従たる給与についての扶養控除申告書とはなんですか

従業員が入社する際、扶養控除申告書を提出してもらった時に、その従業員から「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出という項目があるが、これは何ですか?」という質問を受けましたが、うまく回答できませんでした。
従たる給与とは何でしょうか。また、どういった場合に「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出が必要となるかについて教えてください。

回答

まず、従たる給与とは何か、について説明いたします。

簡単に申しますと、従たる給与とは扶養控除等申告書を提出していない会社から支払われている給与を指します。

従業員の入社時、または年末から年始にかけて、その年度の扶養控除等申告書を提出して貰っているかと存じます。
この扶養控除等申告書を提出している会社から支払われている給与のことを「主たる給与」といいます。

扶養控除等申告書は1か所の会社にしか提出することは出来ません。その為、ダブルワーク等を行っている場合、扶養控除等申告書を提出する会社と提出しない会社に分かれます。このうち、扶養控除等申告書を提出しない会社から支払われている給与のことを「従たる給与」といいます。

毎月の給与からは所得税が控除されますが、控除される税額については国税庁から発行されている「源泉徴収月額表」に基づき、扶養控除等申告書を提出している場合は月額表の「甲欄」の税額、提出されていない場合は「乙欄」の税額が控除されます。

通常、乙欄から控除される所得税額は甲欄から控除される税額よりも高い金額となります。しかし、一定の要件を満たしている場合、従たる給与の支払先である会社に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出することにより徴収税額を抑えることができ、従業員の税負担を軽減することが可能です。

従たる給与についての扶養控除等申告書を提出するために必要な要件は、以下のとおりとなります。

【要件】

以下の①の見込み額が、②と③の合計額よりも低い金額( ① < [②+③] )であること。

 ①年間の「給与所得控除後の給与等の金額」

 ②主たる給与の支払者から支給される給与につき控除される「社会保険料等の額」
  ※小規模企業共済等掛金の控除額を含む

 ③「各種扶養控除の合計額」(障害者控除額、寡婦控除額、ひとり親控除額、勤労学生控除額、
   配偶者(特別)控除額、扶養控除額および基礎控除額)

上記要件を満たす場合、「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出することができます。

この申告書を提出すると、乙欄によって算出された毎月の所得税額から、扶養人数1人につき1,610円を控除した上で最終的な所得税額とすることが出来ます。

例えば、本人の課税対象額が100,000円であった場合、通常だと乙欄の所得税額は3,600円となりますが、「従たる給与についての扶養控除申告書」を提出してると申告人数に応じて以下の税額となります。

 申告人数1人 ⇒ 3,600円 - 1,610円 = 1,990円
   〃 2人 ⇒ 3,600円 - 3,220円 =  380円(1,610円×2人)
   〃 3人 ⇒ 3,600円 - 4,830円 ≒   0円(1,610円×3人)
     ※所得税額はマイナスにならないため、0円となります。

乙欄の所得税額は甲欄での控除額に比べ高い金額となる為、上記の要件を満たしている場合は月々の税負担を軽減することが可能になるかと存じます。

ただ、ご注意頂きたい点がございます。
従たる給与についての扶養控除等申告書の提出はあくまで乙欄での徴収額を軽減する手段ですので、乙欄での徴収であることに変わりはございません。
その為、この申告書の提出によって年末徴収を行うことは出来ず、最終的には確定申告が必要となります。
誤って年末調整を行わないようにご注意願います。

また、主たる給与の支払先に提出した扶養控除等申告書に記載した扶養親族を従たる給与についての扶養控除申告に変更することは可能ですが、その逆は、その年度中においては出来ません。誤って申告しないようにしてください。

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出は、ダブルワーク等を行っている方につきましては月々の税負担を軽減する手段となり得ますが、要件や申告方法を正しく理解した上で申告を行う必要がございます。
申告があった場合は、上記要件をご確認の上対応下さいます様お願いいたします。
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公開日: 税務・税法 賃金

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