社会保険料を「翌月控除」から「当月控除」に変更する際の注意点は?

当社では社会保険料の給与からの徴収について、現在は当月末締め翌月控除としていますが、年内をめどに当月控除方式への移行を検討しています。

何か問題点や、注意しておいたほうがよい点はありますでしょうか。

回答

控除タイミングの変更自体は可能ですが、移行月の控除額、入退社時の精算、年末調整への影響など、事前に整理しておくべき点がいくつかあります。

1.移行月に2か月分の控除が発生します
翌月控除から当月控除へ切り替えると、移行月の給与では前月分と当月分の2か月分を控除することになります。健康保険と厚生年金を合わせた本人負担は月額給与の概ね14〜15%(介護保険第2号被保険者は15〜16%程度)ですので、その分だけ移行月の手取りが減少します。増加分を3〜6か月に分けて控除する、賞与支給月に合わせて移行するといった緩和策も考えられます。
なお、本人負担分の控除は法定控除にあたりますので、2か月分をまとめて控除する場合であっても賃金控除に関する労使協定は必要ありません。ただし、会社が一時的に立て替えて後日給与から回収する方法をとる場合は約定控除となりますので、労使協定と本人の同意書(または金銭消費貸借契約書)が必要となります。従業員から見れば理由のわからない手取り減に映りますので、2〜3か月前の事前予告と個別の説明資料をセットでご準備いただくことが望ましいです。

2.移行時期の選び方
9月・10月は定時決定による標準報酬月額の改定と重なります(翌月控除なら10月支給分、当月控除なら9月支給分から反映)。また3月・4月は協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率の改定(3月分=4月納付分から)と重なります。これらの月を避け、7〜8月または11〜12月あたりを候補とされるとよいでしょう。
あわせて、随時改定の反映月も「変動月から5か月後」から「4か月後」へ一律に前倒しとなりますので、移行月をまたぐ月額変更届の対象者については個別に検算してください。

3.入退社時の精算が煩雑になります
月の途中で退職した場合、資格喪失日は退職日の翌日となりその月の保険料は発生しませんが、当月控除では既に控除済みですので、最終給与での返金処理が必要です。一方、月末退職の場合は資格喪失日が翌月1日となりその月分の保険料が発生しますので、退職日が月末か否かで処理が分かれます。
また月の途中で入社した場合は、日割りで支給額の少ない初月に満額の保険料を控除することになり、控除しきれないケースが生じます。翌月への繰越しのルールをあらかじめ決めておくと良いでしょう。40歳到達による介護保険料の徴収開始月も1か月前倒しになりますので、該当者の一覧を作成し開始月をご確認ください。

4.年末調整・源泉徴収票への影響
移行した年は2か月分を控除する月があるため、その年の源泉徴収票の「社会保険料等の金額」が実質13か月分となります。その年の課税所得が下がり所得税および翌年度の住民税が軽減される一方、翌年は通常の12か月分に戻るため相対的に負担が増えたように見え、従業員からの問い合わせが集中しやすい点です。分割控除を翌年にまたぐ設計にするとさらに説明が複雑になりますので、年内で完結させる設計が無難です。

5.規程・システム・経理面の確認
就業規則や賃金規程に控除時期の定めがある場合は、改定と周知を行ってください。控除時期の変更自体は賃金額そのものを引き下げるものではなく、通常は労働条件の不利益変更には当たらないと整理されますが、移行月に一時的に手取りが減る以上、十分な予告期間と説明は不可欠です。
給与システムについては、控除対象月の設定変更が可能かを事前にご確認ください。移行月のみ手修正が必要となる製品もあります。なお、納付期限(当月分を翌月末納付)自体は変わりませんが、従業員から1か月早く預かる形になりますので、預り金勘定の残高推移が一時的に変則となります。経理担当者との事前のすり合わせもお勧めいたします。

控除タイミングの変更は、法令・社内規程・給与システム・従業員説明の4方面に影響が及びます。移行の3か月前には移行月の決定と規程・システムの確認を、2〜3か月前には従業員への予告と説明資料の配布を行い、移行月の前月に対象者別の控除額シミュレーションを実施するというスケジュールで進めていただくとよいでしょう。
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