出向者が取締役となった場合の労働保険の適用とは?

質問内容
1. 親会社からの出向者が当社で「取締役専務執行役員」に就任した場合、労働保険は適用外となりますでしょうか?
一般的には労働保険は適用外となりますが、当社では以下の通り従業員身分も含めている要素がございます。
※親会社では部長職、労働保険算定資料にも親会社で支払われた賃金を含めて、当社で労働保険料を納付しております。
※当社では「取締役専務執行役員」という肩書で執行役員でありながら、各本部の「管掌」「担当」といった従業員身分も兼ねております。
2.上記1.で労働保険適用外となった場合は、当社での労働保険料を支払う必要は無いという認識ですが、誤っていないでしょうか?

回答

貴社が出向先ということなので、出向先として労災保険に加入するか否かということになるかと存じます。
在籍出向と考えられるため、適用があれば雇用保険は親会社にて兼務役員の申請をして承認されているものと推察いたします。

労働保険に関して取締役の労働者性の判断については以下の通達がございます。
(昭和34年1月26日 基発48号)
1.法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であっても、法令、定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役、理事、代表社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を受けている者は、原則として労働者として扱うこと。
2.法令または定款の規定によっては業務執行権を有しないと認められる取締役であっても、取締役会規則その他内部規定によって業務執行権を有する者がある場合には、保険加入者からの申請により、調査を行い事実を確認したうえでこれを除外すること。この場合の申請は文書を提出させるものとすること。
3.監査役および監事は、法令上使用人を兼ねることを得ないものとされているが、事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合には、労働者として扱うこと。
4.徴収法11条2項の賃金総額には、取締役、理事、無限責任社員、監査役、監事等(以下「重役」という) に支払われる給与のうち、法人の機関としての職務に対する報酬を除き、一般の労働者と同一の条件の下に支払われる賃金のみを加えること。
5.労働者として取り扱われる重役であっても、法人の機関構成員としての職務遂行中に生じた災害は保険給付の対象としないこと。

上記1に該当するか否かの判断となりますが、工場長や総務部長などの従業員の身分を持つ役員については一般的に労働者性が認められており、上記4にあるように、一般の労働者と同一の条件の下に支払われる賃金を算入するということになります。
今回の件では、従業員身分も兼ねているということ、「執行役員」で従業員身分の方が割合が高いと考えられることから、労災保険に加入するということでよろしいかと存じます。
ただし、役員報酬1本で支払われている場合、全額を算入するかは疑問が残りますので、
今後、労働者部分の賃金〇〇円、役員報酬〇〇円という内訳を取締役会などで決定していただくとよろしいかと存じます。

役員としての立場での業務遂行中の事故については労災扱いとはなりませんので、無駄に高い保険料を支払うこととならないために、可能であれば、賃金部分と報酬部分を分けておくとよろしいと考えます。
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公開日: 労働保険手続き

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