受入出向者が役員になる場合の労災取扱いはどうすべき?

他社から出向者を受け入れ、当社(出向先)で取締役に就任予定です。出向元では一般従業員です。
出向元から提示された出向契約書には「災害時は出向先の労災保険を適用する」旨が記載されていましたが、当社では役員となるため労災保険は適用されない認識です。
この認識で問題ないでしょうか。また、契約条文はどのように見直すべきでしょうか。

回答

出向先での実態が純粋な役員(実質的な労働者性がない)であれば、労災保険は原則として適用されませんのでご認識の通りです。
契約書の条文についても、一律に労災適用を前提とするのではなく、「法令上適用される制度に基づき取り扱う」「適用除外となる場合は甲乙協議して定める」といった内容へ修正するのが適切です。
実務上のポイントとしては下記3点です。

1.役員の労災保険適用は「実態」で判断される
労災保険は「労働基準法上の労働者」を保護する制度であるため、役員(取締役等)は原則として適用除外となります。ただし、以下の点に注意が必要です。
・実質的な労働者性の有無
登記上は取締役であっても、代表取締役等からの指揮命令を直接受けて日常業務を行っているなど、実態として労働者性が強いとみなされる場合は労災保険が適用される可能性があります。
・使用人兼務役員の場合
「取締役〇〇部長」のように使用人兼務役員となり、役員報酬とは別に「労働者としての賃金」が区分して支払われている場合は、労働者としての賃金部分について労災保険が適用されます(支給額が役員報酬100%の場合は原則として兼務役員とはみなされません)。

実態として経営権・代表権の委任を受ける完全な役員であれば、労災保険の適用はありません。

2.出向契約書の条文修正案
一律に「出向先の労災を適用する」と明記してしまうと、労災保険が不支給となった際に会社間の補償責任をめぐってトラブルになるリスクがあります。
「出向者に業務上又は通勤途上の災害が発生した場合には、労働者災害補償保険法その他の法令上適用される制度に基づき取り扱うものとする。
出向者が乙の役員であることその他の理由により労働者災害補償保険の適用を受けない場合の補償については、甲乙協議のうえ、その負担及び取扱いを定めるものとする。」
といった条文に修正することをお勧めします。

3.労災保険が適用されない場合の代替策
災保険の適用対象外となる役員に対しては、万一の業務上・通勤途上災害に備え、あらかじめ以下の補償対策を検討・合意しておくことが実務上重要です。
・民間の役員向け傷害保険・損害保険の活用
会社契約で民間の損害保険等に加入し、労働基準法に準ずる程度の補償をカバーできるように手当てする。
・労災保険の「特別加入制度」の検討
貴社が中小企業に該当し、労働保険事務組合に事務処理を委託している(または委託する)場合、役員であっても労災保険に「特別加入」できる場合があります。
The following two tabs change content below.

HALZ人事メディア

人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人HALZグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by HALZ人事メディア (全て見る)

PAGE TOP ↑