【今すぐ確認!】その職種、実は裁量労働を適用できないかも・・・!?事例から考える「専門業務型裁量労働制」の正しい運用とは?

平成29年9月5日、東京都のスマートフォン向けアプリゲーム制作会社『サイバード』に勤務する男性従業員について、労働基準監督署が裁量労働制の適用を無効と判断し残業代を支払うよう是正勧告していたことが分かりました。この社員のみなし残業時間は月45時間でしたが、実際の残業時間は70時間を超えていたそうです。

 

裁量労働制を適用しているが正しく運用できているか不安になった、会社に制度を導入したいがどのようなところに注意したらいいのか、そもそも導入が可能なのか分からない、ということもあるかと思います。そこで、本記事では過去実際に起きた事例をもとに裁量労働制、特に「専門業務型」裁量労働の内容と、今回の問題における争点を説明していきます。

 

はじめに

裁量労働制とは?

労基法の定める要件を満たした場合、一定の業務に従事する労働者に対して、みなし労働時間が適用されるものです。「みなし」とは、反証を認めないものなので、一定の労働時間を労働したとみなすと定めた場合、実際に労働時間がどれだけ多くても、みなした労働時間の労働をしたものと取り扱えばよいことになります。みなし労働時間制は専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つに分けられます。

 

「専門業務型」裁量労働とは

業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねなければならず、使用者が具体的に指示することが困難である業務について、実労働時間ではなくみなし時間で労働時間を計算するという仕組みです(労基法38条の3)。前述のとおり、実際の労働時間がどれだけ多くても一定の労働時間分労働したとみなされてしまうので、制度が濫用されないようその導入は研究開発等の専門的な特殊業務に限られています。

参考:専門業務型裁量労働制の対象業務

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7) 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8) 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務

(出典:厚生労働省ホームページ

専門業務型裁量労働制の導入に当たっては、まず導入したい対象業務が法令で定める専門業務型裁量労働制の対象業務に合致するか否かを検討する必要があります。その対象業務は上記のように特定されており、拡大解釈することはできません。

参考:対象にならないのはSE?プログラマ?

専門業務型裁量労働制では上記のように適用対象となる業務は法律によって限定されています。特に(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務の解釈としてプログラマーは、はたまたシステムエンジニアは対象となるのか?といったことが話題になりますが、労働法上の違法・合法は、社内の肩書きや書類の形式ではなく、業務の「実態」で判断されます。特に「プログラムの設計又は作成を行うプログラマー」は適用の対象外であると強調されて定義づけられています。肩書に惑わされず実態を以て判断することが重要と言えます。

 

制度を導入するためには

専門業務型裁量労働を導入するには、

使用者は、

事業場において過半数の労働者により組織された労働組合、それがなければ過半数の代表者と、

労使協定(労働者と使用者間で締結される、書面による協定)を締結し、

所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません

労使協定には、以下について定めておく必要があります。

  1. 制度の対象業務
  2. 対象業務の遂行に際し、手段、時間配分等に具体的指示をしないこと
  3. みなし労働時間
  4. 対象労働者の健康福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情を処理するための措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間
  7. 4及び5で講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

導入の際、特に注意しなければならないことは、協定で定めたみなし時間にも深夜労働、時間外労働、休日労働、休憩などの規定が適用されるということです。したがって、1日のみなし労働時間を法定労働時間8時間を超えるように定めた場合には、その超えた部分の割増賃金を支払わなければなりません。

 

事例から考える

 

「サイバード」事件…裁量労働に該当せず残業代を支払うように是正勧告

裁量労働制の対象業務には、「ゲーム用ソフトウェアの創作業務」も含まれており、本件ゲーム制作会社のゲーム開発に関わる部分で裁量労働制を適用していたことに問題はないといえます。しかし、本件の社員はイベントの開催やSNSの運用といった商品の宣伝を業務としていました。そのため、専門業務型裁量労働の対象になるとは言えず、制度が適用されないと判断されたのです。本件ではゲームを開発する会社だからといって全ての業務に裁量労働制を適用していいわけではなく、あくまで特定の業務にしか適用できないことを示しています。

参考:エーディーディー事件(大阪高判H24・7・27)

コンピューター会社Yにおいて、みなし労働時間を1日8時間とする裁量労働制の下で勤務していたXが、実際には制度の対象業務でない労働をしていたとして、未払時間外手当などを求めて反訴(YはXに対し、Xのミスによりコンピューターに不具合が発生し損害を被ったとして賠償するよう提訴)した事件です。

裁判所は、Xが行っていた業務が、別の会社からの指示書によりおこなわれていた業務であり「情報処理システムの分析又は設計の業務」であったとはいえないと判断しています。

終わりに

裁量労働制について、どのような業務が対象であるのかが曖昧なまま導入されていることも多いように思われます。対象の業務に会社からは具体的指示ができないことや、業務が限定列挙されていることから、会社内の業務が細かく分けられる場合には、判断が難しいことがあるかもしれません。残業代の支払いに大きく関わってくることもあるので、まずは今一度裁量労働制が適切に運用できているかをきちんと見直す必要がありそうです。また、みなし労働時間を設定するにあたり実態に応じた時間を設定することも重要です。実態とかい離が生じてしまうと大きなトラブルに繋がりかねません。

 

今回の事例のように、知らないうちに適用無効になり多額の未払い賃金を支払うリスクは必ずしもゼロとは言えません。そのリスク、未然に防ぎます!「ちょっと心配かも、、、」少しでも不安を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。

 

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吉田はづき

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入社と同時に数百名規模事業所の勤怠確認業務に明け暮れ、その奥深さを痛感。現在は大手アパレルグループの社会保険手続きに携わりつつ、人事メディアでは「勤怠」に関わる情報を提供します。好きなものは生牡蠣、白子、ホヤ。
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