フランチャイズ加盟店の経営者は「労働者」?初の判断下る
コンビニのFC加盟をしている岡山県の店主が訴えていた「団交権の有無」について、岡山県労働委員会が初めて「コンビニFC加盟者は労働者であり、団交には応じないのは不当労働行為である」という判断を下したというニュースです。
「経営者なのに労働者?」という違和感を覚えてしまいますが、ここでポイントとなるのはこのケースの場合の「労働者」とは労働組合法上の定義であり、同じ言葉でも、労働基準法の労働者とは違う、という点です。
もともと弱い立場の就労者に対して、立場が強くなりがちな企業、組織への交渉力を与えようというのが労働組合法の趣旨です。よって労働者の定義も「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準じる収入によって生活する者」(労組法3条)としているのに対し、労基法は「職業の種類を問わず、事業者に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法9条)としており、前者のほうが範囲が広いのです。
プロ野球選手が個人事業主であり、労働基準法における労働者ではないのにもかかわらず、労働組合として「選手会」を結成し、団交権を持っている理由は、彼らは労働基準法の労働者には該当するが、労働組合法上の労働者ではない、ということです。
では労働組合法上の労働者にあたるかどうかの基準は何でしょうか。過去の判例より、下記5点の該当する度合いによると考えられています。
1.労務提供者が、事業遂行に不可欠な労働力として会社の組織に組み入れられていたこと
2.会社が契約内容を一方的に決定していたこと
3.労働提供者の受ける報酬が労務の提供に対する対価としての性格を有すること
4.各当事者の認識や契約の実際の運用において、労務提供者は会社の依頼に応ずべき関係にあったこと
5.労務提供者が、会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行い、かつ業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたこと
今回のニュースに当てはめてみると、該当度合いについては正直微妙であり、個々のFCの中での、本部と加盟者の関係により大きく事なり、全てのFCに一律に当てはめるのは微妙な印象を受けます。下記の通り今回のニュースの大学教授の見解も真っ二つに分かれています(笑)。いずれにせよ、FC本部や加盟者に 与える影響は大きく、今後の進展が注目される訴訟だといえるでしょう。
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参照元:2014年3月20日 毎日新聞
コンビニ加盟店ユニオン:店主は労働者…団交受け入れ命令
全国のフランチャイズコンビニ店長約200人で組織する「コンビニ加盟店ユニオン」(池原匠美委員長)がセブン-イレブン・ジャパン(本社・東京都千代田区)に団体交渉に応じるよう求めた不当労働行為救済申し立て事件があり、岡山県労働委員会は20日、「加盟店主は労働組合法上の労働者」と認定した。団交を拒否することは不当労働行為であるとして、セブン-イレブン本社に要求を受け入れるよう命令した。
岡山県労委によると、コンビニ店主を労働者とした判断は全国の労働委員会で初めて。ユニオンは2009年に結成。同年、セブン-イレブン本社に団体交渉を申し入れたが、同社は「加盟店主と会社には労使関係はなく、個別に話し合う」として拒否。ユニオンは10年に「個別の協議では対等な話し合いはできず、団交拒否は不当」として県労委に申し立てた。ユニオンには現在、セブン-イレブン以外のコンビニ店長も加盟している。
命令書は、実質的な契約内容が会社から一方的に決められている▽加盟店主の経営上の裁量は極めて限定されている--などとして「加盟店主の独立性は希薄」として、「労働者」と結論付けた。
岡山県内でセブン-イレブンを経営する池原委員長は「本社と話し合いの場が持てることになってうれしい。目指すのは、本社と加盟店の共存共栄」と話す。他のコンビニチェーンの店主も、東京都労委に同じ申し立てをしているといい、「セブン-イレブン以外の加盟店主にも、励みになると思う」と語った。
セブン-イレブン本社は「極めて不当な命令で、再審査の申し立てか行政訴訟の提起をし、適正な判断を求める」とのコメントを出した。【五十嵐朋子】
◇脇田滋・龍谷大法学部教授(労働法)の話
当然の結果だ。加盟店主は、親会社に従属的で名ばかり個人事業主だった。今後、裁判などになって時間がかかるかもしれないが、加盟店主の労働条件の改善につながる。
◇小嶌典明・大阪大大学院法学研究科教授(労働法)の話
労働組合法の解釈を広げすぎており、問題だ。下請け業者なども労働者とみなされるようになる可能性があり、歯止めがきかなくなる。フランチャイズ契約を結んでいる場合、コンビニ店主は基本的には事業者で、事業協同組合を作るなど別の方法があるはずだ。
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