「内定辞退」は突然に… ~嘆く前に会社側からできること~

厚生労働省の調査によると、2017年3月に卒業した大学生の就職率は97.6%と過去最高の数値であることが分かりました。

就職率が高くなるほど、よりよい会社を求めて複数の内定をもらう学生は増加し、会社は内定辞退に頭を悩ませることになります。

内定者の不安を払い、気持ちよく入社してもらうためには、内定を出した後のフォローが不可欠です。

 

 

内定の法的性格

 

大日本印刷事件(最2小判昭54.7.20民集5号582頁)により、「内定」の法的性格は「始期付・解約権留保付労働契約」という考え方が確立しています。

 

簡単に言えば、内定とは、会社からの「内定通知書」に対して被採用者の承諾がなされた場合、その時点で会社と内定者との間に労働契約が成立するということです。

 

内定辞退の法的根拠

 

民法627条1項には、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と定められています。

 

前述のとおり、内定は労働契約の成立を意味しているため、同条による解約が可能です。

つまり内定者は、実際に働き始める日の2週間前までに会社に連絡しさえすれば、内定を辞退することができます。

 

また、内定者から内定辞退を申し出た際、その理由は必要ないとされています。気になる事項ではありますが、会社側から辞退理由を深く聞くことはできないのです。

 

 

内定辞退の理由

新卒学生向け就職サイト「マイナビ」の「学生就職モニター調査(2017年7月)」によると、入社予定先を決めたあとに「本当にこの会社でいいのか」と不安になった学生は54.9%でした。

 

(参考:2018年卒マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況)

 

不安になった理由で最も多かったのは「この会社できちんと勤まるかどうか(38.6%)」で、実際にその不安が解消されたのは38.2%と発表されています。

入社予定先が決まってからも会社に不安を抱き、それが解消されないままであることが分かります。

前年の就職率のとおり、現在の就職活動では売り手市場が継続しているため、優秀な学生や内定をもらった会社に不安を持つ学生は、より自分に合った会社を求めて就職活動を続けます。

これらが原因で内定を辞退する学生が増加していると推測できます。

 

内定辞退を減らすためには

 

  • 説明会、採用面接の手法を見直す

会社説明会、採用面接を行う際には、応募者が気軽に質問できるようにリラックスできる環境を整えることが大切です。

面接で応募者が緊張しすぎないように、社内の挨拶を活発に行い、応募者を迎え入れるような環境を作り上げる工夫もあるそうです。

説明会だけでなく、そのあとに懇親会を開くなどして、応募者に会社の情報を伝えることを徹底し、ミスマッチを無くしていきましょう。

 

 

  • 内定を出した後のフォロー

内定を出した後、内定者への対応が疎かになっていたりはしませんか?会社からの連絡が途絶えてしまうことは、内定者は会社に対して不安を抱くことに繋がりかねません。不安が大きくなると、インターネット上の会社の評判がどうしても気になったり、周囲の人から他社の面接を受けるよう催促されたりする引き金になってしまいます。

また、内定をもらった後も就職活動を続けている学生を会社に引き留めるためには、自社の魅力や特徴をアピールし続ける必要があります。

そのためには、内定者の疑問の解消に努めることや、今後の学生生活をどのように送るのかを質問するなど、会社と内定者のコミュニケーションは欠かせません。

マイナビの同調査によれば、内定者フォローや内定者研修を希望する学生の割合は79.5%です。内定後に研修を実施し、問い合わせには速やかに対応するなどして、会社側から積極的にフォローしていきましょう。

 

ただ、あまりに内定者をフォローしすぎると、「オワハラ」(就活終われハラスメント。他社選考の辞退を強要させる行為のこと。)になりかねません。マイナスの印象を持たれてしまうため、やりすぎにも注意しましょう。

 

  • 「オヤカク」を確認する

オヤカクとは、「保護者が入社を承諾しているか」を会社が確認することをいいます。

内定辞退が内定者本人の意思ではなく、親によってなされることもあります。一人っ子や兄弟の少ない家庭が増加して子どもの進路への関与が強まったことや、ブラック企業問題が注目されていることで、子どもの将来を案じている親は少なくありません。

マイナビの同調査では、オヤカクを確認されたことがある学生は30.5%でした。

面談の席、電話によってオヤカクはきちんと確認しましょう。

もし反対されてしまった場合でも、自社がどのような会社であるかを示す説明会を実施して、自社について理解してもらうことが必要です。

 

企業事例

サイボウズ株式会社

内定者全員でグループワークを行い、自社製品への理解を深めるとともに入社のモチベーションを高める「内定者ワークショップ」

先輩社員を交流することで疑問や不安を解消する「内定者懇親会」、内定者の保護者に会社について理解してもらうことを目的とした「会社参観日」を実施することで、内定者をフォローしています。

さらに、無料のコミュニケーションツールを用いて内定者に連絡事項を伝える、社内のイベントの盛況を投稿するなどして、人事と内定者でコミュニケーションが可能となっています。

(詳しくは https://live.cybozu.co.jp/followupfreshers.html へ)

 

まとめ

内定を出すまでではなく、内定を出した後に内定者が入社してくれるように、コミュニケーションを怠らず、不安を取り除いていくことが大切です。

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