「管理職になりたくない」は意欲不足?

中堅社員との面談で、本人から「管理職にはなりたくありません」と言われることが増えてきました。
会社としては、若手を育てたり、チームをまとめたりする役割を担ってほしいのですが、管理職を勧めると負担に感じられ、かといって昇進を希望しない社員の処遇や成長機会をどう考えればよいのか迷っています。
管理職を希望しない社員は、意欲が低いと考えるべきなのでしょうか。また、人事制度ではどのように対応すればよいでしょうか?

回答

「管理職になりたくない」という言葉だけで、本人の意欲が低いと判断するのは早いでしょう。
社員が管理職を希望しない背景には、さまざまな理由があります。
まずは理由を確かめ、そのうえで会社が必要とする役割と本人の成長をどのようにつなぐかを考えることが大切です。

次の5つのステップで整理してみましょう。

1.「なりたくない理由」を確認する
最初に必要なのは、本人の言葉をそのまま結論にしないことです。
たとえば、次のような理由が考えられます。
•部下の評価や指導に自信がない
•管理職の仕事が忙しすぎるように見える
•専門的な仕事を続けたい
•責任だけが増え、処遇が見合わないと感じる
•自分の生活との両立が難しい
•現在の管理職を見ても、仕事の魅力を感じられない

「管理職になりたくない」という言葉の奥に、能力への不安がある場合と、仕事の魅力を感じていない場合とでは、必要な対応が異なります。
人事や上司は、すぐに説得するのではなく、「どのような点に不安を感じていますか」「今後、どのような仕事を増やしたいですか」と尋ね、本人の考えを具体的に確認します。

2.管理職の役割を分かりやすくする
管理職の仕事内容が曖昧な会社では、社員が必要以上に重い役割を想像していることがあります。
「管理職になったら、部下の問題をすべて引き受けなければならない」と考えていれば、昇進に不安を感じるのも無理はありません。
会社として、管理職に期待する役割を整理しましょう。
たとえば、次のように具体化します。
•チームの目標と仕事の優先順位を示す
•メンバーの状況を確認し、必要な支援を行う
•部下の仕事を観察し、成長につながる助言をする
•問題を一人で抱えず、関係部署や上司と連携する
•チームの成果と人材育成の両方に責任を持つ

役割が具体的になると、社員は自分に不足していることや、準備すべきことを考えやすくなります。

3.いきなり任命せず、小さな役割から経験してもらう
本人が不安を感じている場合、研修を受けただけで自信を持てるとは限りません。実際の仕事の中で、少しずつ経験を積むことが必要です。
たとえば、次のような役割から始めます。
•後輩一人の相談役を担当する
•小規模な業務改善を取りまとめる
•会議の進行役を経験する
•新入社員の指導を一部担当する
•短期間のプロジェクトでリーダーを務める

経験後には、「うまくできたか」だけでなく、「何ができたか」「どこで迷ったか」「次は何を変えるか」を上司と振り返ります。
能力は、役職に就ければ自動的に身につくものではありません。
実践、振り返り、助言、再実践を繰り返すことで、徐々に安定して発揮できるようになります。

4.管理職以外の成長ルートも検討する
すべての社員が管理職を目指す制度にすると、高度な専門性を持つ社員が活躍しにくくなることがあります。
会社の事業に必要であれば、次のような複数のキャリアを設けることも選択肢になります。
•組織と人をまとめる管理職
•専門知識や技術で貢献する専門職
•難しい案件や業務改善を主導するプロジェクトリーダー
•後輩の育成や知識の共有を担う指導的な役割

ただし、名称だけの専門職制度をつくっても機能しません。
「どのような成果を期待するのか」「組織にどのような影響を与えるのか」「管理職とどのように処遇のバランスを取るのか」まで明確にする必要があります。
管理職と専門職の仕事は異なりますが、どちらが上、どちらが下ということではありません。役割と貢献の違いに応じて、評価と処遇を考えることが重要です。

5.本人の希望と会社の必要性をすり合わせる
本人の希望を尊重することは大切ですが、本人の希望だけで配置や役割を決めるわけでもありません。
会社には、組織運営に必要な役割があります。本人には、自分の得意な仕事だけでなく、等級や立場に応じた貢献も求められます。
そのため、面談では次の3点を分けて話し合います。
1.本人が今後取り組みたい仕事
2.現在の強みと、これから伸ばす必要がある力
3.会社やチームから期待されている役割
この3点が重なる部分を探し、次の半年や1年間で経験する仕事を具体的に決めます。
「将来、管理職になるか」をすぐに決めるのではなく、まず一段階先の経験を設計することがポイントです。

人事制度に求められるのは、社員を一つの昇進ルートに当てはめることではありません。会社に必要な役割を明確にし、社員がそれぞれの強みを活かしながら、より大きな貢献に進める道筋を示すことです。
「管理職になりたくない」という声は、本人の意欲だけの問題ではなく、管理職の役割、負担、育成方法、キャリアの選択肢を見直すきっかけになります。
まず理由を丁寧に確認し、本人の成長と会社が必要とする役割を、具体的な経験を通じてつないでいくことが大切です。
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