年末調整で控除できないものは?

従業員から、年末調整では控除できないものがあると聞いたが、どのようなものが年末調整では引けないのかという質問を受けました。
年末調整で対応できないものとなぜ引けないのかを教えてください。

回答

回答から申し上げますと、寄付金控除、雑損控除、医療費控除につきましては、年末調整では対応できません。

年末調整や確定申告等、所得税の計算にあたってはその過程で様々な控除を受けることができます。
これを所得控除と言いますが、ご質問のとおり、これらは年末調整時に控除できるものと出来ないものがあります。

まず、以下にに上げるものについては年末調整で控除することができます。

①社会保険料控除
②小規模企業共済等掛金控除
③生命保険料控除
④地震保険料控除
⑤障害者控除
⑥寡婦(寡夫)控除
⑦勤労学生控除
⑧配偶者控除
⑨配偶者特別控除
⑩扶養控除
⑪基礎控除

更に、令和2年からはひとり親控除が新たに追加されますので、年末調整で控除できるのは12種類ということになります。

これらの控除の適用にあたっては、扶養控除申告書や保険料控除申告書等、必要な書類や証明書を会社に提出する必要があります。

一方、以下に挙げるものについては年末調整では控除することが出来ません。
これらの控除にあたっては、確定申告を行う必要があります。

⑫寄附金控除
国や地方公共団体、公益社団法人等への寄付金のうち、一定の要件を満たすものに対して受けられる控除。ふるさと納税などもこれに含まれる。

⑬雑損控除
自然災害や火災、盗難等により損害を受けた場合に、その損害額に応じて一定の割合が適用される控除

⑭医療費控除
納税者自身や扶養親族のために支払った医療費について、その支払額に応じて一定の割合が適用される控除

では、何故これらを年末調整で控除することが出来ないのでしょうか。理由としては以下が挙げられます。

1.会社の事務作業量の軽減
医療費控除等は控除額を算出する為に提出された医療費が控除対象に該当するかを判別し、集計する必要がある。この事務負担を軽減するため。

2.年末調整に間にあわない
医療費控除やふるさと納税等の寄付金控除は、1月1日~12月31日までのものをもとに計算する必要があり、保険料控除のように見込みで計算することも出来ないので、多くの企業の年末調整に間にあわないため。

3.個人情報を含む控除
年末調整の対象とならない控除は、病気の遍歴や被災、どこに寄付をしている等の個人情報を含む控除であり、勤め先にそれらの情報を知られてしまうことになるため。

つまり、手続きが煩雑であったり、あまり他人に知られたくないことが予想されるものについては確定申告で対応し、手続きや計算が比較的簡易なものについては年末調整で計算をしている訳です。

年末調整時に寄付金や雑損、医療費控除の申告をされる方もいらっしゃるとは存じますが、その際にはこれらは年末調整では対応できないことをご説明の上、翌年に行われる確定申告のご案内をしてあげて下さい。
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公開日: 税務・税法 賃金

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