【2018年問題】トラブル防止の為に企業がとるべき対策は?【PART1】
労働契約法・労働者派遣法の2つの法改正によって
多くの「雇い止め」が懸念されている『2018年問題』。
今回は、シリーズを分けて、2018年問題に関わる2つの重要な法改正についてまとめ、さらに2018年問題に際して「想定される事態」と「トラブル防止の為に企業が備えるべきこと」についてまとめます。
この記事では、2018年問題に関わる法改正のうちの1つ、2012年の『労働契約法改正』『5年ルール』について改めてご紹介します。
目次
そもそも2018年問題って何?
2018年問題とは、政府が正規雇用を増やし格差を是正するために打ち出した、労働契約法・労働者派遣法の2つの法改正施策によって発生する雇用問題のことを指します。
そもそもは、正社員を希望する派遣社員が正当な扱いを受けられるように保護するねらいがあって改正された法律ですが、人件費などコスト増大を余儀なくされる企業が雇い止めを行うなど、かえって労働者に負担のある結果になるのではないかという疑念や懸念が予想されています。
2018年4月に最初の期限を迎える「有期社員の無期転換ルール」、2018年10月に最初の期限を迎える「派遣期間3年ルール」に際して起こるかもしれない「派遣切り」「雇用止め」などの雇用問題を総称して2018年問題と呼びます。
この2018年問題の背景には、雇用形態や契約期間に関する 労働契約法と労働派遣法の2つの法改正があります。
この記事では、2012年に改正された労働契約法についてまとめます。
労働契約法改正(2012年)
労働契約法は、労働者と使用者の間で結ばれる労働契約の基本原則を定めた法律です(2008年3月施行)。
近代化に伴う就業形態の多様化や個別労働関係紛争の増加などに対応するために設置されました。
労働契約の締結・変更・継続・終了、および有期労働契約などについて規定されています。
■労働契約法 改正のポイント
労働契約法の改正のポイントは大きく分けて以下の3つになります。3つのポイントに共通するのは、全て有期労働契約に関する改正であることです。
ポイント① 無期労働契約への転換
ポイント② 雇止め法理の法定化
ポイント③ 不合理な労働条件の禁止
■ポイント① 無期労働契約への転換
①有期雇用の契約が5年を超え、②使用する事業主が同一であり、③契約の更新回数が1回以上の場合に限って、【有期契約労働者には無期転換の申込みをする権利が発生】します。
【例】1年契約の社員の場合
対象:2013年4月1日以後に1年契約を交わした有期労働契約社員
通算5年を超えて契約を更新した6度目の契約の初日から末日のあいだ、有期労働契約者に申込権が発生します。その契約期間中に申込みを行わなかった時は、次の更新期間でも引き続き申込権が発生します。
【例】3年契約の社員の場合
対象:2013年4月1日以後に3年契約を交わした有期労働契約社員
通算契約期間が5年を超えることになる2度目の契約の初日から末日で申込権が発生。その契約期間中に申込みを行わなかった時は、次の更新期間でも引き続き申込権が発生します。
出典:厚生労働省「労働契約法改正のポイント」
【例外】クーリング
契約がない期間が6ヵ月以上ある場合、それまでの有期労働契約期間はカウントされなくなり、有期労働契約を再開したその日から新たに起算して通算5年を超える契約が必要とされます。
出典:厚生労働省「労働契約法改正のポイント」
ー無期転換のタイミング
契約の基本はお互いの申込みと承諾ですが、改正労働契約法は、労働者から申込みがあった場合、雇用主は無期労働契約の締結を拒否することができません。通算契約期間が5年を超えた労働者が無期転換の申込みをした場合には、使用者が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその申込みの時点で成立します。
実際に無期契約に転換されるのは、【申込み時の有期労働契約が終了する翌日から】と決められています。労働者からの申込みの直後に期間の定めのある労働契約が無期契約に変更されるわけではありません。労働者から使用者に対して無期契約の申込みがされた契約期間の終了した翌日、つまり、新しい契約に関する更新のタイミングで、無期契約になります。
ー無期転換に際して労働条件を変更すべきか
無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一の内容のものです。ただし、別段の定めをすることで変更することもできます。
ここでいう「別段の定め」というのは、労働協約、就業規則、使用者と個々の労働者との労働契約を指します。また、有期契約の労働者を無期雇用の契約に転換されるに際し、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後の労働条件を低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましくないとされています。
■ポイント② 雇止め法理の法定化
有期労働契約は、使用者が更新を拒否したときは、契約期間の満了により雇用が終了します(=「雇用止め」)。
雇止めについては、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合にこれを無効とする判例上のルール(=雇止め法理)が確立しています。2012年の法改正では、雇止め法理の内容や、適用範囲を変更することなく、雇止め法理を労働契約法に条文化しました。
【 無効とされる雇用止め 】
以下のいずれかに当てはまる場合、雇用主が雇止めをすることが『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき』雇止めの無効が認められます。
①
過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
②
労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由 ※ があると認められるもの
※
1.合理的な理由の有無については、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されます。
2.いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに合理的な理由の存在が否定されることにはならないと解されます。
簡単に言い換えるならば、
①何度も自動的に契約更新していて実質的には無期契約しているのと変わらなかった、もしくは、②有期労働契約者が「次も契約が更新されるだろう」と思うに足る理由があった、のどちらかの場合において、納得できる理由なしに契約更新を行わないのは法律違反となる、ということになります。
【 雇用止め法理を適用するには 】
条文化されたルールが適用されるためには、労働者からの有期労働契約の更新の申込みが必要です(契約期間満了後でも遅滞なく申込みをすれば条文化されたルールの対象となります)。ただし、こうした申込みは、使用者による雇止めの意思表示に対して、「嫌だ、困る」と言うなど、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもかまわないと解されます。
■ポイント③ 不合理な労働条件の禁止
3つ目のポイントは、同一の使用者と労働契約を締結している有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に”労働条件”を相違させることを禁止するという内容になります。
この”労働条件”には、すべての労働条件が含まれています。賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
【 ”不合理”かどうかの判断方法 】
① 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
② 当該職務の内容および配置の変更の範囲
③ その他の事情
特に、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、上記①~③を考慮して、特段の理由がない限り、合理的とは認められないと解されます。
【例】”不合理” ではない場合 ~定年後の継続雇用 ~
定年後の継続雇用において労働条件が変更になる場合 ①与えられる業務内容、②転勤や昇進などの人事異動の範囲がそれまでの無期雇用から変わることは一般的であり、労働条件の変更は無期雇用から有期雇用になったからではなく①および②が変わったからだと判断できるため、この労働条件の変更は不合理ではない、と判断されます。
まとめ
2012年の労働契約法の改正についてまとめましたが、3つのポイントの中でも特に注目されているのは、1つ目の無期労働契約への転換です。改正労働契約法の施行日は2013年4月1日。期間の定めのない労働契約を繰り返している労働者の多くの人が、2018年4月1日を境に、無期雇用の申込みができるようになります。これに伴い人員の配置計画の見直しをしたり、人材の管理計画を立てたりする必要があります。トラブルを回避するためにも、今一度 対策を見直しましょう。
「2018年問題って何?トラブル防止のために企業が備えるべき対策とは?【PART2】」の記事では、もう1つの重要な法改正「労働派遣法改正」について改めてご紹介し、「2018年問題って何?トラブル防止のために企業が備えるべき対策とは?【PART3】」の記事では、2018年問題よって「想定される事態」と「トラブル防止の為に企業が備えるべきこと」についてまとめていきます!
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