【コロナ対応】ワクチン接種に備え、社内ルールを整備しましょう!

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が各自治体で進められています。企業では、社員がワクチン接種するにあたり、人事的なルール整備が必要とされてきていると思われます。

そこで今回は、ワクチン接種の状況と企業での対応ポイントを整理しました。

 

◆ワクチン休暇とは

「ワクチン休暇」とは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を目的として取得できる休暇制度のことを指します。ワクチン接種が本格化する中、河野行政・規制改革相は5月13日、経団連に対し、「産業医による職場での接種」「ワクチン休暇の導入」を検討するよう要請がありました。これを受け、各企業において、ワクチン休暇をはじめとした、ワクチン接種に対する社内ルールの整備が課題となってきています。

 

◆ワクチン接種の現状

・新型コロナワクチン

新型コロナワクチンには、重症化を抑制する、発熱やせきなどの症状が出ることを防ぐ効果があります。接種により、重症者や死亡者が減ること、医療機関への負荷の軽減が期待されています。自身が重症化しない、発症しないことで、他者への感染リスクを抑える効果も見込まれています。誤解されがちですが、ワクチンを接種すればコロナにかからない、ということではありません。

 

・新型コロナワクチン接種の場所、方法

原則として、住民票所在地の市区町村の医療機関や接種会場で接種することになります。東京、大阪においては別途、大規模接種センターが設けられています。また、地域の負担を軽減し、接種の加速化を図るため、企業や大学等において、職域(学校等を含む)単位でワクチンの接種を行う「職域接種」も始まっています。(2021年7月1日現在、新規の申請受付は一旦休止となっています。)

接種方法については、各市区町村から発送される書類(予診票、説明書等が同封されています)または下記URLを参照してください。

 

接種についてのお知らせ(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html

コロナワクチンナビ(厚生労働省)

https://v-sys.mhlw.go.jp/

職域接種に関するお知らせ(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html

 

・副反応

新型コロナワクチン接種後に副反応が起こる可能性があります。代表的なものとして、注射した部分の痛み、腫れ、赤み、全身の疲労、頭痛、関節痛、悪寒、発熱、吐き気などが挙げられます。厚労省の接種後の健康状況調査によれば、1回目の接種後よりも、2回目の接種後の方が、発症頻度が高い傾向が見られます。

多くは2~3日でおさまりますが、接種後に気になる症状があったら、かかりつけ医に相談してください。

 

東京都福祉局

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/coronavaccine/for_tomin.html

 

以上のように、国としてはワクチン接種を推奨していること、合わせて副反応による体調不良を引き起こす懸念から、企業に対し、ワクチン休暇等の就業環境の整備を求めています。

 

 

 

◆ワクチン休暇、労働時間の取り扱い

・厚労省Q&A

上記の動きをふまえ、厚労省は5月20日に「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を更新し、ワクチン接種による休暇や労働時間の取扱いについての方針を示しています。

 

以下、Q&Aの要約です。

 

職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。

 

  • ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度
  • 特段のペナルティなく労働者の中抜けや労働時間とみなすこと

 

上記は、労働者がワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます。

新型コロナワクチンの接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて御検討いただくことが重要です。

 

新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け):問20

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-20

 

・社内対応

ワクチン接種対応として検討すべきは、ルールの整備と明文化です。以下にポイントを列記します。

 

有給、無給

ワクチン接種のため業務を離れた、または休んだ場合、その分就業したものとして有給扱いすることが望ましいです。

 

ワクチン休暇の対象日

休暇の対象を接種日当日のみ、または接種日翌日も対象とするのか、という観点です。

前述の通り、ワクチン接種による副反応が見られるケースを踏まえ、接種日翌日も休暇の対象とすることを検討する必要があります。また休暇取得のルール(申請書、添付書類等)も合わせて検討しましょう。

 

就業規則への明記

「ワクチン休暇」として明記する方法が一番明確です。この場合、①において有給にしますと、就業規則改定が円滑に進められると思われます。また今回の新型コロナワクチンのみを対象とする場合は、その旨明記し、例えばインフルエンザワクチンとは扱いを区別することを明確にする必要があります。

既に就業規則に「特別休暇」が定められている場合、その運用でカバーする方法も1つと考えられます。メリットとしては就業規則の変更を要しないため、スピーディーに対応できます。

 

対象者の選定

制定したルールの対象者を選定します。パート・アルバイトを含めるのか等が課題となりますが、原則としては全従業員を対象とすることが望ましいと考えます。

また、私傷病休職、産休・育休、出向者、海外出向者等の取り扱いについても、網羅するよう心がけましょう。

最近では、本人の接種だけでなく、家族のワクチン接種に同伴することも対象とする要望も出てきています。

 

・他社事例

下記のように、ワクチン接種に対する対応を表明している企業があります。

 

Yahoo! JAPAN

https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2021/05/12a/

Chatwork

https://corp.chatwork.com/ja/news/2021/05/chatwork-14.html

 

・接種しない人、できない人への配慮

ワクチン接種が進む中、ワクチン接種を拒否する人または諸般の事情で接種できない人に対し、圧力をかける、不利益を与える「ワクチンハラスメント」が急増しています。ワクチン接種はあくまでも任意です。また自病や当日の体調不良等の理由によりワクチン接種を受けられないケースもあります。

ふとした言葉が、相手にとっては「同調圧力」と感じてしまうことがあります。

「ワクチン接種は推奨するが個人の判断、事情は尊重し、不利益な取扱いはしない」という企業の姿勢を周知することが大切です。

 

◆まとめ

ワクチン接種という課題に対し、企業としてどのような方針を示すか、対策を取るのか、問われています。従業員は勿論、ステークホルダーも注視する傾向があるようです。従業員が安心してワクチン接種、就業できる環境を整備することで、CSRを果たしていきましょう。

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