「内定者の本音」-内定式で会社のイメージダウン!? –

10月2日に内定式を終え、そろそろ新人研修を始める企業も多いのではないかと思います。
今回は、今年大学を卒業する学生に直接聞いた話を中心に、就職活動を終えた学生の会社への印象・今、会社や先輩社員に感じていること・会社や社員に求めたいこと等々「内定者の本音」をお伝えしたいと思います。

 

1.内定式の前後で会社のイメージが変わった内定者7割

10月1日~10月15日の間に内定式を終えた友人達に、自然な会話の中で「内定式の感想や会社・先輩社員の印象」について聞いてみました。私が聞き取り調査を行った32人のうち、「内定式で会社・先輩社員の印象が変わった」と答えた人は23人であり、約7割の人が内定式後に会社や先輩社員に対する気持ちの変化を感じていることが分かりました。では、具体的にどのように印象が変わったのでしょうか・・・?
下の表は「内定式で会社・先輩社員の印象が変わった」と答えた23人に、具体的にどのように変わったのかについて質問した結果です。

 

内定式後にマイナスイメージを感じた人が23人中17人と7割以上を占めており、そのうち先輩社員や上司となる社員に対する不満や不信感を抱いている人が12人でした。

 

最も多くマイナスイメージの半数近くを占めた「会社説明会の時と社員の態度が違う」という意見ですが、この中には「会社説明会では“みんな仲良しなので、いじめなんてありませんよ”と言っていた先輩社員がいじめの首謀者だった」や「“仕事楽しいですよ”と言っていた先輩社員が、懇親会でズル休みの仕方を教えてきた」など、『会社説明会では分からなかった会社や先輩社員の本当の姿が内定式や内定式後の懇親会で明らかになった』というような内容のものが多かったです。

 

「就業規則が緩い感じがした」と答えた友人の一人は、内定式に会社内で勤務時間中にスマホゲームをしている社員を見たそうで、プライベート用のスマートフォンをデスクに持ち込んでいる事や、勤務時間中にプライベート用のスマートフォンを使用することに規制をかけていない会社の就業規則の緩さにびっくりしたそうです。

 

一方、プラスイメージの「先輩社員同士が思っていたより仲が良かった」と回答をしてくれた友人はそう感じた理由について、「懇親会での先輩社員同士の会話が楽しくて、冗談を言い合える良い関係だったから、今後の研修も人間関係での不安を感じなくて良いから全く憂鬱じゃないよ」と語ってくれました。

 

人間関係や仕事内容について不安を感じている内定者は多く、彼らは自分の会社の人と関わる初めての機会である内定式や懇親会で先輩社員の様子や雰囲気を敏感に感じ取っています。先輩社員の一貫性のない行動や発言、社員の悪口や仕事に対する非積極的な態度など、ちょっとした事が内定者に大きな影響を及ぼしており、こういったマイナスイメージは少なからず内定辞退や転職への動機につながってしまうのではないでしょうか。

 

2. 内定式で会社のイメージダウン!?驚愕エピソード3選

内定式で会社へのイメージが下がったと答えた友人に対して、イメージダウンに繋がってしまったエピソードとそれについて思う事などを話してもらいました。その中でも「本当にこんな事ってあるの!?」と驚いたエピソードを3つ選んで紹介します。

  • 10月2日に内定式を終えたTさん(製薬会社)
    内定式で仲良くなった他大学の内定者(Aさん)にこっそり自分の会社のある先輩社員のTwitterの投稿内容を見せてもらいました。Aさんとその先輩社員は大学時代に同じサークルに所属しており、仲が良かったそうです。その先輩社員の投稿内容を見てみると、「今年の新入社員使えなさそう」・「○○(先輩社員と同期の先輩社員)がウザい」・「会社辞めたい」・「仕事がつまらない」など自分たち新入社員に対する悪いイメージや他の先輩社員に対する悪口、仕事に対するマイナスなコメントなどが多数投稿されていました。その先輩社員は内定式後の懇親会ではニコニコしていて話し方もとても優しそうだったのに、その他の投稿を見ても人間関係が良好なようには見えず、懇親会での先輩社員たちのにこやかな態度は見せ掛けだけの姿であると感じてしまい、これから始まる研修が怖くなってしまいました。

 

  • 10月2日に内定式を終えたMさん(食品メーカー)
    内定式後の懇親会で同じテーブルになった先輩社員の一人が、「効率よく確実に仕事を休める方法」について話し始めました。その先輩が言うには、私たちの上司となるSさんに気に入られれば簡単に休ませてもらえるとのことでした。入社前から「仕事をサボる方法」について詳しく教えてくるような先輩社員を見て、とても幻滅しました。これから始まる仕事へ対するやる気や尊敬できる先輩社員を見つけて目標にしようと思っていた気持ちが全て消えうせてしまいました。

 

  • 10月2日に内定式を終えたFさん(食品メーカー)
    男性社員の多い自分の会社は、会社説明会や業務内容説明会では皆さん“紳士的で穏やかな男性”という印象でした。しかし、内定式後の懇親会で部長のBさんに「君、可愛いから(Bさんの)専属でコーヒー淹れをやってもらおうかな~」と言われました。座敷での飲み会でしたが、妙に距離が近く、ボディータッチも多いような感じがしてとても不快でした。「もしかしてセクハラがある会社なのかも?」と思ってしまい入社後の会社での生活に不安しか抱けません。表向きはとても“紳士的で優しそうな上司”という感じのBさんだったので、他の先輩社員の方も疑ってしまいそうで不安が拭えません。

