評価面談で社員が防御的になるのは

人事評価の面談で、管理職が社員に改善点を伝えると、社員が黙り込んだり、言い訳をしたり、反発したりすることがあります。
管理職からは、「事実に基づいて説明しているのに受け入れてもらえない」「本人の成長を考えて伝えているのに、関係が悪くなってしまう」という声も聞かれます。
一方で、社員からは、「一方的に評価された」「自分の事情を聞いてもらえなかった」「人格まで否定されたように感じた」という意見が出ています。
評価結果や改善点を曖昧にせず、社員の納得感を高め、実際の行動変化につなげるためには、どのような面談を行えばよいのでしょうか。

回答

改善点を伝えても行動が変わらない場合、最初に見直すべきなのは、「言い方の優しさ」だけではありません。
見直す必要があるのは、「面談そのものの進め方です。」
フィードバックは、正しい情報を相手に伝えれば完了するものではありません。
伝えられた内容を、相手がどのように受け止め、どのような意味をつけ、どのような感情を持ったかによって、その後の行動が変わります。

改善のための指摘であっても、社員が「能力を否定された」「評価を下げるための話だ」「もう期待されていない」と受け止めれば、内容を冷静に考える前に、自分を守ろうとする反応が起こります。
そのため、フィードバックでは、伝える内容だけでなく、相手の受け止め方や感情も含めて扱う必要があります。
フィードバックの難しさは単なる情報伝達ではなく、認知面と感情面を伴う人間同士の相互作用があります。

【面談の目的を「納得させること」にしない】
評価面談において、管理職が陥りやすいのは、「自分の評価が正しいことを説明し、本人を納得させなければならない」という考え方です。
しかし、管理職が「納得させよう」とするほど、面談は説明や説得が中心になります。社員は、自分の話を聞いてもらう側ではなく、評価を受け入れさせられる側になります。
面談の目的は、その場で社員に同意させることではありません。
目指すべきなのは、次の3点です。
•管理職と社員の見えている事実を照らし合わせる
•評価や結果が生じた背景を一緒に考える
•次に試す行動を具体的に決める
評価結果について、管理職と社員の見解が完全に一致しないこともあります。
それでも、違いがどこにあるかを明確にし、次の行動に合意できれば、面談には十分な意味があります。

「評価への同意」と「次の行動への合意」は、分けて考える必要があります。
まず、事実と解釈を分ける

改善点を伝えるときは、管理職の評価や印象から話を始めるのではなく、確認できる事実から始めます。
例えば、次のような伝え方です。
「主体性が足りない」
「周囲への配慮が不足している」
「報告がいつも遅い」
これらは、一見すると具体的に見えますが、管理職の解釈や評価が含まれています。

次のように、観察できる行動と影響に分けて伝えます。
「先月のプロジェクトでは、進捗が遅れていることが、期限の2日前まで共有されませんでした。そのため、他のメンバーが作業を組み替える必要がありました」
ここで大切なのは、事実だけを並べて追及することではありません。
事実を共有した後に、管理職の見方を伝えます。
「私は、この段階でもう少し早く相談してほしかったと考えています」
事実、影響、管理職の見方を分けることで、社員は「何を根拠に指摘されているのか」を理解しやすくなります。
面談では、会話の目的を示し、管理職の考えを伝え、具体的な事例を説明し、相手の考えを尋ねる、という要素を組み合わせることが有効です。
単なる一方的な説明ではなく、双方が意味を確かめる対話へ変えるためです

【相手の説明を「言い訳」と決めつけない】
事実を伝えた後は、すぐに改善策を指示するのではなく、本人の見方を確認します。
例えば、次のように尋ねます。
「あなたは、あの時の状況をどのように見ていましたか」
「早めに相談することを難しくしていたものはありましたか」
「今振り返ると、どの時点で対応を変えられそうでしたか」
社員の説明が、管理職には言い訳のように聞こえることもあります。
しかし、ここで「また言い訳をしている」と判断してしまうと、面談はそこで止まります。
本人の説明の中には、業務上の制約、認識の違い、優先順位の誤り、相談への不安、過去の上司との関係など、行動を生み出した背景が含まれている可能性があります。
背景を理解することは、責任を免除することではありません。
同じ問題を繰り返さないために、「どこを変えれば行動が変わるのかを特定する作業」です。
フィードバックが失敗する理由は、内容の正しさだけでなく、双方の感情的な反応や解釈によって、対話そのものが止まってしまうことにもあります。対話の進め方と、双方の内側で起きている反応の両方を扱うことが重要です。

【感情を抑え込ませるのではなく、受け止め方を広げる】
改善点を伝えられれば、誰でも多少は不安になったり、悔しくなったりします。
ここで、「感情的にならず、素直に受け入れてください」と求めても、感情はなくなりません。表に出さなくなるだけです。
必要なのは、出来事の意味を一つに決めつけず、別の見方ができないかを一緒に考えることです。

