助成金・支援金の動向についてご案内します!!
目次
1.はじめに
新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらない中、雇用調整助成金や休業支援金の今後の動向が注目されています。また、最低賃金の引き上げ幅は全国平均31円が発表され、過去最大の昨年28円を更新しました。一方で原材料も高騰が継続しています。このような世の中の動向に合わせて、助成金・支援金等の要件の変更も行われています。今回は、雇用調整助成金・支援金等や、業務改善助成金の変更点について、ご案内します。
2.雇用調整助成金と休業支援金について
厚生労働省は2022年8月31日に、新型コロナウイルス感染症に関する雇用調整助成金と休業支援金について、2022年10月以降11月末まで内容を縮小し、延長することを発表しました。(ただしこちらは、方針を表明したものであり、施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点での予定となります。)
雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、休業手当などの一部を助成するものです。また、こちらの助成金には、業況特例と地域特例があり、該当する事業所において助成金の日額上限額は高くなります。業況特例とは、直近3カ月の平均売上がコロナ渦前より30%以上減少した事業所が該当します。地域特例とは、緊急事態措置の実施やまん延防止等重点措置の実施をした地域において営業時間の短縮等に協力した事業所が該当します。
2022年10月以降、雇用調整助成金の日額上限額は、下記の通り変更されます。
■直近3カ月の平均売上がコロナ渦前より30%以上減少した事業所、または地域特例の対象となる事業所
【現在】1人当たりの日額上限額15000円 → 【2022年10月以降】12000円
■直近3カ月の平均売上の減少がコロナ渦前より30%未満の事業所、かつ地域特例の対象とならない事業所
【現在】1人当たりの日額上限額9000円 → 【2022年10月以降】8355円
休業支援金は、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止の措置の影響により休業させられた労働者のうち、休業中に賃金(休業手当)を受けることができなかった方に対し、支給されます。また、こちらの支援金には、地域特例があり、該当する方の休業支援金の日額上限額は高くなります。地域特例の対象は、雇用調整助成金と同じです。
2022年10月以降、休業支援金の日額上限額は、下記の通り変更されます。
■全国的な措置(現状と変更はありません。)
【現在】1人当たりの日額上限額8355円 → 【2022年10月以降】8355円
■地域特例の対象となる方
【現在】1人当たりの日額上限額11000円 → 【2022年10月以降】8800円
こちらは、2022年11月末までの措置であり、2022年12月以降は雇用情勢などを見極めながら、2022年10月末までに改めて発表される予定です。
※参照※
令和4年10月以降の雇用調整助成金の特例措置等及び産業雇用安定助成金の拡充について
https://www.mhlw.go.jp/stf/r410cohotokurei_00001.html
雇用調整助成金等・休業支援金等の助成内容
https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000982188.pdf
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
3.小学校休業等対応助成金・支援金について
厚生労働省は2022年9月2日に、小学校休業等対応助成金・支援金について、2022年10月以降11月末まで内容を縮小し、延長することを発表しました。(こちらも方針を表明したものであり、施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点での予定となります。)
小学校休業等対応助成金とは、新型コロナウイルス感染症への対応として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者を支援するため、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給の休暇を取得させた企業に対して、助成されるものです。特例として、緊急事態宣言の対象地域、またはまん延防止等重点措置を実施すべき区域であった地域に事業所のある事業主が対象となり、該当する事業所において助成金の日額上限額は高くなります。
2022年10月以降、小学校休業等対応助成金の日額上限額は、下記の通り変更されます。
■全国的な措置
【現在】1人当たりの日額上限額9000円 → 【2022年10月以降】8355円
■特例に該当する事業所
【現在】1人当たりの日額上限額15000円 → 【2022年10月以降】12000円
小学校休業等対応支援金は、委託を受けて個人で仕事をする方が、契約した仕事ができなくなった場合に、支援金として支給されます。また、こちらの支援金にも特例があり、該当する方の支援金の日額上限額は高くなります。特例の対象は、小学校休業等対応助成金と同じです。
2022年10月以降、小学校休業等対応支援金の日額上限額は、下記の通り変更されます。
■全国的な措置
【現在】1人当たりの日額上限額4500円 → 【2022年10月以降】4177円
■特例に該当する事業所
【現在】1人当たりの日額上限額7500円 → 【2022年10月以降】6000円
※参照※
