雇用保険料を払っていない期間を含む場合、離職票と失業給付はどうなる?
【1】
弊社社員で、従業員から1日も間を開けずに役員(兼務役員ではない)になった元従業員がおり、
雇用保険の資格喪失の手続きを行いました。
この時は離職票を作成していませんでしたが、元従業員が役員になって短期間で辞任した場合、
従業員だった時に加入していた雇用保険の期間に沿って、離職票の準備は必要になるのでしょうか。
また、この場合、失業給付は受給できるのでしょうか。
【2】
65歳以上も雇用保険に加入することになり、雇用保険料も給与から控除することになりましたが、
雇用保険料が免除されている時からずっと加入していた従業員が退職した場合の離職票の取扱いは、
「雇用保険料が免除されている期間も含めて離職票を作成」
「雇用保険料を払っている期間だけの離職票を作成」
どちらの対応となるのでしょうか。
回答
【1】
ご質問の場合、辞任するまでの期間がどのくらいあったかによって変わってきます。
離職票を作成するときは、離職の日以前2年間に「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」必要となります。
また、失業給付の受給可能な期間は退職日の翌日(喪失日)から1年となっております。
※「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」を記載することができない場合、
2020年8月1日以降の退職であれば、「1か月で80時間以上勤務している」月も「1か月」とし
てカウントできるようになりました。
例えば、賃金支払基礎日数が10日以下となった月について、離職票の備考欄に「その月の労働
時間数」を記入することで、記入した労働時間数が80時間以上であれば、その月は「1か月」と
してカウントされます。
※賃金支払基礎日数・・・賃金支払の対象となった日数のこと。
離職票ではこの賃金支払基礎日数を記載する箇所が2か所(⑨欄・⑪欄)
ありますが、その両方を指します。
▼役員になって1年以上経過してから辞任した場合
役員になってから2年以内であれば、離職票の作成に必要な「賃金支払基礎日数が11日以上の月が
通算して12か月以上」を記載することができるので離職票を作成することはできますが、雇用保険
の資格を喪失してから1年以上経過している場合は、離職票は作成できても、失業給付を受給する
ことはできません。
<例>
2019年3月31日まで従業員として勤務し、2019年4月1日から役員へ就任
→ 2020年3月31日辞任の場合
雇用保険の資格喪失日が2019年4月1日で、役員を辞任した日が2020年3月31日となり、
雇用保険の資格喪失日から1年が経過しているため、失業給付は受給できません。
▼役員になって6か月で辞任した場合
雇用保険の資格喪失日から「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」を記載する
ことができるので、離職票を作成することができます。
また、資格喪失日から1年経っていないので失業給付を受給することはできますが、「失業給付の受
給期間は資格を喪失してから1年以内」となっておりますのでご注意ください。
▼「失業給付の受給期間は資格を喪失してから1年以内」について
実際に失業給付を受けることができる日数が120日あったとしても、下記の期間を含めて1年以内と
なるため、資格を喪失してから失業給付受給手続きをするまでに期間が開いてしまうと、受給できる
日数が減ってしまうことになります。
・資格を喪失してから6か月経過
・待機期間の7日間
・自己都合退職扱いの場合、3か月の給付制限
※2020年10月1以降の退職の場合、給付制限は2か月となります(5年間で2回まで)
<例>
役員になってから6ヵ月で辞任(退職)した場合
「失業保険の受給可能期間1年(12ヵ月) - 役員であった期間(6か月) -
待機期間(7日間) - 給付制限(3ヵ月) = 3か月弱」
の期間が受給可能期間となり、「120日 - 3か月弱」の日数が不支給になる日数となります。
【2】
結論から申し上げますと、「雇用保険料が免除されている期間も含めて離職票を作成」となります。
※2017年1月1日から、雇用保険の適用拡大により、65歳以上の従業員も雇用保険に加入することになり、2020年4月1日より、雇用保険料の免除が廃止され、65歳以上の従業員も雇用保険料が控除されることになりました。
離職票の作成は、「雇用保険に加入している期間」を対象としており、雇用保険料免除の期間も雇用保険に加入している期間になりますので、雇用保険料免除の有無に関わらず、雇用保険に加入していれば離職票作成の対象期間となります。
※65歳以上の離職票は、65歳未満の場合と違って「離職の日以前の1年間で賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月」で作成できます。
