【年金】2021年4月 外国人の脱退一時金が変わりました!

出入国在留管理庁によりますと2020年6月末時点で約288万人の外国籍の方々が日本で生活しています。その中で日本の年金制度に加入している方も多いでしょう。
日本の年金制度は、日本国内に居住している方が加入対象となります。国民年金は20歳以上60歳未満の方が加入、会社勤めしている方であれば厚生年金に70歳まで(下限はありません)加入となっており、国籍を問いません。
ただし、年金受給年齢までずっと日本にいる方ばかりではなく、受給資格を満たさないまま帰国する方も多いでしょう。そのような方に向けた制度が「脱退一時金」です。

 

脱退一時金とは?

日本国籍でない方が、日本の年金制度の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。額は、保険料を納めた期間に応じて決まります。

 

改正の背景と改正点

特定技能1号の創設により期限付きの在留期間の最長期間が5年となったこと、3~5年滞在の外国人比率が増えていること等を踏まえ、脱退一時金の支給額計算に用いる月数の上限の見直され、2021年4月より月数の上限は36月(3年)から60月(5年)に引き上げられました。

 

脱退一時金の支給要件

  • 日本国籍を有していない
  • 日本の公的年金制度(厚生年金保険、国民年金)の被保険者でない
  • 国民年金については、保険料納付済期間等の月数の合計が6月以上、厚生年金については、共済組合等を含む加入期間の合計が6月以上ある
  • 老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない
  • 障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に日本の公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない

 

国民年金の免除期間があった時はどうなる?

国民年金の保険料免除を受けた期間があるとき、月数は以下のとおりとなります。
・保険料4分の1免除期間の4分の3に相当する月数
・保険料半額免除期間の2分の1に相当する月数
・保険料4分の3免除期間の4分の1に相当する月数

 

全額免除の期間は月数に含めることができません。また、国民年金に加入していても、保険料の未納期間は含めることができません。

 

国民年金の脱退一時金の支給額

国民年金の脱退一時金の支給額は、最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額と保険料納付済期間等の月数に応じて計算します。
計算式は以下となります。

 

【最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額×2分の1×支給額計算に用いる数(※1)】

 

※1 支給額計算に用いる数
保険料納付済期間等の月数の区分(6月ごと)に応じて定められており、上限は60です。

 

厚生年金保険の脱退一時金の支給額

厚生年金保険の脱退一時金の支給額は次の計算式によって決まります。

【被保険者であった期間の平均標準報酬額(※2)×支給率(※3)】

 

※2 被保険者期間であった期間の平均標準報酬額

2003年4月以後の期間については、被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額を全体の被保険者期間の月数で除して得た額です。

 

※3 支給率

最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率に2分の1を乗じた率に、被保険者期間の区分に応じた支給率計算に用いる数(※4)を乗じたものをいいます。2017年9月以降、保険料率は18.3パーセントに固定されています。

 

※4 被保険者期間の区分に応じた支給率計算に用いる数

被保険者期間に応じた数で、6月ごとに区分されており、上限は60です。

 

脱退一時金と社会保障協定

外国で就労する場合、母国と就労している国、両方の社会保障制度に加入し、保険料を二重に負担しなければならない場合があります。また、各国の年金を受給するためには、一定の期間その国の年金制度に加入しなければならない場合があるため、保険料が掛け捨てになってしまうことがあります。

「保険料の二重負担防止」と「年金加入期間の通算」を目的として、日本と諸外国で社会保障協定が結ばれています。(ただし、「保険料の二重負担防止」のみとなっている国もあります。)

脱退一時金を受け取った場合、その該当期間は年金の加入期間でなくなります。日本と年金加入期間通算の社会保障協定を締結している国の年金加入期間のある方については、脱退一時金を受け取ると、その期間を通算することができなくなります。

 

最後に

新型コロナウィルス感染症の影響が続く中ですが、収束した際には外国人の雇入れを再開、新たに検討する企業様も多いことでしょう。人事担当者は外国人も年金制度への加入が義務となっていること、また、保険料が掛け捨てになるものではないが注意点もあることを改めて理解し、外国人の従業員にも周知しましょう。

 

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