有休取得義務化に合わせて一斉付与制度へ変更する場合の注意点とは?

年次有給休暇の年5日取得義務化の施行に伴い、付与の方法を一斉付与(斉一的取り扱い)に変更しようと考えています。

(現在の弊社の年休付与ルールは、初年度は半年後に10日付与。翌年度からは入社日に付与するというものです)

一斉付与方法へ変更する際に、法的に注意すべきことはあるでしょうか。また、労働組合との交渉で注意すべきことはあるのでしょうか。

回答

年次有休休暇(以下年休)の一斉付与に関しましては、法令で内容詳細を指定されている制度ではございませんので、付与日を統一する方法は様々ありますが、法的に注意すべき点として「入社6か月後に10日、その1年後に11日を付与する」という法定の要件を下回らないようにすることが必須条件として挙げられます。

例えば1月を一斉付与の基準とした場合、2月に入社した社員に対して基準日に合わせて翌年の1月に有休を付与する、という運用では、年休付与日が6ヵ月以上空くことになりますので違法な措置となります。労働基準法は強行法規で下回ることが出来ませんので、基準日と6ヶ月経過日と比べてどちらか早い日に有休が付与されることになります。

ただし、上記のような運用の場合、入社日によっては保持している有休の日数に10日以上の差が出てしまうこと、また、実際の勤続年数は1年近く違ったとしても翌年の基準日には全員2年目として11日付与されることなどにより、社員の間で不公平感が生じる可能性がございます。公平性を保つために、入社月で付与日数を変える等の工夫が必要となります。

例えば、以下のような運用方法が挙げられます

■一斉付与日
1月1日

■01月~06月入社の社員
・入社時 or 6ヵ月経過時点で10日付与
・翌年1月に11日付与
・以後毎年1月に付与

■07月~12月入社の社員
・6月までの入社者とのバランスから、段階的に付与
 (7月入社者には、入社日に3日付与)
 (8月入社者には、入社日に2日付与)
 (9月入社者には、入社日に1日付与)
 (10月~12月入社者には、入社日に付与しない)
・翌年1月に11日付与
・以後毎年1月に付与

07月~12月入社の社員に対しては、翌年1月まで有休を付与しなくとも違法にはなりませんが、公平性を保つために段階的に有休を付与する方法となっています。



法定要件を遵守していれば、現行の年休付与ルールから一斉付与制度に変更することにより、不利になる従業員は通常いませんので、労働組合との交渉で支障になるような問題は生じないはずですが、前述のとおり、制度変更によっては社員間で不公平感が生じることもございます。年休の取扱いに関していかなる不利益も発生しないよう注意される事が必要です。

また、制度移行時に年休保持日数が大幅に増える社員が出てくる可能性がありますので、一時的な年休取得の増加に伴って業務運営上の支障が発生しないか現場状況の確認を行った上で一斉付与制度を導入されることをお勧めいたします。
The following two tabs change content below.
人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人人事部サポートSRグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by SR人事メディア編集部 (全て見る)

公開日:

日常業務に関するちょっとした疑問から、コンプライアンス、人事戦略まで、お気軽にご相談ください。

無料労務相談のお申し込みは、以下のバナーからどうぞ!
無料労務相談のお申し込み
PAGE TOP ↑