【2022年5月1日改正】コロナが原因で退職した際に失業手当が受けやすくなりました

2022年5月1日より、新型コロナウイルス感染症の影響で事業所が休業し勤務時間が減少したことによる退職者が、一定の要件を満たせば失業手当(雇用保険による失業等給付の基本手当)を2~3か月の給付制限を受けることなく受給することが可能になりました。
この記事では、そもそも失業手当というものは何か、そして何が変わったのかについて見ていきます。

 

1.失業手当とは何か

失業手当というのは正式な呼び方ではありません。しばしば失業手当と言われているものは、雇用保険によって行われている、労働者のための給付金のうちの1つです。雇用保険は、失業や育児のための休業など、働く意思のある人が様々な理由で一時的に働くことが困難な状態になった場合に、給付を行って労働者の生活を安定させることを主な目的とした保険制度です。

雇用保険による給付金は様々なものがありますが、その中でも失業等給付のうち求職者給付の「基本手当」というものが失業手当とよく呼ばれているものにあたります。失業等給付は労働者が失業した場合及び雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に給付を行う制度です。この基本手当の他にも、下図のような様々な手当や給付金制度があります。

 

出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_summary.html

 

2.基本手当の詳細

今回の法改正で影響するのは、上記の「求職者給付」の「基本手当」についてです。
「基本手当」は、雇用保険の被保険者が離職し、労働する意思や能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にある場合に給付されるものです。

 

〇受給要件
原則として、離職の日以前2年間に 12 か月以上被保険者期間があることが要件となります。この12ヶ月の数え方は暦上の1か月の区切りではありません。離職日から1か月間ごとに区切ってできた期間ごとに、11日以上の賃金支払い基礎となった日数があれば被保険者期間1か月として計算します。

特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、上記を満たさない場合でも、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あれば受給要件を満たします。

 

〇就職困難者・特定受給資格者・特定理由離職者
基本手当の給付対象者の中で、様々な事情により受給に関して優遇措置を受けられる場合があります。それが上表にも書いてある就職困難者、特定受給資格者、特定理由離職者の3つです。どれに該当するかによって基本手当受給の際に受けられる措置に違いがあります。

・就職困難者
身体障害者・知的障害者・精神障害者・保護観察中・その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者

・特定受給資格者
倒産・解雇等により離職した者

・特定理由離職者
下記のいずれかに該当する者(①、②で若干取り扱いが異なります)
① 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、更新を希望したにもかかわらず当該労働契約の更新がないことにより離職した者
② 正当な理由による自己都合離職者(心身障害や親の介護、本人以外の理由による通勤困難など)

「特定受給資格者」・「特定理由離職者」の詳細については、下記サイトもご参照ください。
ハローワークインタネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html

 

〇給付額

基本手当の給付額は、次の通り計算した基本手当日額に給付日数を掛けた金額が支給額になります。ただし、年齢によって基本手当日額に上限があります。(2022年6月現在)

 

基本手当日額=退職前6カ月間の給与総額÷180×(45%~80%)

※割合は賃金額・年齢によって異なる

※基本手当日額の上限額
30歳未満      :6,760円
30歳以上45歳未満 :7,510円
45歳以上60歳未満 :8,265円
60歳以上65歳未満 :7,096円

 

〇基本手当の給付日数

1. 特定受給資格者及び一部の特定理由離職者
※特定理由離職者のうち、上記①の要件に該当する者のみ対象

2. 1及び3以外の離職者
※特定理由離職者のうち、上記②の要件に該当する者はこちら

3. 就職困難者

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html

 

〇受給期間と給付制限

受給期間は、原則として離職の日の翌日から起算して1年間ですが、受給期間の範囲内のうち上図の給付日数分が、実際に給付が行われる日数になります。そのため、受給期間を過ぎてしまうと、給付日数が残っていても、残りの期間は支給対象外となる点は注意が必要です。

また、会社を自己都合で退職した場合、基本手当の受給手続日から原則として7日経過した日の翌日から一定期間、基本手当を受給できない期間が発生します。これを「給付制限」といいます。なお給付制限は原則3か月間ですが、令和2年10月に法改正があり、「自己の責めに帰すべき重大な理由」がある場合を除いて、5年間で2回までは給付制限期間が3か月から2か月に短縮されるようになりました。
なお、「特定受給資格者」・「特定理由離職者」は給付制限の対象とならず、受給資格決定後7日間の待期期間が終わればすぐに支給期間が開始します。

 

3.改正内容

2022年5月1日より、新型コロナウイルス感染症の影響による離職について「特定理由離職者」となる要件が追加されました。

 

・新型コロナウイルス感染症の影響により事業所が休業(部分休業も含む)し、概ね1か月以上の期間、労働時間が週20時間を下回った、または下回ることが明らかになったことにより離職した方

 

これに該当した方は「特定理由離職者」として、給付制限の対象外となるなどの措置を受けることができるようになりました。なお、労働契約上に労働時間が明示されていない場合であっても、労働時間が減少し、上記の要件を満たしている場合は対象となります。

 

4.おわりに

新型コロナウイルスの影響は、まだまだ終わっていない状況です。「withコロナ」という言葉をしばしば耳にするように、それがあることを前提に生活してかざるをえません。個人だけでなく社会もまたコロナがあることを前提に日々変化し続けています。企業の人事担当者は、この変化し続ける状況を日々把握し、日ごろの人事・労務管理に結びつける必要があります。

社会保険労務士法人は、そうした様々な人事・労務環境の変化の最前線で働く人事をサポートしています。労務相談等もお受けしておりますので、人事・労務管理での困り事がありましたらぜひお声がけください。

 

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