派遣先を拒否する無期雇用派遣社員への対応

弊社(人材派遣業)の無期雇用の派遣社員について相談です。
新型コロナの影響で、現在の派遣先との派遣契約が6/末に終了するため、次の派遣先を探しました。
ただこのご時勢、派遣先がなかなか見つからず、ようやく7月から派遣就労可能な先を見つけたのですが、派遣社員が業務内容や休日が違うと派遣に行くことを拒否し、次の派遣先が見つかるまで休業にして欲しいと申し出て来ました。
すぐに別の派遣先が見つかるとも限りませんし、会社の売り上げも減少していて休業手当を払い続ける体力もありません。
どのように対応すればよいでしょうか?

回答

有期雇用派遣では、派遣先のA社やB社へと派遣先に勤務されたときのみ雇用関係が結ばれ、給与もその期間に対して支払われます。対して無期雇用派遣では、派遣会社と期間を定めずに雇用契約を結んでいるため、派遣先のA社とB社での勤務時はもちろんのこと、その間の派遣就業がない期間も、原則、給与または休業手当を支払わなければなりません。

無期雇用派遣では、「雇用や収入が安定する」「同じ職場で長く働くことができる」「スキルアップや長期的なキャリア形成が図れる」といったメリットがある半面、「自分の好きな時間に」「自分のスキルを活かして」「自分の好きな職場で」という働き方が難しくなります。自分が希望していない職場へ派遣されることも、労働条件が変わることも、短期間で様々な会社に派遣される可能性もあります。

ご質問のように派遣元として適切な派遣先を紹介した場合には、当然指示に従って新しい派遣先で勤務することが求められますが、派遣社員にも拒否する合理的な理由(例えば育児・介護のため、土日勤務や遠方の勤務ができない等)があるのかもしれません。

複数の派遣先を紹介できればベストですが、それが難しいようであれば、派遣元として、例えば次のような誠意ある対応が必要となるでしょう。
・しばらくの間雇用調整助成金を活用して休業手当を支払い、雇用を継続させ、別の派遣先を探す
・別の派遣先を見つけることが難しいのであれば、円満退職を目指す(例:1か月給与補償し会社都合退職とする)

一方で適切な派遣先を複数紹介したにもかかわらず、派遣社員の都合で拒否されるケースも考えられます。
そのような場合に備え、合理的な理由なく派遣就業を複数回拒否した場合には退職とする、というようなルールを作り、雇用時に説明するなどして、事前に対策しておかれることをお勧めします。

派遣元事業主が講ずべき措置

労働者派遣法における派遣元事業主(派遣会社)が講ずべき措置を定めた、厚生労働省の告示(平成11年労働省告示第137号、最終改正 平成30年))によると、①派遣労働者の適性、能力、経験等を勘案し、最適な就業機会の確保を図ること②就業する期間及び日、就業時間、就業場所等について派遣労働者の希望と適合する就業機会を確保すること


とされています。従ってできる限り派遣労働者の希望に合う派遣先を探すことを求められています。また、派遣労働者からの苦情を適切に処理することも求められています。
派遣社員が紹介した派遣先を拒否する理由には、本人が抱える事情と労働条件が合わないことが大いに考えられますので、本人の事情に適合する派遣先を紹介するようにし、どうしても見つからない場合は合意による退職の取扱いもやむを得ないと考えます。


また、派遣先に問題(就業環境や人間関係など)がある場合もありますので、紹介しても断られることが多い派遣先については派遣先の状況を定期的に確認し、不適切な部分があれば改善を求め、派遣契約を見直すなどの対応も必要です。

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