スタッフが起こした問題行為を、その上司にメールで報告するのはパワハラですか?

弊社には、リハビリ療法士が100名ほど在籍し、組織としては、大きく4つに分け、4人のグループリーダーで管理、さらにその下に8人のサブグループリーダーを設置しています。人事評価に関しては、それぞれのサブグループリーダー、及びグループリーダーからの報告をもとに、人事担当者である私が最終的な人事評価を行っています。

ある療法士Aのリハビリにつき、Aの同僚Bから、「Aが不適切なリハビリを行っている」という報告がありました。そのため、A所属のグループリーダー及びサブグループリーダーに、状況聴取をしたい旨のメールを送りました。

後日それに対し、Aから「これは自分とBとの間の問題であり、関係ないグループリーダーやサブグループリーダーにメールを送るのはパワハラではないか」と主張を受けました。これはパワハラにあたりますか?

回答

パワハラの概念は非常に曖昧であり、画一的に判断するのは困難と言えますが、厚生労働省はパワハラの定義として、以下の3点を挙げています。

1. 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
2. 業務の適正な範囲を超えて行われること
3. 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
以上の3点を、いずれも満たすものがパワーハラスメントに該当するとしています。

1に関しては、質問者様がAの最終的な人事評価担当者であることから、優位性が認められ、パワーハラスメントの行為主体となりえます。

2について、厚生労働省は、「{業務の適正な範囲を超えて行われている}とは{社会通念に照らし、①当該行為が明らかに業務上の必要性がない、又は②その態様が相当でないものであること}を意味する」としています。
以上の判断基準と、質問者様の人事担当としての職務内容を踏まえると、Bの報告を受け、事実確認のため、Aの直属の上司であるサブグループリーダー及びグループリーダーに聴取を行うことは、①、②どちらにも該当せず、質問文に記載されている内容を拝見する限りでは、人事担当者としての業務の適正な範囲内の行為と言えるでしょう。

3について厚生労働省は「{身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること}の判断に当たっては、{平均的な労働者の感じ方}すなわち、 同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当」としています。
これは、苦痛の感じ方は人それぞれであり、ケースバイケースな判断が必要なため、抽象的な表現をしている思われますので、最終的な判断は、所轄労働基準監督署にお問い合わせください。

パワーハラスメントに該当するには1~3の要素いずれにも該当する必要がありますが、上記のとおり、1.3に関してはともかく、質問文を拝見する限り、2については該当するとは考えにくいため、質問者様の行為は、パワハラに該当しないと考えるのが妥当といえるでしょう。
厚生労働省はパワーハラスメントに該当しうる例として、「相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する。」と挙げています。
これ以外にも、メール内容に、従業員Aへの中傷的な表現や、侮蔑的な表現が含まれている場合、パワーハラスメントかはともかく、ハラスメントに該当する可能性がありますので、社内メールとは言え、注意が必要です。

なお、2020年6月1日から以下の措置を講じることが義務化されます。
(中小企業は2022年4月1日までは努力義務)

職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、 労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
➄ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
注1 事実確認ができた場合
注2 事実確認ができなかった場合も同様

・そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、その 旨労働者に周知すること
注3 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む。
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、 労働者に周知・啓発すること

大企業は6月1日から。中小企業は、2022年4月1日から義務化と言えど、それまでの間も、努力義務が発生しますので早めのご対応をお勧めいたします。


2020年6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されます!

・事業主・労働者の責務が法律上明確化されます。
・事業主は職場におけるパワーハラスメントの防止の必ず講じなければなりません。
・事業主に相談等をした労働者に対する不利益な取り扱いをすることが法律上禁止されます。
※中小事業主は、2022年4月1日から義務化


誰しもがハラスメントの当事者になり得る可能性があります。

上記の防止措置強化のなかでは、事業主のみならず、労働者にも「責務」として「他の労働者に対する言動に注意を払うこと」が明確化されています。また、「他の労働者」には、自社の上司、部下、同僚はもちろん、他社の労働者、求職者も含まれます。普段の言動が、もしかすると相手に苦痛を与えているかもしれません。
これを機会にご自身の言動を振り返ってみてはいかがでしょうか。
また、リモートワークの普及とともに、今までのように顔を合わせて仕事をしている場合の直接的なハラスメントだけでなく、メール等による間接的なハラスメント(厚労省の例として:相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛に送信する)も今後増えてくると思われます。
相手の姿が見えない、相手と直接対峙していないことからの気の緩みがハラスメントに発展しないよう、十分注意する必要があるかもしれません。

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上銘 降聖

上銘 降聖

2020年、新卒として入社。各種保険手続き、給与計算等の業務に従事。「必要な情報を分かり易く」をモットーに、人事労務に関する記事を作成しています。
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公開日: 労務管理 育児介護休業

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