令和4年度 雇用関係助成金について

今年も雇用関係助成金の変更の季節がやって参りました。毎年、新年度になると直近の雇用情勢や関係法律の改正に合わせて雇用関係の助成金の要件、支給内容の改廃があります。今回は弊社でお薦めしている以下の助成金の改廃や支給までの流れをご案内いたします。

 

・キャリアアップ助成金(正社員化コース)

・両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

・両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

・人材開発支援助成金(一般訓練コース)

1.雇用関係助成金とは

 

まず、雇用関係助成金とは「雇用の安定」「職場環境の改善」「仕事と家庭の両立支援」「従業員の能力向上」に関して定められた用件を満たした場合に支給される返済不要の資金調達方法です。

厚生労働省では様々な雇用関係助成金が案内されていますが、いちから探す場合には手間がかかります。また、支給金額に反して申請の手間がかかり費用対効果の低い助成金もあります。そうでない助成金でも助成金上での言葉の定義や就業規則の整備など様々な要件が設けられており、不正がある場合には返金や悪質な場合には罰金も科される場合があります。

本記事では、そうした様々なハードルをクリアし受給まで至る一助となれば幸いです。

 

 

2.改廃事項や制度概要

 

それでは、それぞれの助成金の主な改廃事項や、改廃に至った背景、制度概要を見ていきましょう。

 

1)キャリアアップ助成金(正社員化コース)

 

【主な変更点】は次の通り。

助成対象となる転換の見直し

正社員定義等の変更

加算措置の追加

 

【助成対象となる転換の見直し】

有期雇用労働者⇒無期雇用労働者への転換の助成が廃止。これにより、助成対象となるのは、正社員待遇を受ける労働者へ転換した場合のみとなります。

 

(1) 有期 → 正規 1人当たり 57万円

(2) 有期 → 無期 1人当たり 28万5千円 ⇒(廃止)

(3) 無期 → 正規 1人当たり 28万5千円

 

【正社員の定義が変更(令和4年10月1日~)】

「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が要件となります。

 

【非正規雇用労働者の定義が変更(令和4年10月1日~)】

非正規雇用労働者の定義も変更となります。賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受ける非正規雇用労働者の正社員転換が必要となります。

 

※これらの定義の変更(両コースに共通の改正事項)は、令和4年10月1日以降の正社員転換に適用となります。

 

【加算措置の追加】

人材開発支援助成金の特定の訓練終了後に有期雇用労働者から正社員に転換したときは1人あたり9.5万円加算されます。

 

 

2)両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

3)両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

 

平成30年の内閣府男女共同参画局調査によれば、第1子出産を機に離職する女性の割合は46.9%となり、「依然として高い状況にある」とされます。

同調査によれば、「出産退職に伴う経済全体の付加価値損失は1兆1,741億円」とも見込まれ、仕事と育児の両立を公的に支援することはもはや待ったなしといえる状況です。

 

そのような中で改廃された両立支援等助成金ですが、基本的な制度運用について確認しておきましょう。

厚生労働省によれば両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を行う中小企業事業主を支援する制度であり、具体的にはそれぞれ以下のような目的で運用されています。

 

2)両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

 

働く子育てパパを支援するのが目的。

→男性労働者が育児休業を取りやすいよう、職場環境の見直しを複数実施

→育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定の策定及び策定した規定に基づく業務体制の整備

→子の出生後8週間以内に育児休業を開始し、連続5日以上を取得した労働者が生じた場合に中小企業事業主へ支給

 

 

3)両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

従業員が育児休業を取得しやすいよう、またスムーズに職場復帰できるよう環境を整えることが目的。

→育休取得、育休復帰支援プランに基づく職場復帰、職場復帰後支援、代替要員確保などに取り組んだ中小企業事業主へ支給

 

出生時両立支援コースで改廃されたことは、支給の対象であった大企業が対象外となり、育児目的休暇を取得したときの助成は廃止となりました。

 

 

4)人材開発支援助成金(一般訓練コース)

 

厚生労働省によると、人材開発支援助成金とは、事業内の職業能力開発計画を立て、計画に沿って従業員に職業訓練を実施する事業主などを支援する制度です。つまり事業主が労働者に対して訓練をした際、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

 

3.助成金の支給までの流れ

 

ここからは助成金の支給までの流れについてご説明いたします。

 

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

はじめに、就業規則に非正規雇用労働者に適用する正社員への転換を規定します。令和4年10月1日以降に正社員に転換するときは正社員に適用する「賞与または退職金の制度」と「昇給」、非正規雇用労働者に適用する「正社員とは異なる賃金の額または計算方法」を規定下さい。

 

続いて、所定のキャリアアップ計画書(※)に必要事項を記載し、管轄のハローワークまたは助成金センターに提出します。

 

次に、キャリアアップ計画書に記載したこと及び就業規則に規定したことに基づき非正規雇用労働者を正社員に転換します。

正社員に転換するときは基本給等を転換前より3%以上増額して下さい。

 

次に、所定の支給申請書(※)に必要事項を記載し、必要書類を添付し、管轄のハローワークまたは助成金センターに提出します。

 

支給申請書等を提出後、労働局の審査を経て、支給決定の場合は助成金が支給されることになります。

(※)厚生労働省のホームページからダウンロードします。

 

 

両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

はじめに、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境を所定の中から複数選択して、実施し、育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定を策定して、策定した規定を実施します。育児休業制度を就業規則等に規定して、育児休業を取得します。

 

続いて、所定の支給申請書(※)に必要事項を記載し、必要書類を添付し、管轄の労働局に提出します。

 

支給申請書等を提出後、労働局の審査を経て、支給決定の場合は助成金が支給されることになります。

(※)厚生労働省のホームページからダウンロードします。

 

 

両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

はじめに、育児復帰支援プラン、面談シートを作成し、育児休業制度を就業規則等に規定して、育児休業を取得します。

 

続いて、所定の支給申請書(※)に必要事項を記載し、必要書類を添付し、管轄の労働局に提出します。

 

支給申請書等を提出後、労働局の審査を経て、支給決定の場合は助成金が支給されることになります。

(※)厚生労働省のホームページからダウンロードします。

 

 

人材開発支援助成金(一般訓練コース)

はじめに、キャリアコンサルティングについて就業規則等に規定し、事業内職業能力開発計画を作成し、職業能力開発推進者を選任します。

 

続いて、所定の訓練実施計画届等(※)に必要事項を記載し、必要書類を添付し、管轄の労働局または助成金センターに提出します。

 

提出した訓練実施計画届等に基づいて訓練を実施します。

 

訓練を実施後、所定の支給申請書(※)に必要事項を記載し、必要書類を添付し、管轄の労働局または助成金センターに提出します。

 

支給申請書等を提出後、労働局の審査を経て、支給決定の場合は助成金が支給されることになります。

(※)厚生労働省のホームページからダウンロードします。

 

4.おわりに

 

今回、4つの主だった助成金をご紹介しましたが、企業の皆様の中でこれはうちの会社でも活用できるのではないか、というものが見つかりましたでしょうか。初めて助成金を活用される方、これまでも活用されている方と様々かと思いますが、助成金のことでお困りごとや、本日の記事の中でご紹介できなかった助成金でこんな助成金はないのか、などありましたら、ぜひ一度社会保険労務士法人HALZにお気軽にご相談ください。

 

皆様からのご連絡お待ちしております。

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