メンターとは?上司と何が違うのか?メンター制度とは何ぞや?

皆様は「メンター制度」という言葉をご存知でしょうか?
新聞などのメディアやインターネットなどで度々取り上げられていますので、言葉自体は耳にしたことのある方は多いでしょう。

ただ、言葉の意味や解釈については事業会社毎に様々のようです。

今回は「メンター制度」について、言葉の意味とともに、具体的な導入事例なども交えてお伝えしたいと思います。

 

メンター制度とは・・・?

事業会社におけるメンター制度とは、一体どのようなものなのでしょうか?

冒頭でも触れたとおり、その解釈は事業会社毎に異なるため、ここでは一般的な意味について解説します。
事業会社で使われる一般的なメンター制度とは、メンティーの業務(キャリア形成・スキル向上・人間関係改善など)や業務外(プライベートなど)のことに対し、メンターが相談を受け、悩みや疑問の解消を促すことにより、メンティーの組織人としての成長を支援する制度のことであり、サポートする範囲は非常に多岐に渡ります。
直属の上司がメンターの役割を担えればよいのですが、サポートの範囲は業務以外の悩み相談(人生相談など)も多く含まれ、且つ部下の人数も一人とは限らないことを鑑みると難しいケースが多く、その役割はホスピタリティーマインドを持った別の先輩や、他部門の先輩から選出されるほうがスムーズにいくようです。

もし、直属の上司(人事・業務評価者)をメンターに選出した場合は、その関係性にもよりますが、本音で相談しにくくなってしまう場合が多いため、本来のメンター制度の意味をなさなくなってしまわないよう注意が必要となります。

 

なぜメンター制度が必要なのか

組織のスリム化や一人ひとりの生産性の向上には成功したものの、それと引き換えに「面倒見の良い先輩や上司=メンター」が自身のことで精一杯で余裕がなくなり、「仕事上がりに飲みにいく=何でも話せる環境」が以前よりも少なくなった、という声も聞かれるようになりました。

組織内での人と人との繋がりが希薄になることで、新入社員の早期退職はもとより、既存社員であっても心の孤立が後を絶たない状況に陥っている事業会社も少なくないでしょう。中には後輩・同僚=仲間・同志というよりは、後輩・同僚=競争相手・ライバルという認識を持って働いている方もいらっしゃるかもしれません。
そんな中、社内の「つながり」や「こころ」の面を大事にする動きが出始め、メンタルヘルスの重要性とともに、メンター制度が注目されるようになりました。

 

メンター制度導入事例

次はメンター制度の導入に成功した事例を見てみましょう。

~A社のケース(従業員数10,000名以上・金融系)~
A社は元来、新入社員の9 割以上が全国の支社へ配属になります。
これまで離職率は低かったものの、知人がいない地方支社に配属された者が孤独感を訴えるケースが徐々に増加してきたため、このまま手を打たなければ離職率の上昇に繋がるのではないかと懸念し、メンター制度を導入することになりました。
A社のメンター制度の特徴は「メンターが指名制ではなく、公募制で「自ら応募してきた」者を採用する」こと。

これは、メンター制度には、資質よりも積極的に活動に参加しようという「熱意」が重要という考えからから公募制が採用されました。
手探りで導入したものの、ふたを開けてみれば制度初年度から目標とした人数以上のメンター希望者が手を上げ、制度開始から4 年目を数える頃には、「前年メンティーだった者が、今年はメンターとして応募してくる」という良いスパイラルも生まれ、新入社員数を大きく上回る者が参加する制度に発展しました。

 

メンター制度導入の難しさ・失敗例

ここまでで、メンター制度のメリットや効果はご理解いただけたかと思いますが、次はメンター制度を導入する際「どのような事に注意するべきか」や「どんな失敗が予測されるのか」をご紹介したいと思います。

 

~OJTとメンター制度の混同~

OJTとメンター制度はそもそも目的や方向性が違います。

しかし、先輩であるメンター自身も目一杯の通常業務を抱えているため、メンティーの納得感よりも時間効率を求めてしまい、即効性の高い答え(テクニック)に走ってしまう場合があります。

そうなると、本来のメンター制度の目的(コミュニケーションを通じた信頼関係の構築)が果たせなくなってしまうので、両者を混同しないよう注意が必要です。

 

~メンターとメンティーのマッチング~
そもそもメンターとメンティーの間に信頼関係がなければ、メンター制度は成り立たず効果も期待できません。
そういった点で、メンターとメンティーのマッチングは簡単ではないでしょう。例えば、年の離れたメンターがメンティーと判り合えない時にジェネレーションギャップという一言だけで片付けてしまうのは危険なことです。

また、メンティーのことを知ろうともせず、先入観やうわべの印象で出来ない奴・甘えた奴と決めつけてしまっては、信頼関係の構築は出来ません。信頼関係を築けるかどうかは、メンターとメンティーの人柄もありますが、そのマッチングが非常に重要であると言えます。

 

~制度の形骸化~
メンター制度自体を当事者達が、面倒な業務として捉えられないような工夫が必要となります。制度をマニュアル化してシステマチックに実行しても、成果は見込めません。

 

メンター制度は、業務内容・知識の習得だけが目的ではないため、方法や正解が一つではないところが難しいポイントです。当然、メンター・メンティー共に自身の業務を抱えているため、将来的に役立つと分かっていても、やはり目の前の業務(主に自身の通常業務)に追われる中で運用していくことは容易ではありません。メンター制度は、如何に時間を作り継続性を持って実施できるかもポイントとなるため、事業会社サイドのフォロー状況(理解・協力など)によっても効果が大きく変わってくることも忘れてはなりません。
つまり、メンター・メンティー・会社のいずれにも温度差があっては、上手くいかないということになります。

 

最後に

メンター制度運営をメンターやメンティーの自主性のみに依存するのではなく、制度を社内に公表しメンターとメンティーが動きやすい環境を用意(バックアップ)することも肝要です。
難しい印象もあるかと思いますが、従業員定着の一つの可能性として、貴社でも一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。

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