 

特に私が驚いた3例を紹介しましたが、その他にも内定式後に会社のイメージダウンに繋がる出来事があった友人は多く、1で「内定式で会社・先輩社員の印象が変わった」と答えた23人のうちマイナスイメージを感じた17人に質問し、そのうち14人がこういった出来事があったと答えています。

 

こういった出来事で一番多かった内容がTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアの投稿内容に関するもので、投稿内容を見て「先輩社員に幻滅した」・「会社内の雰囲気が分かった」・「正直、大学までの学生生活と変わらない感じがした」・「いじめがありそうだと思った」など、会社の雰囲気や内部事情を良く知らない内定者に良くない先入観を与えてしまっています。

 

次いで多かった内容が、先輩社員による内定者への不平等な扱いについてでした。エピソードを話してくれた友人の中にも「内定者の中に可愛い女の子がいて、その子にだけ先輩社員の態度が優しい」・「内定者の中に愛想の良い子がいて、その子だけ先輩社員から良く話しかけられたりしている」・「内定者の中に京都大学の子がいて、先輩社員のその子への期待が強すぎる」などの平等性に欠ける指導や扱いを受けている人もいました。

 

入社前にこういった出来事があると、内定者は「どうせ自分は期待されていないし」と仕事に対して非積極的になってしまったり、「自分も影で悪口を言われていたらどうしよう」とビクビクしながら過ごすようになってしまいます。こういった内定者の会社への不安や不信感が一定以上になると、入社式直前に内定辞退や入社後すぐに転職などにつながり、せっかく研修で多大な時間とコストをかけて育ててきた貴重な人材を失ってしまいます。

 

自分の悩みや不安を話せるような頼りになる先輩社員の存在は、社会人になるにあたって多くの不安や悩みを抱えている内定者にとって時にはビジネスマナーなどの研修以上に価値を持ちます。内定者に寄り添った社員や会社の対応が重要なのではないでしょうか。

 

3. 内定者が先輩社員・会社に求めること

今回聞き取り調査を行った32人に対して「先輩社員や会社にしてほしい事・やめてもらいたい事」について聞きました。
1の質問で「内定式後に会社のイメージが下がった」と回答した人と、「内定式後に会社のイメージが上がったまたは変わらなかった」と回答した人に分けて表に示します。

 

 

内定式後に会社のイメージが下がった内定者の意見では人間関係について不安に思う気持ちが背景に見えるような意見が多いように思います。

意見の被りが多かった「同性の教育係は避けて欲しい」・「信頼できる先輩社員が欲しい」・「内定者同士の仲を深めたい」については、なぜそうして欲しいのか意見を挙げた9人に理由を聞いたところ、共通点が見つかりました。その共通点とは「会社内で孤立したくない」という思いでした。

 

  • 「同性の教育係は避けて欲しい」という意見を出した友人の一人(女性)は、先輩社員のTwitterの投稿内容や先輩社員同士のやり取りを見ていて人間関係が良好でないと感じ、裏で悪口などを言われたくないので同性(女性)の教育係はやめて欲しいと思ったそうです。

 

  • 「信頼できる先輩社員が欲しい」と言う意見を出した友人は、自分が器用な人間でないため、今までも簡単な事でも躓くことが多く、そのせいで研究室で孤立していたので、そういった簡単な仕事内容で質問や相談をしても「こんな事もできないのか」と思われたくなかったそうです。

 

  • 「内定者同士の仲を深めたい」と言う意見を出した友人は、内定者懇親会や内定式後の懇親会で他の内定者がグループを作り始めているときに自分はまだ誰とも仲良くなれていないので、入社式までに気の合う同期を見つけておきたいと思ったからだそうです。

 

内定式後に会社のイメージが下がった内定者は更に不安を抱いているように思われます。

 

一方、内定式後に会社のイメージが上がったまたは変わらなかった内定者の意見では、仕事に対して積極的な気持ちが背景に見えるような意見が多いように思います。

回答してくれた6人の中には、内定式後の懇親会で先輩社員との良好な関係が築けた人や先輩社員との飲み会に誘われた人もいて、一定の関係性が築けているため、今後プライベートな相談や今不安に思っていることなどを気軽に相談できるような関係性に発展できることを望む意見が多いように感じました。

 

このような意見を見てみると内定式や内定式後の懇親会が内定者に与えた影響の大きさが分かります。良い印象を与える事ができた会社は内定者も今までの不安や悩みが払拭され、仕事に対するやる気が上がったように思われますが、良い印象を与える事ができなかった会社は内定者の不安や悩みを増強させてしまったように感じます。

 

4. まとめ

この記事に記載している「内定者の本音」については、個人的に友人達との自然な会話の中で得られた意見や情報を集計し、記載したものです。32人という少数ではありますが、内定式や内定式後の懇親会で内定者に与えた影響がどのようなものであったのかについて参考になればと思います。今後、内定式や懇親会を予定している企業は内定者にとってより良い内定式となるように、この記事がお役に立てることを願っております。

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