労災保険の「特別加入」の対象が広がりました

今までは、国の労災が対象にならなかった職業の方々がいます。例えばITフリーランスやウーバーイーツの配達員といった職業です。

これらの方々は、労働者というよりも事業主という扱いになり、万が一業務中に怪我をしたり、通勤途中で事故に遭っても守られることはありませんでした。

しかし、政府が多様な働き方を推進する中で労災対象となる職業が拡大されております。

今回は、特別加入するにあたって具体的な説明やメリット、デメリットなどご紹介致します。

 

1.特別加入制度とは

 

労災保険は、本来、労働者の保護を目的とした制度ですので、事業主、自営業者、家族従事者など労働者ではない者は、保護の対象とはなりません。

しかし、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めています。それが「特別加入制度」です。

 

特別加入制度とは何ですか。/厚生労働省Q&A

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei15.html

 

 

2.特別加入の種類

 

特別加入できる方の範囲は、次の4種類があります。

 

  1. 中小事業主等の特別加入
  2. 一人親方等の特別加入
  3. 特定作業従事者の特別加入
  4. 海外派遣者の特別加入

 

 

1. 中小事業主等の特別加入

 

「中小事業主」「法人の役員」「家族従事者」等は通常労災保険の対象者とはなりません。

この制度を利用するには、労働保険事務組合に事務処理を委託することが必要です。

 

特別加入者の範囲

中小事業主等とは、以下の①、②に当たる場合をいいます。

①表1に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)

②労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従事者や、中小事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の役員など)

 

労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。

 

表1:中小事業主等と認められる企業規模

業  種 労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業 50人以下
卸売業、サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下

 

特別加入制度のしおり(中小事業主等用)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-5.html

 

2. 一人親方等の特別加入

 

建設現場では、元請業者が一括して下請業者の雇用者の労災保険に加入するのが原則ですが、直接雇用されていない一人親方、また、個人タクシーなどの個人事業主は、この労災保険の適用を受けることができません。

しかし、仕事の性質上、体を負傷しやすいと考えられるため、「一人親方」でも労災保険に特別に加入することができます。

 

一人親方としての加入要件を満たす方が特別加入する場合、「一人親方等の団体」を経由して都道府県労働局長に対して申請書を提出し、承認を受ける必要があります。

 

特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-6.html

 

 

3. 特定作業従事者の特別加入

 

特定作業従事者とは、以下9種類の作業に従事する方のことをいいます。

 

・特定農作業従事者

・指定農業機械作業従事者

・国又は地方公共団体が実施する訓練従事者

・家内労働者及びその補助者

・労働組合等の常勤役員

・介護作業従事者

・芸能関係作業従事者 ⇒ 令和3年4月1日から追加

・アニメーション制作作業従事者 ⇒令和3年4月1日から追加

・ITフリーランス ⇒令和3年9月1日から追加

 

特定作業従事者としての加入要件を満たす方が特別加入する場合、「特定作業従事者の団体」を経由して都道府県労働局長に対して申請書を提出し、承認を受ける必要があります。

 

特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-8.html

 

 

4. 海外派遣者の特別加入

 

国内の事業場では、労災保険が適用となりますが、海外で働く場合はこの適用が受けられません。そこで、労働者を海外へ派遣する際には労災保険の特別加入が必要となります。

 

派遣元の団体または事業主が、その事業から派遣する特別加入予定者をまとめて行うことになっています。

海外派遣者の派遣の形態(転勤、移籍出向など)や派遣先での職種、あるいは派遣先事業場の形態、組織などについては問いません。

提出するもの: 特別加入申請書(海外派遣者)

提出先   : 所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長

 

特別加入制度のしおり(海外派遣者用)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html

 

3.特別加入するメリットとデメリット

・メリット

特別加入制度により、経営者だけでなく役員や経営者家族も万一の事故に備えられます。

万一の事故により怪我・病気・障害・死亡に至る恐れもあり、その際に経営者自身とその家族を保護する特別加入制度は大きなメリットとなるでしょう。

 

中小企業の経営者は、労働保険事務組合に事務委託することによって、納付する概算保険料の額にかかわらず、年3回の分割納付をすることができるようになります。

 

建設業一人親方の場合、労災保険に加入していないと入れない現場があります。そのため、特別加入をすることにより、仕事を受けやすくなります。

 

・デメリット

中小企業の経営者は「労働保険事務組合」、一人親方は「特別加入団体」を通して特別加入の手続きを行いますが、その際に手数料や年会費が発生するデメリットがあります。

 

4.特別加入と民間保険との違い

労災保険は国の制度であり、一般的に民間保険よりも保険料が安く、手厚い補償をしています。また、民間保険には金額や日数について上限額がありますが、労災保険にはそれがないのも特長です。

 

しかし、中小事業主は、特別加入制度ではカバーできない場合があります。

・事業主として仕事をしている場合

・ケガをした際に他の労働者がその場に一緒にいなかった場合

・あらかじめ提出する申請書の業務内容と怪我をした原因が、申請書に記載されていない業務だった場合、これらは給付の対象外となります。

他にも相手方に怪我を負わせてしまったなどご自身の怪我以外にもたくさんのリスクが考えられます。

 

その為、ご自身が加入されている制度の要件をしっかり確認した上で、補填できる民間保険に加入されることをお勧めいたします。

 

5.労災保険の「特別加入」の対象が広がりました

・令和3年4月1日から

  • 特定作業従事者の特別加入の対象に追加

「芸能関係作業従事者」

「アニメーション制作作業従事者」

  • 一人親方等の特別加入の対象に追加

「柔道整復師」
「創業支援等措置に基づき事業を行う方」

 

・令和3年9月1日から

  • 一人親方等の特別加入の対象に追加

「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」⇒ウーバーイーツの配達員など

  • 特定作業従事者の特別加入の対象に追加

「ITフリーランス」⇒フリーランスのプログラマーやWebデザイナーなど

 

・令和4年4月1日から

  • 一人親方等の特別加入の対象に追加

「あん摩マッサージ指圧師」、「はり師」、「きゅう師」の資格をお持ちの方

 

・令和4年7月1日から

  • 一人親方等の特別加入の対象に追加

「歯科技工士」

 

 

まとめ

時代の流れに合わせて、特別加入対象者の職種枠も年々拡大されております。

現在、対象外とされている職種の方々も今後、対象とされる可能性が広がってくることが予想されます。

ご自身の職業が該当するかどうか不安がある方は、住所地の労働基準監督署にお問い合わせください。

また、手続きについては、お近くの社労士事務所(労働保険事務組合に加入している)にご相談下さい。ご不明な点、ご心配な点等ありましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

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