【熱中症】これって労災??建築業必見!!

2018年の夏は、7月上旬から厳しい暑さが続いています。

総務省消防庁の速報値によると、平成30年7月16日から平成30年7月22日の間の熱中症による搬送者数は2万2647人、死者数は65人と発表されており、搬送者数は昨年同期の約3.2死者数は昨年(6月~9月)の46人を1週間で上回っています (http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2.html)

 

株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)が発表した「猛暑見解2018」では、2018年の猛暑のピークは2回あり、「7月いっぱい」と「8月下旬~9月上旬」に暑さのピークを迎えると予想されています。

 

今年の夏は、教育現場での猛暑対策が注目を集めていますが、職場でもこの暑さ・熱中症への対策が必要となります。通勤中と業務中に熱中症で倒れてしまったら、労災認定されるのでしょうか。

(2018年7月末更新)

 

【最新】職場における熱中症による死傷災害の発生状況

平成30年5月31日に 「平成29年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」 が厚生労働省より公表されました。

 

過去 10 年間(平成 20~29 年)の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数をみると、「観測史上最も暑い8月」と発表されるほどの猛暑となった平成 22 年に 656 人と最多数を記録し、その後も 400~500 人台で高止まりの状態が続いています。

 

昨年度 平成 29 年の死傷者数は 544 名、死亡者数は 14 名となっており、一昨年の平成28年と比較 して、死傷者数、死亡者数いずれも2割程度増加しています。また、平成29年の業種別の死亡者をみると、建設業が全体の約6割(8人)と、最も多く発生しています。

 

 

 

熱中症が労災だと認定される基準は?

 

そもそも労災(労働災害)とは何か、という点から説明していきます。

労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいいます(労働安全衛生法第2条1号)。広義な範囲では、業務中のみならず通勤中の災害も含み、一般的には労災と略して呼ばれております。そして、大前提に企業は労働者に対する安全配慮義務や、労働安全衛生法上の義務が生じ、熱中症対策を行わなければなりません。

 

これらを踏まえて熱中症が労災範囲なのかを検証していきます。

まず、労働災害とは上記で説明しましたように、業務災害と通勤災害に分けて考えられます。

 

業務災害 → 労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡

通勤災害 → 労働者の通勤途上の負傷、疾病、障害、死亡

 

 

夏の季節での熱中症は、場所と時間を問わず、いつ発症してもおかしくありません。

熱中症が労災と認定されるためには、3つの認定基準があります。

 

【1】仕事をしている時間や場所に原因がある

1つめは、仕事をしている時間や場所に明確な原因があることです。これは、外で業務をする現場の人たちや中長時間に渡る外出での移動が考えられ、直射日光を当たり続けてしまう場所にいることが推測されます。

 

【2】体に及ぼした影響と時間が熱中症に関係がある

2つめは、それらの原因が体に及ぼした影響と時間が、熱中症との間に関係することがあるものです。現場の管理・監督者がこまめな水分補給の時間すら与えないと、この基準は認定されません。

 

【3】業務上での発症

3つめは、単純明快に業務上での発症か否かということです。業務を始める前に、熱中症が発症していたら3つめの基準は認定されません。

 

上記3つの基準が認定されれば、熱中症も労災に認定されます。

 

過去の熱中症と労災の事例

では、過去にどんな事例があったのかを紹介していきます。(厚生労働省より一部抜粋・要約)

 

【事例①】 60歳代 土木工事業 8月発生

被災者は午前8時から、草刈り機で除草作業を行っていた。11時頃、被災者が体調不良を訴えたため、車の中で休憩を取らせた。

11時45分、被災者から「体調が回復しないため午後は休む」との申し出があり、同僚が病院に連れて行こうとしたが、「自宅で寝ていれば治る」と言われ、車で帰宅した。

事業主が「体調は大丈夫か」と連絡をした際には「大丈夫」と返答した。

しかし、17時頃に帰宅した妻が心肺停止で横たわっている被災者を発見し、搬送された病院で死亡が確認された。

※ 現場での水分や塩分の摂取は労働者任せであった。

※ 被災者に対して熱中症に関する教育は行われていなかった。

 

【事例②】 20歳代 警備業 7月発生

被災者は8時30分から車両の誘導を行っていた。

業務終了後の16時50分に、「明日、明後日休みたい」と言い、車で帰宅したが、17時15分頃、近くの路上で倒れているところを通行人が発見し、119番通報により病院に搬送されたが、死亡した。

※ 被災者に対して健康診断は行われていなかった。

 

【事例③】 50歳代 食料品製造業 7月発生

被災者は7時50分頃から工場内で機械の操作を行っていた。 14時20分頃、上司がしゃがんでいる被災者を発見した。被災者は背中に汗をかいていたが、「目まいがする程度で大丈夫」と言っていたため、エアコンがある部屋に移動させた。

被災者は自ら靴や帽子を脱ぎ、水分を取った。

14時30分頃、突然に被災者が床に崩れるように倒れ、病院に搬送されたが、6日後に死亡した。

※ 被災者に対して健康診断結果に基づく対応が不十分であった。

 

上記事例から分かるように、被災者が会社に迷惑をかけたくない、ということが分かってきます。

被災者が遠慮をしてしまう、会社に迷惑をかけてしまいたくないという意思から大事になってしまうかもしれません。

そしてなによりも、熱中症を侮ってはいけませんね。無理せず上司に報告することが望ましいです。

 

飲み会帰りの事故でも労災?知っておきたい夏の労災事例4選!

 

 

労災隠しにあったら 労働者自らが労災申請を

会社で労災が発生してしまうと保険料が値上がりしてしまったり、元請会社に迷惑は掛けられないなどといった理由から、会社が被災労働者と秘密裏に交渉して労災事故をもみ消してしまうということがあるそうです。これが、労災隠しです。

労災を申請するには、会社の協力があった方がいいことは間違いありませんが、実は労災は会社が書類作成をしてくれなくても、労働者自ら労災申請をすることは可能なのです。

 

その方法は、労働基準監督署に対し、

 

①会社に協力してもらえなかった事情等を記述

②労災保険給付等の請求書を提出

 

以上の手順を踏めば、会社が書類作成をしてくれなくても、労働者自らが労災を申請することができます。

 

まとめ

いかがでしたしょうか。たかが熱中症、されど熱中症ですので、こまめに水分補給や具合が悪いと感じたら、遠慮せずに管理監督者に申し出るのが良いでしょう。まだまだ夏本番はこれからですが、体調管理には気を付けて頑張っていきましょう!

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