給与規程に無い年1回支給の賃金の取り扱いについて

現在、給与規程の改廃を進めています。

我が社では慣例的に4月に入社する社員について、入社前月の3月に配属先で1週間程度の研修を実施しています。

この1週間の研修は、自宅から配属先まで、自家用車等で出勤し、終了時間になったら、そのまま帰宅するといった、いわば通常勤務の状態で行うことから、採用後の4月給与にて、この3月に行われた研修分の賃金(最低賃金×研修時間数)を「研修手当」として、また、研修先(配属先)までの移動交通費を合算して支払っています(※支払いはこの1回限り)。
ただ、この研修手当と移動交通費については、給与規程に掲載されていないのですが、改廃にあたり、これらも定義付けしなければならないでしょうか?
定義付けしなければならない場合、その根拠となるような法条文もあわせてご教示いただければ幸いです。

回答

入社前の内定者研修に関して、参加が強制されている研修は労働時間とされ、そのため参加することは業務となるので、賃金としての報酬の支払いが必要となります。
上記により、賃金として扱われる以上、就業規則への記載の絶対的記載事項に該当します。

また、注意事項として、内定者研修における賃金に関しては初任給前の業務に該当するので地域ごとの最低賃金をクリアする必要があり、1日8時間・週に40時間を超える研修に関しては時間外割増賃金の支給が必要となります。
内定者研修中に業務に係る事故等が起きた場合は、労働災害になります。

下記にポイントをまとめましたので、ご参考ください。


ポイント
*賃金を支払う義務があるかどうかは、当該研修が労働時間と言えるかどうかによる。(指揮命令により義務付けられていれば、研修は労務の提供とみなされる)
 →「就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」(昭26.1.20 基収2875)
 →見習い看護婦の学科講習・実習について、使用者が当該受講を義務付けている場合を除き労働時間ではないものとする(昭33.10.10 基収6358)

*参加が強制されている研修は、労働時間であり、それに参加することは業務となるので、使用者は賃金の支払いが必要となる。
*内定者研修における、賃金を具体的に定めている場合は多くなく、その賃金の下限は最低賃金となる。(初任給とは別個に定めることが可能)
*1日8時間、週に40時間を超える時間については、時間外割増賃金を支払う必要がある。

*定義付けに関しては、内定者研修は賃金に該当するので、就業規則に定めておかなくてはならない。
→労働条件に係るものであるから、定義の記載を行い、根拠を明確にしたほうがよい。
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公開日: 賃金 賞与・退職金

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