健康保険の療養費と高額療養費の違い

 

健康保険の被保険者や被扶養者が病気やケガ、出産をした時には健康保険の給付を受けることができます。
そんな給付の一種である療養費と高額療養費ですが、この名前の似ている2つの給付が全く異なる性質のものであることを正しく認識できているでしょうか。

 

今回は健康保険の療養費と高額療養費の違いについてご説明いたします。

 

 

1. 療養費と高額療養費の請求場面の違い

 

 

療養費と高額療養費は、請求する場面が異なります。
それは、保険給付を受けられなかった時に請求するか、保険給付を受けてなお高額な支払いをした時に請求するかという違いです。

 

まずは具体例を挙げてご説明いたします。

 

 

①療養費を請求する場面

 

 

療養費は、健康保険の被保険者あるいは被扶養者でありながら、何らかの理由で保険診療を受けられなかった場合に請求します。

 

例えば、入社まもなく体調を崩して病院にかかった従業員がいたとします。
来院した時にはまだ事業主が資格取得の手続き中で、被保険者証が従業員の手元にないという場合、従業員は原則として保険診療を受けることができません。
保険給付を受けられなければ全額自費で受診することになりますが、そのような場合には後日「療養費」として請求することで、後から保険給付を受けることができます。

 

つまり療養費は、受診時に保険医療機関の窓口での現物給付が受けられなかった場合に、後から療養費として支給を受けるために利用します。

 

 

②高額療養費を請求する場面

 

 

高額療養費は、保険給付を受けながら、なおも被保険者の支払った医療費が高額である場合に請求します。

 

例えば、継続的な通院や投薬が必要な病気にかかった従業員がいたとします。
病気の種類によっては月々の医療費が莫大になるということも考えられます。
保険診療を受けてもなお同一月の自己負担額が高額となった場合には、後日「高額療養費」として請求することで、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。

 

つまり高額療養費は、医療費の自己負担額が定められた基準を超えた場合に、超過分の払い戻しを受けるために利用します。

 

 

なお、医療費が高額になることが事前にわかっている場合などは、限度額適用認定証を利用することができます。

その場合には受診時に限度額適用認定証を被保険者証とあわせて窓口に提示することで、医療機関ごとの負担が自己負担限度額までとなります。

 

つまり、後に払い戻しを受けるのではなく、予め自己負担限度額までの支払いとする制度ですので、こちらの制度を利用の際には原則として高額療養費としての事後請求はいたしません。

ただし、限度額適用認定証を家に忘れた等の理由で窓口での支払いが必要になった場合は、後に高額療養費として請求をします。

 

 

③療養費と高額療養費の請求場面の違い

 

 

療養費は、保険診療を受けられなかった場合に、後日給付を受けるために利用します。
高額療養費は、保険診療を受けてなお高額な支払いをした場合に、自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受けるために利用します。

 

このように、この2つの制度は請求場面や性質が全く異なりますので、場合によっては両制度の併用も可能です。

例えば療養費として後日給付を受け、なお自己負担額が限度額を超えるほど高額である場合には、高額療養費として改めて請求をするということも可能となります。

 

 

2. 療養費と高額療養費の提出書類の違い

 

 

療養費と高額療養費では、申請にあたって必要な書類が異なります。

申請書自体が異なることは勿論、気を付けたいのは添付書類の違いです。

 

提出書類の違いについてご説明いたします。

 

 

①健康保険療養費支給申請書

 

 

療養費を請求するときは、「健康保険療養費支給申請書」を提出いたします。

同じ療養費の申請であったとしても、立替払、治療用装具、海外療養費など、申請する内容によってそれぞれ提出する申請書の様式が異なりますのでご注意ください。

 

また、療養費を申請するための添付書類として重要なポイントは、領収書の原本が必要であるという点です。

こちらは療養費の申請であれば、申請する内容によらず必ず必要となります。

 

例えば、立替払の場合は診療明細書もあわせて3点が揃うことで申請をすることができます。

ほか、申請する内容に対応する代表的な添付書類は以下の通りです。

 

(1)治療用装具

医師の意見および装具装着証明書(必要な場合)

眼鏡等作成指示書(小児弱視等の治療用眼鏡等の場合)

装具の現物写真(靴型装具の場合)

 

(2)生血
医師による輸血証明書

 

(3) 海外療養費

同意書

診療内容明細書

各添付書類の翻訳文

 

 

状況に応じて必要な書類は細かく異なりますので、事前に提出先に確認をしていても、後日追加で添付書類を請求されることもあるかと存じます。

ただし、どの療養費支給申請の場合であっても、療養費支給申請書領収書は必ず必要となりますので、ご確認くださいませ。

 

 

 

②健康保険高額療養費支給申請書

 

 

高額療養費を申請する際には、「健康保険高額療養費支給申請書」を提出いたします。

療養費とは異なり、申請内容によらず申請書は1種類のみです。

 

また、高額療養費の払い戻しは、医療機関等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行いますので、申請時に領収書を添付する必要はございません。

ですので、基本的には高額療養費支給申請書1枚の提出で申請が可能ということになります。

 

 

なお、レセプトの審査に初診月から3か月程度はかかりますので、払い戻しまでかなり時間がかかることに注意が必要です。

毎月高額の支払いが必要で、払い戻しを待っていると金銭的に厳しいというような方の為に、協会けんぽでは医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」もございます。

 

利用を希望する従業員がいらっしゃいましたら、協会けんぽの各支部に一度お問い合わせくださいませ。

(健康保険組合では高額医療費貸付制度がない場合もありますので、事前にご確認ください)

 

 

③療養費と高額療養費の提出書類の違い

 

 

療養費を申請するには申請内容に応じた健康保険療養費支給申請書領収書、ほか各種添付書類が必要です。

高額療養費を申請するには健康保険高額療養費支給申請書さえあれば、基本的には申請が可能です。

 

このように、この2つの制度は添付書類に関しても大きく異なります。

申請の際にはご注意下さいませ。

 

 

*なお、場合によっては療養費と高額療養費で共通して必要となる添付書類もございます。

具体的には以下のようなものが挙げられます。

 

(1)ケガ(負傷)の場合     : 負傷原因届
(2)交通事故等第三者行為の場合 : 第三者行為による傷病届
(3)被保険者死亡の場合     : 戸籍(除籍)謄本 等

 

 

3. おわりに

 

 

いかがでしょうか。

療養費と高額療養費は名前こそ似ていますが、請求場面や提出書類が全く異なることをご認識いただけたかと思います。

 

各制度の内容についてより詳細に知りたいというような場合、ほか手続きに関する疑問などございましたら、下記ホームページの問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせくださいませ。

 

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労務顧問、勤怠集計、給与計算、社会保険手続き、就業規則作成、助成金申請代行
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Ari

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大学では主に民事法について学んでいました。現在は社会保険手続きや給与計算業務に携わりながら、業務効率化のためのツールを開発しております。趣味は読書。某小さくなった名探偵マンガの主人公の書斎を再現することが夢です。
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