【令和5年4月1日施行】賃金のデジタル払いが始まります
賃金支払は通貨払いが原則であり、ほとんどの場合は労働者の同意を得て銀行振込にて行われています。
電子マネーが普及しキャッシュレス決済がますます進むであろう中で、令和5年4月から賃金をデジタル払いにて受け取ることができるようになります。
今回はこのデジタル払いをする際の要件等について解説いたします。
目次
1.賃金のデジタル払いとは?
賃金を厚労省の指定を受けた資金移動業者のアカウントに送金するシステムをいいます。
資金移動業者とは、スマホ決済アプリなど銀行以外で送金サービスができる登録業者をいい、令和4年12月31日時点で83社登録されています。
2.デジタル払いを導入するには
賃金のデジタル払いを導入するかどうかは事業所の自由です。
デジタル払いを行うためには、対象労働者や利用する指定資金移動業者の範囲等を定めた労使協定を締結し、デジタル払いについて就業規則に明記することが必要です。
そして労働者にデジタル払いの制度や留意事項を説明し個別に同意を得たうえで、資金移動業者に受け取る賃金額やアカウントIDなどの必要な情報を提出することになります。
3.導入時のポイント
賃金のデジタル払いを導入する場合、以下の点にご注意ください。
一部の項目は労使協定や同意書に明記が必要です。
①デジタル払いの開始時期
デジタル払いに利用できる賃金移動業者は、厚労省の指定を受けたものに限られますが、賃金移動業者が行うこの指定申請の受付が令和5年4月1日からとなっています。
また受付から指定までにかかる期間も未定のため、4月1日からすぐデジタル払いを行うことはできません。
指定資金移動業者リストは厚労省のHPに掲載される予定です。
②就業規則の規定
就業規則にデジタル払いを規定する際、「現金」「銀行振込」「デジタル払い」の3つから選択できるようにする必要がございます。
銀行振込を廃止し現金・デジタル払いにすることはデジタル払いの強制とみなされるため不可となります。
また、デジタル払いへの変更を強制はできないため、変更を希望しない労働者に対しては、引き続き銀行振込等にて行うこととなります。
③資金移動業者口座の資金
資金移動業者口座は、預金ではなく、送金や決済等に用いるためのものであるため、それらに用いない額を口座内に滞留させないようにすることを労働者に理解させることが重要です。
④支払形態
デジタル払いで受け取った給与は、現金で引き出すことができるものと定められています。
仮想通貨や現金化不可のポイントなどは認められません。
4.デジタル払いのメリット
給与デジタル払いのメリットとして、以下が挙げられます。
1.銀行口座のない労働者に対しての給与振り込みが可能になるため、開設が難しい外国人労働者等への支払や海外送金の利便性が高い
2.キャッシュレス決済を利用しやすくなる
3.振込手数料の削減・無料化が期待できる
4.賃金支払方法の選択肢が拡大するため、他社との差別化が図れる
・・・など
5.デジタル払いのデメリット
一方、以下のようなデメリットが挙げられます。
1.受け取れる額は上限100万円のため、それを超える場合、予め労働者が指定した銀行口座等への入金になる
2.公共料金の引き落とし等には対応していないものが多い
3.資金移動業者には、法律上補償の規定がなく補償内容は業者によって異なるため、破綻した場合などの安全性が疑問視されている
・・・など
6.まとめ
今後も世の中はデジタル化が加速していくことが予想されます。
社会の変化に対応できるよう、メリット・デメリットをよく理解したうえで導入をご検討いただければと存じます。
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