年末年始の休業と賃金・有給休暇の取り扱いは?

年末年始の休業と賃金・有給休暇の取り扱いは?企業が注意すべき法的ルールを教えてください。

回答

年末年始の休業日は「法定外休日」であることが多く、会社は原則として賃金支払いの義務はありません。
しかし、有給休暇の「計画的付与制度」を利用する場合は、労使協定の締結など、所定の手続きが必要です。

年末年始の期間は、通常の休日とは異なる特殊な扱いが求められるため、賃金や休暇に関するトラブルが起こりがちです。特に、従業員側が「当然の休み」と認識している日でも、法律上の休日ではないケースがあるため、会社のルールを明確にしておくことが重要です。

1. 年末年始の休業日と賃金の法的取り扱い
まず、労働基準法では「週に1日」または「4週間を通じて4日以上」の休日(法定休日)のみが義務付けられており、これ以外の会社が独自に定める休日は法定外休日(所定休日)として扱われます。

ほとんどの企業では、12月29日~1月3日といった年末年始の休業日は、この法定外休日として就業規則に定められています。会社は法定外休日の賃金を支払う法的な義務はありませんが、月給制の場合は、休業期間を含めて月額賃金が支払われていることが多いため、実質的に有給扱いとなります。

もし従業員に法定外休日である年末年始に労働させた場合、法定休日のような35%以上の割増(休日労働手当)ではなく、原則として25%以上の割増賃金(時間外労働手当)の支払いが必要です。この法定休日と法定外休日の区別、および賃金支払いの有無については、就業規則に明確に記載し、周知徹底することが不可欠です。

2. 年末年始に有給休暇を充てる際の正しい手続き
会社が年末年始の休業期間に、従業員の年次有給休暇(有休)を計画的に充てたいと考える場合、「年次有給休暇の計画的付与制度(一斉付与制度)」を活用することができます。

この制度を利用する場合、企業は以下の手続きを踏まなければなりません。

労使協定の締結:
従業員の過半数を代表する者(または労働組合)と、書面で計画的付与に関する労使協定を締結し、付与する具体的な日付を定める必要があります。

残日数への配慮:
計画的付与に充てられるのは、従業員に最低5日の有休を残したうえでの残りの日数に限られます。有休が5日に満たない従業員(特に新入社員など)に対しては、特別休暇を付与するなどの代替措置が必要です。

就業規則への記載: 制度を導入する旨を、就業規則に必ず記載しなければなりません。

特に注意が必要なのは、労使協定は付与の開始前に締結・周知しておく必要があり、年末になってから急いで締結しても有効とは認められない点です。事前の準備と計画的な運用が必須となります。

3. トラブルを避けるための最終確認
年末年始のトラブルを避けるためには、労務担当者として以下の点を再確認しましょう。

休業日の法的性質と賃金の明確化: 年末年始の休業日が「有給か無給か」「法定休日か法定外休日か」を就業規則で再確認し、従業員への問い合わせに備えること。

有休の計画的付与の協定: 制度を利用する場合、労使協定が最新の内容で有効に締結されているかを確認し、従業員の有給残日数に応じた適切な対応を取ること。


年末年始の休業は、賃金や有給休暇のトラブルが起こりやすい時期です。
特に有給休暇の計画的付与制度の導入には、労使協定の締結や適切な運用が必要です。
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