令和4年10月以降の小学校休業等対応助成金・支援金の内容等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27766.html
別紙 小学校休業等対応助成金・支援金の改正内容
https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/000984350.pdf
4.業務改善助成金について
業務改善助成金とは、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
厚生労働省は、2022年9月1日より、原材料費高騰等の要因で利益率が減少した中小企業・小規模事業者を特例の対象とし、これらの事業者の設備投資等に対する助成範囲を拡大、事業場内最低賃金が低い事業者に対する助成率の引き上げなど、「業務改善助成金」制度の拡充を行っています。
業務改善助成金には、通常コースと特例コースがあります。特例コースとは、新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が30%以上減少した中小企業事業者等を支援する助成金です。通常コースは事前に交付申請書・事業実施計画などを管轄する都道府県労働局に提出する必要がありますが、特例コースは賃金の引き上げ実施後、申請する点が大きく違います。
通常コースと特例コースに分けて、変更点を説明します。
<通常コース>
通常コースは、①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内、②規模100人以下の中小事業者が、生産性向上のための設備投資等により賃上げを行う場合、引上げ額及び引き上げる労働者数ごとに決められた助成上限額の範囲で助成を行う制度です。引上げ額は30円、45円、60円、90円の4コースあり、引き上げる労働者数は1人、2~3人、4~6人、7人以上、10人以上の5つに区分され、助成上限額が設定されています。新型コロナウイルス感染症の影響により売上高が減少している事業者に対しては、助成対象経費が拡大される特例が設けられています。
【変更1】原材料高騰等の要因により利益が減少した事業者に特例が適用されます。新型コロナの影響で売上高等が減少した事業者が特例を受けやすくなります。
(a)特例対象事業者の追加
原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等外的要因により利益率が前年同月に比べ3%ポイント以上低下した事業者を、特例の対象事業者に追加。
(b)売上高等が減少している事業者の要件緩和
新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が減少している事業者の要件を緩和。
■売り上げ減少幅:「30%」→「15%」
■売上高の比較対象期間:「2年前まで」→「3年前まで」
(c)助成上限区分の緩和
上記の(a)(b)のいずれかを満たす事業者は助成上限額が一番高い賃金引き上げ労働者数10人以上の助成上限額区分を利用可能。
(d)助成対象経費の要件緩和
特例で助成対象経費となる自動車の要件を緩和。
「定員11人以上」→「定員7人以上又は車両本体価格200万円以下」
【変更2】最賃が低い事業者への助成率が引き上げられます。
(a)事業場内最低賃金が870円未満の事業場:9/10(9/10)
(b)事業場内最低賃金が870円以上920円未満の事業場:4/5(9/10)
(c)事業場内最低賃金が920円以上の事業場:3/4(4/5)
※()内は、生産性要件を満たした事業所の助成率
<特例コース>
特例コースは、新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が30%以上減少した中小企業事業者等を支援する助成金です。
【変更1】申請期限と賃上げ対象期間を延長します
申請期限:「2022年7月29日まで」 → 「2023年1月31日まで」
賃上げ対象期間:「2021年7月16日~2021年12月31日」 → 「2021年7月16日~2022年12月31日」
【変更2】対象となる事業者を拡大し、助成率も引き上げます
(a)助成対象事業者の追加
原材料費の高騰など社会的・経済的環境変化等外的要因により利益率が前年同月に比べ5%ポイント以上低下した事業者を追加。
(b)売上高等の比較対象期間見直し
売上高等が30%以上減少した事業者の売上高等の比較対象期間を見直します。
■売上高等の比較対象期間:「2021年4月~2021年12月」 → 「2021年4月~2022年12月」
■売上高の比較対象期間:「2年前まで」→「3年前まで」
(c)助成率の引き上げ
一律3/4を、事業場内最低賃金額が920円未満の事業者は4/5に引き上げます。
※参照※
9月1日から原材料高騰等に対応するため「業務改善助成金」を拡充します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27679.html
業務改善助成金(通常コース)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000984150.pdf
業務改善助成金(特例コース)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000982151.pdf
5.おわりに
世の中の状況に合わせて、助成金等の要件も変更されています。助成金等の情報を収集し、有効に活用していきましょう。
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