媒体でも項目追加!『若者雇用促進法』について改めて整理します

 

早いもので2017年も残り1ヶ月となりました。

2018年の採用準備も進み、既に2018年の新卒採用をはじめている企業も多いでしょう。

 

さて、マイナビやリクナビといったWEB媒体でも来年度に向けての原稿入稿が進んでいます。

そこで注目されるのが、2018年度から新しく追加された項目です。それらの項目は『若者雇用促進法』に基づいて追加されました。

 

昨年の10月から施行され、今年の3月ごろに特に注目された『若者雇用促進法』。

媒体に項目が追加されたこのタイミングで改めておさらいし、来年度の新卒採用に備えましょう!

 

 

 

そもそも『若者雇用促進法』とは?

正式名称は『青少年の雇用の促進等に関する法律』。若者の雇用の促進等を図り、その能力を有効に発揮できる環境を整備するために定められ、昨年の平成27年10月1日から順次施行されています。

 

大きく分けて『円滑な就職実現等に向けた取組の促進』『職業能力の開発・向上の支援』の2つで構成されており、それぞれに項目が続きます。

 

図4

 

 

この中で、今年の3月に話題となり、そしてマイナビやリクナビ等の媒体で新しく項目が追加されたことと関連するのは、『適職選択のための取組促進』です。この項目の中には主に3つの内容が記されています。

 

適職選択のための取組促進

① 職場情報の積極的な提供(平成28年3月1日施行)★

② ハローワークにおける求人不受理(平成28年3月1日施行)

③ ユースエール認定制度(平成27年10月1日施行)

 

新卒採用を行う企業に特に関わりがあるのは、1つ目の『職場情報の積極的な提供』です。この点について詳しく触れたいと思います。

 

 

 

職場情報の積極的な提供(平成28年3月1日施行)

新卒段階でのミスマッチによる早期離職を解消し、若者が充実した職業人生を歩んでいくため、労働条件を的確に伝えること、それに加えて、平均勤続年数や研修の有無・内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供する仕組みをつくる、というもの。規模を問わず新卒採用を行っている企業すべてを対象とし、対象企業は以下の努力義務・義務が課せられます。

 

努力義務幅広い職場情報の提供

義  務応募者等から問い合わせがあった場合、 以下の3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務としている

 

図3

 

 

つまり求職者(学生)から質問があった場合

 

『1.採用・募集に関する状況』から1つ以上

『2.職業能力の開発・向上に関する状況』から1つ以上

『3.企業における雇用管理に関する状況』から1つ以上

 

必ず回答しなければならない、ということになります。

 

 

 若者雇用促進法を違反した場合、罰則はあるの?

 

A.以下のような罰則があります

 

・ハローワークで新卒求人の掲載を取りやめ

・ハローワークでの求人受付を拒否する

 

つまり、ハローワークにおける求人票の『不受理』という罰則が課せられるのです。

違反した企業は、「改善するまで」と「改善後6か月間」はハローワークで新卒者を募集することができません。また、他の就職仲介業者にも、紹介しないように圧力をかけています。

 

これは、『適職選択のための取組促進の中の2つ目『ハローワークにおける求人不受理(平成28年3月1日施行)』にあたります。

ハローワークにおいて、一定の労働関係法令違反があった事業所を新卒者などに紹介することのないよう、こうした事業所の新 卒求人を一定期間受け付けない仕組みを創設した。

 

 

どういった規定に違反すると不受理の対象になるの?

A. 主に次の3つの項目、それに準ずる規定に違反すると不受理の対象となります。

 

図1

 

『3.その他、青少年に固有の事情を背景とする課題に関する規定』の中に「労働条件の明示」が含まれているため、学生に対して労働条件を隠し、そのことについて是正勧告を受けたり、 公表されたりした場合に不受理となります。

 

その他にも、

・労働基準法
・最低賃金法
・男女雇用機会均等法
・育児介護休業法

といった規定に関して違反した企業も、求人不受理の対象になります。

 

 

実際のところどうだったのか

若者雇用促進法が施行されて1年がたちましたが、実際のところ、効果や運用はどうだったのでしょうか。

 

やっぱり公開できない情報もある

株式会社アイデムが2016年3月に実施した調査によると、様々な理由から「数値は把握しているが、公表できない」と考えている企業は、およそ4割に達しています。

就職活動をしている学生にとっては効果のある法律であっても、企業からすればかなり抵抗感があることが伺えます。

20160513_【就活入門】若者雇用促進_グラフ

出典:株式会社アイデム『人と仕事研究所』

 

 

企業は開示する情報を選ぶことができる

そして、もう一つポイントとなるのは、『企業は開示する情報を選ぶことができる』という点です。

先ほどご説明したとおり、企業側は情報提供を求めた学生に対して、『採用・募集に関する状況』『職業能力の開発・向上に関する状況』『企業における雇用管理に関する状況』の3類型ごとに1つ以上の情報提供を行うことを義務としています。

 

しかし言い換えれば、

●新卒採用のうちの離職者数を公表したくない場合でも、

代わりに『過去3年間の新卒採用者数の男女別人数』を公表しておけば問題はない

●月平均所定外労働時間・残業時間を公表しなくとも、

代わりに『有休休暇の平均取得率』を公表すれば問題はない

 

ということになります。

また、「広く職場情報を提供する」ことは『努力義務』となっていますので、ネット媒体などには積極的には載せなくとも(求められないかぎりは)大丈夫、ということに繋がります 。

*****

 

求められないかぎり積極的な情報公開は努力義務であること、また複数の項目から1つを選べることを考えると、不受理という罰則はあるにしても、この若者雇用促進法に直接的な効果がどれ程あるかは疑問視されています。『嘘を言っても罰則がない』という 見方もあるようです。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/29/young-job_n_9352482.html

 

 

まとめ

直接的な効果はなくとも、『企業を選ぶ側が正当に情報提供を求められるようになった』というだけでも大きな効果はあります。

ブラック企業に敏感になっている就活生にとってみれば、残業時間を公表していない、というだけで察しがついてしまいます。また、若者雇用促進法の施行に際し、ブラック企業・ホワイト企業を見分ける指標として明確にいくつかの項目が提示されたことによって、学生側にとっては企業選びの分かりやすい基準ができたことになります。

 

今年度は施行されて1年目でしたが、来年度以降は大学や就活生がこの制度にもっと慣れて、より活発に情報提供を求められることが考えられます。

来年以降も求められる可能性のある情報は必ず準備し、加えてその情報を公表する・公表しないことによる学生の心象への影響を考える必要があるのではないでしょうか。

また、公表する情報を整理し明らかになったことを機に、職場改善のために対策を講じてみてはいかがでしょうか。

 

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大石夏実

新卒採用業務の経験を積んだのち運用Gへ異動。大小様々な規模の企業の社会保険手続き等に携わりながら、もっと深堀したいこと、より詳しく紹介したいことを記事にしていきます。

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