例えば、社員が、
「自分は、この仕事に向いていないのだと思います」
と話した場合、管理職がすぐに、
「そんなことはない。前向きに考えよう」
と返しても、社員は納得しないでしょう。
次のように、事実に戻りながら見方を広げます。
「今回うまくいかなかったのは、あなたの能力全体の問題でしょうか。それとも、相談のタイミングや進め方に改善できる部分があったのでしょうか」
「この経験から、次の仕事でも使えそうな学びは何でしょうか」
「必要な支援が早い段階で得られていたら、結果は変わったと思いますか」

これは、無理に前向きに考えさせることではありません。
現実の問題を小さく見せることでもありません。
一つの失敗を、「自分には能力がない」という固定的な判断に結びつけず、改善できる行動、仕事の進め方、周囲の支援などに分解して考えることです。
状況を複数の角度から見直し、最も建設的かつ現実的な解釈を選んだうえで、具体的な行動につなげる流れが必要となります。
ただし、受け止め方を変えることが、厳しい事実を避ける手段になってはいけません。
目的は、面談を居心地のよいものにすることではありません。社員が感情に圧倒されず、必要な事実を受け止め、より深く考えられる状態をつくることです。

【最後は「反省」ではなく、「小さな一歩」で終える】
面談の最後に、
「今後は気をつけます」
「もっと主体的に行動します」
という言葉で終わるケースがあります。
しかし、これでは何を変えるのかが分かりません。
面談の最後には、次回の仕事で試す行動を具体的に決めます。

例えば、次のような内容です。
•遅れが発生する可能性が見えた段階で、当日中に上司へ共有する
•相談時には、「現在の状況」「自分で試したこと」「判断してほしいこと」の3点を伝える
•次回の会議では、事前に論点を3つに整理して参加する
•重要な報告の前に、同僚に5分間の確認を依頼する
大きな目標を掲げるのではなく、次の1週間や次の案件で実行できる行動を決めます。
面談では、
「小さく試すとしたら、何から始めますか」
「どのような支援があれば実行しやすいですか」
「いつ、実施できたかを確認しましょうか」
といった質問が有効です。
対話の目的を合わせ、相手の見方を確認し、受け止め方を広げ、次の行動を決める。
この小さな循環を面談の中で回すことで、フィードバックは過去を裁く時間から、次の行動をつくる時間へ変わります。

【管理職だけに責任を負わせない】
フィードバックの改善というと、管理職の「伝える力」だけが問題にされがちです。
もちろん、管理職には大きな責任があります。
一方で、社員側にも、フィードバックを理解するために質問する、感情と事実を分ける、自分の考えを説明する、次の行動を考える、といった力が必要です。
つまり、フィードバックは、管理職から社員へ一方的に提供されるものではありません。
管理職と社員が、よりよい仕事の進め方を一緒に考える共同作業です。
提供者と受け手の双方を能動的な参加者とすることで、従来の「評価する側」と「評価される側」という関係から、学習を共同でつくる関係へ変えていくことができます。
そのため、人事部門が行うべきことも、管理職向けの面談研修だけではありません。

社員に対しても、次のような基本的な受け方を伝えておく必要があります。
•分からない指摘については、具体例を尋ねる
•自分の人格と、指摘された行動を分けて考える
•その場で納得できなくても、事実は一度持ち帰って整理する
•自分の見方や事情も、感情的にならず説明する
•次に試す行動を、自分の言葉で決める

【面談の成否は、その場の雰囲気だけで判断しない】
評価面談が穏やかに終わったからといって、必ずしも成功とは限りません。
社員が反論せず、「分かりました」と答えていても、実際には納得しておらず、その後の行動が変わらないこともあります。
反対に、面談中に意見の違いが出ても、本人が自分の考えを率直に話し、次の行動を具体的に決められたのであれば、意味のある面談です。

面談の成否は、次の点で確認します。
•管理職と社員が、事実と見方の違いを確認できたか
•社員が自分の考えや感情を言葉にできたか
•問題の背景や前提まで考えられたか
•次に試す行動が具体化されたか
•必要な支援と確認時期が決まったか
•面談後、実際に行動が変化したか
フィードバックで本当に目指すべきなのは、「上司の説明に部下が納得した状態」ではありません。

『本人が自分の行動を一段高い視点から見直し、次の選択肢を増やせた状態です。』
評価を伝えて終わるのではなく、社員が経験から学び、次の行動を試し、その結果を再び振り返る。
この流れが日常の仕事の中で繰り返されるようになれば、評価面談は年に一度の緊張する行事ではなく、社員と組織が成長するための実務的な対話へ変わっていきます。
The following two tabs change content below.

HALZ人事メディア

人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人HALZグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by HALZ人事メディア (全て見る)

公開日: 人事制度設計 人材育成・研修

PAGE TOP ↑