大丈夫?施行される介護休業の改正ポイントを解説!
はじめに
令和3年に改正された「育児休業・介護休業法」が、令和4年4月1日より段階的に施行されており、10月からも制度の一部変更がされます。近年少子高齢化が進んでいる中で、介護休業を活用したいという方も今後増えていくと考えられます。今回は介護休業制度に注目し、ポイントを解説していきます。
要介護状態とは
介護休業は、労働者が要介護状態にある家族を介護するための休業であり、要介護状態とは負傷、疾病等により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。
要介護状態の判断について、介護認定を受けている必要はなく、労働者が要介護であると判断し介護休業が必要であると会社に対して申し出があった場合、会社は介護休業の取得を認める必要があります。
要介護状態の判断基準については、厚生労働省に基準例があります。
改正後の制度説明
以前は有期雇用労働者の介護休業取得要件に一部制限があり、以下の①、②のいずれにも該当しなければなりませんでした。
① 同一事業主の元で1年以上の雇用が継続していること
② 同一事業主の元で介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了することが明らかではないこと。
しかし、令和4年4月1日より①の要件が撤廃され、②の要件を満たせば介護休業を取得できるようになりました。
この改正により、受給資格の要件が無期雇用契約と同様の取り扱いになるため、雇用形態にかかわらず介護休業を取得しやすくなりました。
ただし、労使協定を締結することで、引き続き雇用が1年未満の労働者について介護休業の取得対象者から除外することも可能です。
※労働基準監督署への届け出は不要
運用上の注意
今回の法改正に関して企業は以下の対応が必要となります。
・就業規則の変更
就業規則に有期雇用労働者の介護休業の取得について【1年以上の雇用が継続していること】が要件となっている場合は、削除する必要があります。
・労使協定の締結
有期雇用労働者の介護休業取得要件に引き続き【1年以上の雇用が継続していること】を残しておきたい場合は、労使協定の締結が必要となります。
介護休暇と介護休業
今回は「介護休業」に焦点を当てて、解説させていただきました。
この他に、企業が介護を要する労働者の支援制度として、「介護休暇」がありますので、最後に補足的にご紹介致します。
介護休暇とは、介護を要する家族1人に対し、1年度につき最大5日まで取得出来るものです。
1日、半日、1時間単位でも取得可能で、要介護者の状況に合わせて、臨機応変に使用することが出来ます。
イメージとして、介護休業は短期で使用する、介護休業はある程度長期スパンで使用することを目的としています。
人事の視点
かつては「出産・育児」と「仕事」の両立が難しいと離職を選択せざるを得ない状況がありましたが、近年では育児と仕事の両立は社会的認知が高まり子育てのしやすい社会が形成されつつあります。一方で介護や看護による離職は年々増加しています。
企業ができる介護対策を考える時期がきていると言えます。
1)従業員が相談しやすい環境を
介護と一言でいっても人によって置かれている状況や介護に要する期間が異なります。状況を共有できる環境ということが従業員にとって何よりも安心感がうまれます。介護と育児の決定的な違いは終わりが見えないということです。また、想定外の事も起こり得ます。相談しやすい環境を整えましょう。
2)取得しやすい環境を
介護休業の要件として「常時介護が必要な状態」とあり、その判断基準として介護保険制度における要介護状態区分において要介護2以上であることとされていますがあくまでも参考です。従業員が介護休業を取得しやすいように柔軟な対応をする体制作りを行いましょう。
3)介護離職による人材流出を避けるために
介護に直面する年代の40・50代の主要な業務を行い、次世代に継承を行う役割を担っている人が介護により突然の離職となり事業計画が崩れていくのは企業運営に影響を及ぼします。「社会問題としてどう解決するか」「どう従業員を守るか」を具体化・制度化することが企業を守ることに繋がります。
近い将来「介護のある暮らし」がより身近になってきます。介護と仕事が共存できるしくみ作りをしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
育児・介護休業法は、令和4年度4月から一部施行されています。今後、介護休業を希望する従業員がいる場合には、10月からの変更点も踏まえ取得要件をしっかりと確認した上で、対応していきましょう。また、ご不明点等がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。
最新記事 by SR人事メディア編集部 (全て見る)
公開日: