残業代 中小も5割増 長時間を抑制、政府検討

なかなか改善しない長時間労働に業をにやし、特に中小企業を対象に残業代の割増率を引き上げよう
という政府の意向を伝えた今回のニュース。中小企業では人手不足を残業で補っているケースも多く
多くの中小企業で経営を圧迫する要因ともなります。特に成長中のベンチャー企業では売上重視で、
労務管理がずさんなケースが多いのですが、今後は労務管理の優劣が、企業の経営の成否を分ける時
代がくるのではないでしょうか。

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残業代 中小も5割増 長時間を抑制、政府検討

参照元:2014年5月10日 日本経済新聞朝刊

政府は中小企業の残業代を引き上げる検討に入った。2016年4月をめどに、月60時間を超える残業に
は通常の50%増しの賃金を払うよう企業に義務付ける。現在の25%増しから大企業と同じ水準に引き
上げて、なるべく長時間労働を減らすよう促す。やむを得ず残業する人の収入は増えるようにして、
消費を押し上げる狙いもある。

労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論を進めて、15年の通常国会に労働基準法の改正案を
出し、16年4月からの適用を目指す。

日本の労基法が定める労働時間は1日8時間、週40時間までが原則。企業がそれを超えて従業員を残
業させる場合は、通常よりも割り増しした賃金を払う必要がある。

中小企業の残業に対する割増率はいま、25%以上と決められている。1時間あたりの賃金が1000円の
人なら、少なくとも1250円の残業代を受け取れる。政府は今回、月60時間を超えた残業時間に対する
割増率を50%以上に引き上げて、1500円を受け取れるようにする方針だ。

政府は10年4月に施行した改正労基法で、従業員が300人を超えるような大企業に対して、60時間超
の割増率を50%以上に引き上げた。当初はすべての企業で一律に引き上げる方針だったが、経営が苦
しい中小企業への配慮で当面は猶予し、3年をめどに再び検討することにしていた。

中小企業庁によると、中小で働く人は3217万人と、働く人全体の70%を占める。厚労省の調べでは、
中小企業の事業所のうち月60時間超の残業をしている人がいるのは4.4%。大企業の8.1%より少ない
が、労務管理がずさんな企業もあり、賃金を支払わない「サービス残業」を含む実際の残業時間はも
っと長いとの指摘が多い。

全国の労働基準監督署は12年度にサービス残業をさせていた1277社を指導して、10万人の働き手に計
105億円の残業代を払わせた。中小の割増率を引き上げると、人件費を抑えるために残業を減らす効果
が期待できる。一方で、かえって残業代を払おうとしない企業が増えてしまう可能性もあるため、厚
労省は労働基準監督署による監視の強化も併せて検討する。

一部には残業時間を減らしにくい業種もある。例えば運送業は荷主から荷物を受け取ったり、届け先
に渡したりするまでの待ち時間が長く、労働時間が延びやすい。厚労省はこうした業界に限って、企
業の残業代負担を抑えるため、助成金などの措置を検討する。

残業代の引き上げは、安倍政権が目指す賃上げによる景気底上げ策の一環でもある。残業代が増えれ
ば「消費の押し上げが期待できる。生産性が上がって残業が減れば、余った時間に消費を増やす効果
もある」 (ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長)。

国際労働機関(ILO)の10年の調べでは、国際的に「長時間労働」とされる週49時間以上働く人
の割合は、日本で23%。米国(15%)、英国(12%)、フランス(12%)、ドイツ(12%)を大幅に
上回っている。

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