年次有給休暇の1時間単位付与・30分単位付与

弊社では、労使協定により1時間単位の有給休暇付与制度を導入しようと考えています。
導入する際に労使協定を締結することで、これを1時間ではなく、さらに細かく30分単位にて付与することは可能なのでしょうか・・?

それと、導入する場合を想定して考えられるメリットデメリットをご教授くださると助かります。

 

回答

認識の通り、労使協定を結べば、5日以内に限り時間単位での有給休暇を与えることができます。(労働基準法第39条4項)
しかし、時間単位と法律上で規定されていることから分単位で有給休暇を付与することは認められておりませんので、30分単位で付与することはできません。
就業時間が7時間30分のように分単位で決められている場合は1時間未満の時間数を1時間として取り扱うことになります。

時間単位の有給休暇付与制度を導入することのメリットとしては、遅刻・早退時間分を有給休暇にすることができるようになりその月の給与の減額を減らすことができます。
例えば、通院で1時間遅刻する場合、遅刻時間分給与の減額か、減額をされたくないということであれば本来は出社はできるが半日有給休暇を取得することを検討することになると思いますが、時間単位有給休暇を活用すればそのような際の従業員のデメリットをなくすことができます。
しかし遅刻・早退を強制的に有給休暇とすることを就業規則等で定めると、労働基準法第39条5項の労働者の請求する時季に有給休暇を付与する「有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」に反してしまうので、あくまで労働者の希望があればできるというように規定する必要があります。
またデメリットとしては、有給休暇取得状況の管理や、有給休暇を取得した際の勤怠管理が煩雑になるという点が挙げられます。

時間単位の有給休暇付与制度を導入することで従業員の労働者の個別の事情に合わせ柔軟な有休取得が可能になりますが、人事担当者に負荷がかかることになるのでその兼ね合いを考慮する必要があるでしょう。


有給休暇を時間単位とすることのメリット、デメリットについて

・メリットとして、1日単位だと取得しづらい方も多いなか、時間単位で取得できるようにすることで、有休取得率の向上を目指すことができます。一日休むほどではない私用がある場合に使用することができ、ワークライフバランスを図ることができるようになります。
・デメリットとして、有休の管理方法が複雑になります。ただ、勤怠管理システムを導入するなどして、煩雑さを解消することは可能です。また、労働日単位での取得が減少し、本来の有休の趣旨である、まとまった日数の休暇を付与し労働者に休養を与えること、という目的がおろそかになる場合があります。


有給休暇の本来の目的を忘れずに、適切に管理しましょう。

有給休暇付与の目的は、労働者の疲労回復、健康維持・増進、その他福祉向上を図ることであったはずです。
と同時に、発生要件を満たせば法律上当然に労働者に生ずる権利であり、利用目的については労働基準法は関知せず、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由となっています。
従業員にとって利用しやすい休暇制度とすることで、安心して働くことができる職場環境を提供し、従業員の定着、モチベーションの維持向上につながる可能性も高いのです。

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公開日: 労務管理 有給休暇

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