会社分割を行う際に36協定は締結し直す?

弊社のある事業所が、会社分割を行い別会社として独立することになりました。
ただ、会社名が変化するだけで、事業場の場所や人員、業務内容等は変わりません。
この場合、会社の変更により36協定を取り直さなければならないのでしょうか?

回答

会社分割を行った際の36協定については、その事業場の状態が、会社分割を行う前後で同一であると判断されるか(「事業場の同一性」があるかどうか)によって異なります。
同一性があると判断される場合は引き続き分割前の36協定が有効であり、同一性がないと判断される場合は新規に36協定を締結する必要があります。


お問い合わせの件の場合、場所、人員、業務内容に変更がないとのことですので同一性があると判断される可能性が高いかとは思いますが、「事業場の同一性」の判断は、法律上明確に規定されている性質のものではありませんので、事前に労働基準監督署等に確認するのが無難かと存じます。


労働基準法第24条、第36条等の労使協定については、民事上の権利義務を定めるものではないため、分割契約等に定めることにより承継されることはありませんが、会社分割の前後で事業場の同一性が認められる場合には承継され(引き続き有効と解され)、事業場の同一性が失われた場合は、該当する労働基準法上の免罰効が失われることから、当該効力発生日以後に再度、それぞれの規定に基づいて労使協定を締結し届出をする必要があります。


代表的な労使協定と留意事項は、以下のとおりです。
・時間外・休日労働(労基法36条):有効期間 上限時間 特別条項の有無
・賃金控除(労基法24条):法定外の控除項目の有無とその種類
・一斉休憩適用除外(労基法34条):休憩時間を一斉に付与しない労働者の範囲とその付与方法
・事業場外みなし労働時間、フレックスタイム、裁量労働(労基法38条2項、3項、32条):対象労働者の範囲、対象業務、勤務時間の取扱い
・育児・介護休業法上の休業対象者除外規定(育休法6条、12条):有期雇用契約者の適用基準
・年次有給休暇の計画的付与(労基法39条):計画的付与に係る年休日


会社分割を行う労務リスク
組織再編は労働環境の変化が想定されます。以下の労働条件について再編後の変化を洗い出す必要があります。
①労働時間 → 1日の所定労働時間、所定休日、休憩
②休暇・休業 → 年次有給休暇、特別休暇、育児休業、介護休業
③定年 → 定年年齢、継続雇用制度
④賃金 → 基本給、諸手当、割増賃金、締日・支払日、賞与
⑤制度 → 役職、等級、退職金、評価
⑥福利厚生 → 社宅・寮、出張旅費、慶弔見舞金、団体生命・損害保険
⑦そのほか → 従業員区分・転勤・出向・転籍

最終的には個々の労働契約の内容を確認する必要があります
まずは就業規則をはじめとした各種規程、労働協約や労使協定等、諸規程の内容及び整備状況を確認後、個々の労働者の労働条件(個別の労働契約書)を確認しましょう。特に賃金に関しては、分割後の承継先の会社の賃金制度に変更するとしても、月収や年収ベースで減額しないよう配慮する必要があります。
また、就業規則や各種規程、労使協定の内容と運用実態では乖離が生ずる可能性があるため、書面確認後は、「実際に正しく運用しているか」を把握し、チェックすることも必要です。
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