喫煙を理由に採用しないことは可能か?
弊社は食品製造業を営んでおります。
商品ににおいがつく懸念もあり、喫煙者は採用したくないと考えておりますが、非喫煙者のみを対象として、募集をすることはできるのでしょうか。
また、喫煙者を不採用とすることはできるのでしょうか。
回答
喫煙のみを理由に採否を決定することは、就職差別につながりますので、非喫煙者のみの募集や喫煙者を不採用とすることは不適切と言わざるを得ません。
不適切な対応を行えば、企業全体の社会的な信頼を失いかねません。
喫煙自体は本人の趣味嗜好に関することですので採用選考の基準とすることは避けるべきでしょう。
但し、健康増進法の改正に伴い、望まない受動喫煙を防止するための取り組みとして、2020年4月1日より一般的なオフィス等の施設でも屋内禁煙が原則となり、喫煙可能な場所がない場合は喫煙が認められなくなりました。
また、労働者の募集や求人の申し込みを行う際に「就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項」の明示が義務化されました。
従いまして、応募条件や採用基準を非喫煙者に限定することはできませんが、求人に屋内禁煙(専用喫煙室なし)等と記載することで、就業場所・就業時間中は喫煙が出来ないことを明示したうえで募集されるということであれば可能かと存じます。
◆公正な採用選考の観点から 喫煙の自由は、基本的人権の一つに含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではないと解されており、健康への影響(他者への影響を含め)、健康経営への取り組みとして、非喫煙者を採用条件に設けることは、合理的な制限であり、公序良俗違反や不法行為には該当しないと考えられます。 一方で、非喫煙者のみの募集となると、だれでも自由に自分の適正・能力に応じて職業を選べるという機会均等が失われることになります。 ※「喫煙」のみをもって採否の判断基準にすることは問題となります。 ◆「喫煙」と「適性」 「適性」は、職務をスムーズに遂行するために必要な知識や技術をどれだけ速く身に付けられるのか、という視点から、能力的側面(職務適応)、性格的側面(職場適応)、態度的側面(自己適応)の 3 要素を踏まえて総合的に判断します。就かせたい業務内容と喫煙の直接的な関係(影響)があれば、非喫煙を適性として捉え、採用基準に加えるのは一つの考え方としてあるでしょう。 趣味嗜好とはいえ、業務への影響度合いによっては、喫煙行為を制限する可能性があるなら、選考の際にはアンケート記入等で申告してもらい、入社後に虚偽があれば本採用を見送るなどの取り扱いを考えてもよいでしょう。 ◆カルチャーフィット(企業文化への適合性)からの判断も その人の能力だけで判断し、必要な人財としても、組織文化習慣に合わなければ、その喫煙者(非喫煙者)が組織で円滑かつ良い仕事ができるか?という点で懸念が出てきます。こうなると喫煙(禁煙)は採用後、応募者にとっても、企業としても良いことなのかも考えないといけないと思います。 また、上記適性の3要素のうち、態度的側面(自己適応)については個人の満足度とも深くつながっているため、自社の企業風土(喫煙文化)に置かれたときにどう感じるのかを尋ねることは、適性の判断材料の一つになるでしょう。 |