働き方改革法案が衆議院を通過。労働契約法20条が争点「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」の判決が下る
梅雨入りとなって2週間ほどが経ち、気がつけば2018年も半分が終わっています。人事ご担当者の皆さまは、採用活動や社会保険、雇用保険の年次業務で忙しい時期を迎えているのではないでしょうか。そんなご担当者の皆さまに、6月の法改正情報をまとめてお届けいたします!働き方改革はもちろん、労働契約法20条を争点とした2つの事件の判決、2018年新入社員の意識調査など7つの動向を掲載です。
目次
働き方改革関連法案が衆議院を通過
5月31日、働き方改革関連法案が衆議院本会議を通過し、参議院に送られました。時間外労働の上限規制、有給休暇の年5日取得の義務化、高度プロフェッショナル制度の創設については盛り込まれておりますが、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については削除され、今国会での成立を目指しています。
「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」注目の最高裁判決
正社員と有期雇用労働者の待遇格差をめぐる2つの裁判の判決が言い渡され、労働契約法20条が禁じる不合理な待遇格差について初めて判断が下されました。両裁判とも有期雇用労働者による訴訟でしたが、長澤運輸事件では定年後に再雇用された高齢の有期雇用労働者となっており、ハマキョウレックス事件では従業員側の勝訴、長澤運輸事件では会社側が勝訴という結果になりました。判決内容としては、賃金項目ごとにその趣旨を考慮して待遇格差を判断しているとの事。今後、企業では一層、待遇格差について不合理のないように従業員へ説明する必要がありそうです。
女性登用、中小も義務化を検討へ
2018年4月に施行された女性活躍推進法の改正が検討されています。日本の労働力の減少を背景に、これまで大企業(301名以上)のみの義務とされていた次の3点を、中小企業(101人以上300人以下)にも義務付ける方針とし、2020年の運用開始を目指しています。
・女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析
・定量的目標や取組内容などを内容とする「事業主行動計画」の策定・公表等
・女性の活躍に関する情報の公表
人事メディアに会員登録すると、毎日更新される人事ニュース、労務相談Q&Aをすぐにお届けいたします。会員登録はこちら
2018年度 新入社員 春の意識調査
①日本生産性本部 意識調査の結果
今年で29回目となる日本生産性本部による意識調査。
- 「あなたにとって、今の会社は第何志望でしたか?」の質問に対し「第一志望」との回答が4年連続で上昇し初の8割超えで過去最高となった。
- 「自分のキャリアプランに反する仕事を、我慢して続けるのは無意味だ」の質問に対し「そう思う」という回答は6年連続増加で30.8%となった。
- 「残業は多いが、仕事を通じて自分のキャリア、専門能力が高められる職場」と「残業が少なく、平日でも自分の時間を持て、趣味などに時間が使える職場」の二者択一の設問で、後者と答えた割合が75.9%と、1998年の設問開始以来最高となった。
②東京商工会議所 中堅・中小企業の新入社員意識調査の結果
- 就職活動の開始時期について、企業の広報活動開始日とされる「昨年の3月前」が 26.1%30.2%と増加しました。
- 内定時期については、選考開始日とされる6月1日以前に内定を得た割合が、全体では 17.7%と3年連続で増加。過去2年の調査では「昨年の 12 月末以前」が最も多かったが、2018 年度は「昨年の7 月末以前」(25.7%)が逆転しました。就職活動の開始時期の変更と連動するように、企業の内定出し時期も早まっているようです。
- 入社した会社を知った経緯について、1位は「求人情報サイト」の37.9%となりました。2位は「学校就職部/キャリアセンター」の17.9%、3位は「知人の紹介」の12.4%と、学生は身近なところから情報を集める傾向にあるようです。
- 今の会社でいつまで働きたいかについて、「定年まで働きたい」が 25.2%(昨年度比▲8.6%)と大幅に減少し、「チャンスがあれば転職」が 15.6%(昨年度比+6.0%)と増加しました。さらに「チャンスがあれば転職」「将来は独立」「時期をみて退職」の合計が 25.8%と過去 8 年間で最も高い結果となりました。多様なキャリアに対する意識の高まりがあり、企業として社員のキャリア形成に取り組む必要性が大きくなっているようです。
- 社会人生活を送ることで感じる不安について、仕事と私生活とのバランス、社内の人間関係に不安を持っている学生が多い傾向にありました。全体的には「仕事と私生活とのバランスがとれるか」が 53.1%と最も多く、次いで「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか(52.6%)」、「仕事が自分にあっているか(47.8%)」となりました。
国土交通省 建設業の長時間労働を是正へ
国土交通省は、建設業の働き方改革を推進する案をとりまとめました。現場作業の長時間労働を前提とした不当に短い工期による契約の禁止や、社会保険に未加入の建設会社に対し認可を行わない方針を固めています。改正案では、工事の準備期間や詳細な工程を明らかにするよう定め、発注者による不当な工期短縮を禁じ、労働環境の整備による人手不足の解消を目指しています。来年の通常国会にて建設業法の改正案を提出する見通しです。
「人手不足等への対応に関する調査」集計結果が公表
日本商工会議所は7日、中小企業の人手不足についての調査結果をまとめました。回答した2673社のうち65.0%が人手不足だと回答しており、2017年の前回調査から4.4%上昇。過去最高となっています。
厚生労働省 労働保険の年度更新資料が更新
厚生労働省より、労働保険の年度更新における電子申請のマニュアルが更新されました。
近頃は、働き方改革に関連した法改正を軸として、HRTechによる人事のAI化や新卒採用市場の変化など、企業人事の潮流には目が離せないものがあります。引き続き最新情報をお届けいたします!
中小企業、ベンチャー企業の労務顧問は社労士法人 人事部サポートSRへ
堀越 敬太
最新記事 by 堀越 敬太 (全て見る)
公開日: