→競業避止義務を課すことの対価として明確に定義された代償措置でなくても、代償措置と呼べるものが何も無い場合には、有効性を否定されることが多い。

元社員と訴訟になった場合には、これらの点を総合的に考慮して、有効・無効が判断されます。
誓約書を記載してもらったからといってそれが必ず有効になるわけではありませんが、有効性が高くなるような誓約書内容にしていただき、退職者へ意識づけの意味でもお取りください。もっとも、退職が判明してから誓約書を記入いただくのでなく、就業規則への記載や、役職・地位別に内容を変える場合は入社時や昇格時に誓約書を記入いただく方が抵抗がないでしょう。
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