また、65歳以上の場合は、一時金である「高年齢求職者給付金」となり、65歳未満の方がもらえる失業給付とは異なります。
▼高年齢求職者給付金のもらえる日数
・雇用保険の加入期間が6か月~12か月 ・・・ 30日
・雇用保険の加入期間が12か月以上 ・・・ 50日
ご質問の場合、辞任するまでの期間がどのくらいあったかによって変わってきます。
離職票を作成するときは、離職の日以前2年間に「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」必要となります。
また、失業給付の受給可能な期間は退職日の翌日(喪失日)から1年となっております。
※「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」を記載することができない場合、
2020年8月1日以降の退職であれば、「1か月で80時間以上勤務している」月も「1か月」とし
てカウントできるようになりました。
例えば、賃金支払基礎日数が10日以下となった月について、離職票の備考欄に「その月の労働
時間数」を記入することで、記入した労働時間数が80時間以上であれば、その月は「1か月」と
してカウントされます。
※賃金支払基礎日数・・・賃金支払の対象となった日数のこと。
離職票ではこの賃金支払基礎日数を記載する箇所が2か所(⑨欄・⑪欄)
ありますが、その両方を指します。
▼役員になって1年以上経過してから辞任した場合
役員になってから2年以内であれば、離職票の作成に必要な「賃金支払基礎日数が11日以上の月が
通算して12か月以上」を記載することができるので離職票を作成することはできますが、雇用保険
の資格を喪失してから1年以上経過している場合は、離職票は作成できても、失業給付を受給する
ことはできません。
<例>
2019年3月31日まで従業員として勤務し、2019年4月1日から役員へ就任
→ 2020年3月31日辞任の場合
雇用保険の資格喪失日が2019年4月1日で、役員を辞任した日が2020年3月31日となり、
雇用保険の資格喪失日から1年が経過しているため、失業給付は受給できません。
▼役員になって6か月で辞任した場合
雇用保険の資格喪失日から「賃金支払基礎日数が11日以上の月が通算して12か月以上」を記載する
ことができるので、離職票を作成することができます。
また、資格喪失日から1年経っていないので失業給付を受給することはできますが、「失業給付の受
給期間は資格を喪失してから1年以内」となっておりますのでご注意ください。
▼「失業給付の受給期間は資格を喪失してから1年以内」について
実際に失業給付を受けることができる日数が120日あったとしても、下記の期間を含めて1年以内と
なるため、資格を喪失してから失業給付受給手続きをするまでに期間が開いてしまうと、受給できる
日数が減ってしまうことになります。
・資格を喪失してから6か月経過
・待機期間の7日間
・自己都合退職扱いの場合、3か月の給付制限
※2020年10月1以降の退職の場合、給付制限は2か月となります(5年間で2回まで)
<例>
役員になってから6ヵ月で辞任(退職)した場合
「失業保険の受給可能期間1年(12ヵ月) - 役員であった期間(6か月) -
待機期間(7日間) - 給付制限(3ヵ月) = 3か月弱」
の期間が受給可能期間となり、「120日 - 3か月弱」の日数が不支給になる日数となります。
【2】
結論から申し上げますと、「雇用保険料が免除されている期間も含めて離職票を作成」となります。
※2017年1月1日から、雇用保険の適用拡大により、65歳以上の従業員も雇用保険に加入することになり、2020年4月1日より、雇用保険料の免除が廃止され、65歳以上の従業員も雇用保険料が控除されることになりました。
離職票の作成は、「雇用保険に加入している期間」を対象としており、雇用保険料免除の期間も雇用保険に加入している期間になりますので、雇用保険料免除の有無に関わらず、雇用保険に加入していれば離職票作成の対象期間となります。
※65歳以上の離職票は、65歳未満の場合と違って「離職の日以前の1年間で賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月」で作成できます。
また、65歳以上の場合は、一時金である「高年齢求職者給付金」となり、65歳未満の方がもらえる失業給付とは異なります。
▼高年齢求職者給付金のもらえる日数
・雇用保険の加入期間が6か月~12か月 ・・・ 30日
・雇用保険の加入期間が12か月以上 ・・・ 50日
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公開日:
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