就業規則のコピーは渡さなきゃダメ?

従業員が就業規則をコピーして持って帰りたいと言ってきました。
コピーを渡す義務はあるのでしょうか。

回答

就業規則には周知義務がありますので、従業員が就業規則の内容を確認したいと思った時にはいつでも確認できる状態にしておかなくてはなりません。


具体的な周知方法は下記のとおりです。


①常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
②書面を労働者に交付すること。
③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
(労働基準法施行規則第52条の2)


就業規則を従業員一人一人に配布するというのも周知方法の1つではありますが、他の周知方法をとることも認められていますので、必ずしも書面を交付しなくてはならないというわけではありません。


従いまして、コピーを渡す義務まではないと言えるでしょう。


どんな周知方法なら大丈夫か?
・社長や人事部長の引き出しに保管されており閲覧には許可が必要、あるいは特定の人のみ閲覧可能条件付きであり、常時確認できる状態ではありませんので、周知義務が果たされたことにはなりません。
・入社時研修などで就業規則を見せながらその内容について説明する省令上は、全文印刷の書面交付が望ましいですが、コストがかかりますのでこの方法でも大丈夫です。ただし、研修終了後も、いつでも誰でも閲覧できる形での保管が必要です。
・社内の共有フォルダに最新の就業規則が保存されている従業員であればアクセスできる、社内ネットワークのフォルダ内に保管されている場合は、周知義務を果たしていることになります。ただし、閲覧制限をかけてしまうと常時確認できる状態ではなくなってしまいます。なお、情報漏洩防止策としての印刷制限や編集制限は問題ありません。


就業規則を社外秘にすることは可能です。
就業規則は会社の重要文書ではありますが、社外に持ち出しを禁止することは法律で禁止されていません。
持ち出しが禁止という旨を就業規則や服務規程等に記しておくとよいでしょう。
質問では、コピーを持ち帰りたいとのことですが、コピーの持ち出しを認めるかどうかは、会社が自由に決められます。原則的にはコピーは禁止して、コピーをする場合は(総務部長等に)申請が必要というルールにしておくという方法も考えられます。


周知を怠った就業規則は無効?
就業規則には、作成義務(従業員10名以上)、労働基準監督署への届出義務、そして周知義務と3つの義務がありますが、周知を怠っていた場合や不十分であった場合には、労働基準法違反として罰則が科せられることがあります。(労働基準法第120条) 就業規則の作成過程では、労働者への意見聴取、労働基準監督署への届出、作成した就業規則の社内周知という3段階の重要な手続きがありますが、この手続きのいずれかが欠けてしまうと、就業規則の効力が完全でなくなりますので注意が必要です。
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公開日: 就業規則

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