【脱ハンコ】加速するデジタル化の波、見直される「押印原則」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、新しい生活様式が定着しつつある昨今、新しい働き方として在宅勤務・テレワークを導入する企業が増える一方、書類の押印のために出社しなければいけない人がいるという現実が、テレワーク導入・推進を妨げています。これに対して政府が「押印は必ずしも必要ない」との見解を示したことで、一気に「脱ハンコ」の動きが加速しています。今回は手続きにおける押印省略・廃止についてまとめました。

 

1.既に押印省略可能な手続き

①健康保険・厚生年金保険

以下の手続きについては事業主が「本人が当該届出を提出する意思を確認しました。」と備考欄に記載することで、申請者署名欄の本人署名・押印を省略することが既に可能となっています。電子申請で必要になる委任状についても同様に省略可能です。

 

●被保険者生年月日訂正届
●被扶養者(異動)届・第3 号被保険者関係届
●年金手帳再交付申請書
●養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届
●被保険者証再交付申請書
●高齢受給者証再交付申請書
●高齢受給者基準収入額適用申請書
●被保険者証回収不能届

②雇用保険

以下の雇用継続給付の手続きについては、申請内容を事業主が被保険者に確認し、合意のもと「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」を作成・保存し、申請書の申請者氏名・署名欄に「申請について同意済」と記載することで、被保険者の署名・押印が省略可能です。(電子申請の場合も同様)

 

●⾼年齢雇⽤継続給付⾦(高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続支給申請書、高年齢雇用継続給付支給申請書、雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書)
●育児休業給付⾦(育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書、育児休業給付金支給申請書、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書)
●介護休業給付⾦(介護休業給付金支給申請書、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書)

 

2.当面の間押印を不要とする手続き

①日本年金機構(年金事務所)

適用事業所が書面で提出する届出について、当分の間、事業主の押印又は署名がない場合でも受理する取扱いとしています。

 

ただし、以下については、特に慎重に本人確認を行う必要があると考えられることから、できる限り押印または署名を求めるものの、他の方法により本人確認が可能な場合には押印及び署名を不要とするなど、柔軟に対応することとなっています。

 

●事業主に対して手続の結果に係る通知(決定通知書等)が送付されず、事業主が当該手続が行われたことを把握できない届書等(適用事業所全喪届、事業所関係変更(訂正)届、被保険者生年月日訂正届等)
●郵送通知物の宛先となる住所及び氏名の変更に係る届書等(新規適用届、適用事業所名称所在地変更(訂正)届、被保険者住所変更届、被保険者氏名変更届等)
●当該手続により直接的に金銭の支払等が発生する届書等(保険料等還付請求書、保険料口座振替納付(変更)申出書、保険料預金口座振替辞退(取消)通知書)

 

年管管発0717第1号年国発第07171号新型コロナウイルス感染症の感染防止等の観点からの適用事業所が書面で提出する届出等における押印及び署名の取扱いについて

②協会けんぽ

以下の届書等については、事業主もしくは被保険者の押印または署名を省略して差し支えないとされています。

 

●限度額適用認定申請書
●限度額適用・標準負担額認定申請書
●特定疾病療養受療証交付申請書
●埋葬料(費)支給申請書
●負傷原因届
●任意継続被保険者資格取得申出書
●任意継続被保険者資格喪失申出書
●任意継続被保険者資格取得申出・保険料納付遅延理由申出書
●任意継続被保険者氏名 住所 性別 生年月日 電話番号変更(訂正)届
●任意継続被保険者被扶養者(異動)届
●任意継続被扶養者変更(訂正)届
●保険料預金口座振替依頼書・自動払込利用申込書
●任意継続被保険者保険料口座振替・自動払込辞退(取消)届
●健康保険法第118条第1項該当・非該当届
●被保険者証回収不能届
●被保険者証再交付申請書
●高齢受給者証再交付申請書
●高齢受給者証基準収入額適用申請書
●医療費のお知らせ依頼書
●第三者行為による傷病届

 

協会けんぽへの届書等の取扱いについて

 

尚、協会けんぽ以外では取り扱いが異なる場合もございますので、ご加入の保険者へご確認ください。

 

3.押印廃止予定の手続き

①労働関係書類

2021年度(令和3年4月1日)より、36協定届を含め、押印を求めている約40の労働関係書類について、押印原則を見直し、使用者および労働者の押印欄の削除ならびに法令上、押印または署名を求めないこととします。電子申請における電子署名の添付も不要とします。現状、押印を求めている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある法令様式については、36協定届も含め、押印を廃止する代わりに、様式上に労働者側と合意した事実をチェックするボックスを設けることとしています。

②年末調整書類

2021年から従業員の年末調整書類の押印は不要になります。確定申告での押印も廃止する方向で検討が進められています。

③警察関係書類

自動車の車庫証明や、路上でイベントや工事を行う際に提出する道路使用許可など、警察が関係する315の手続きで、2021年1月から押印を廃止することが決定しています。また、手続き自体をオンライン化してパソコンやスマートフォンなどから申請ができるようにすることも検討されています。

 

4.まとめ

既に地方自治体では申請書への押印を廃止しているところもあり、今後ますます押印廃止、デジタル化の流れは進んでいくものと思われます。デジタル化のハードルも下がってきつつある今日、業務のクラウド化等、新時代の働き方・業務効率化が今後のカギとなりそうです。

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