感染防止から感染確認まで 会社を守る!新型コロナウイルス対応方法まとめ
国内外で新型コロナウイルスの感染が広まっています。首都圏でも公共交通機関を使って通勤していた会社員が新型コロナウイルスに感染していたことが判明するなど、誰もがいつどこで感染してもおかしくない状況になりました。
そこで今回は、新型コロナウイルスに関する企業の対応方法を、感染防止から感染者が確認された時まで、まとめてご紹介します。
目次
感染者発生を防ぐ
①テレワーク導入
テレワークとは、本拠地のオフィスから離れた場所で、情報通信技術を使って仕事をすることです。テレワークには自宅で働く「在宅勤務」、移動中や出先で働く「モバイル勤務」、本拠地以外の施設で働く「サテライトオフィス勤務」がありますが、通勤による新型コロナウイルス感染リスクを回避するためには「在宅勤務」が有効です。
テレワーク導入の際に活用できる助成金もありますので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
②時差出勤導入
1日の実働時間を決め、その範囲内で出退勤時刻を選択することができる制度です。通勤ラッシュ時間帯を避けるように出退勤時刻を選択することにより、満員電車内で新型コロナウイルスに感染するリスクを低減することができます。
上記のメリットがある一方で、出退勤時刻の選択自由度が高すぎると、チームで仕事をしている場合はメンバーの出社時刻が直前まで分からず業務が進まなくなってしまったり、勤怠管理が煩雑になってしまうデメリットもあります。予めパターンを用意し社員にその中から選択させたり、時差出勤導入期間内は出退勤時間帯を日によって変えずに固定するルールにするとこれらのデメリットを防ぐことができます。
③マスク着用、アルコール消毒、検温
供給量が不足している中で難しい面もありますが、社員に対して可能な限りマスク着用を呼び掛けたり、社内にアルコール消毒薬を設置したり、定期的に社内のドアノブ等の消毒を行うことも社員の感染防止につながります。
また、出社時に検温を行い、体温が高く体調が悪い社員については勤務を認めず休ませるという対応方法もあります。ただし、検温した結果を誰でも閲覧することができる場所に掲示することは、プライバシー侵害の問題につながりますので避けましょう。
④飲み会や外出の自粛要請
社員に対して飲み会への参加や不要不急の外出の自粛を呼びかけることも、コロナウイルス感染防止につながります。ただしこれらのプライベートに関することを禁止する権利までは企業にはないため、感染した場合に考えられる影響等を説明した上で自粛を呼びかける程度に留めましょう。
⑤出張の制限
不要不急の出張、特に感染が拡大している地域への出張を控えることも、感染リスクを抑えることができます。
一方、会社の指揮命令で感染が拡大している地域に社員を出張させて万が一新型コロナウイルス感染症に罹患した場合は、労災認定されたり、「安全配慮義務(労働契約法第5条)」違反による損害賠償を請求されて訴訟トラブルにつながる可能性もあります。
新型コロナウイルスが終息するまでは可能な限り不要不急の出張や、感染が拡大している地域への出張は控えましょう。
感染者は発生していないが休業をせざるを得なくなったら
商業施設に出店をしている企業では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により商業施設自体が休業となるケースも出てきています。このような事態となった場合は、下記の対応が考えられます。
①特別休暇を付与する
このようなケースで社員に対して特別休暇を付与した場合、会社が負担するその費用の一部を助成する制度もあります。
雇用調整助成金(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
②有給休暇取得を推奨する
あまり有給休暇の取得ができていない社員がいる場合には、この際に取得を推奨するという方法もあります。ただし、会社から一方的に有給休暇を取得したこととするのは違法となりますのでご注意下さい(労働基準法第39条第4項)。
③普段できない仕事に取り組む
新型コロナウイルスの影響により社員を休ませる方向で検討している企業が多いようですが、発想を転換して敢えて社員を休ませるのではなく、店舗の営業ができない間にメンテナンス作業などの普段なかなかできていない仕事に取り組み、営業再開後のより良い営業活動につなげるという方法もあります。
感染が疑われる社員が発生したら
①休暇の取り扱い
感染が疑われる社員が自主的に有給休暇や病気休暇を取得するなどして休むことも可能です。その間、無給となる場合については傷病手当金を受給できる可能性があります。協会けんぽでは既にその旨が発表されていますが、その他の健康保険組合でも同様に受給できる可能性もあるため、加入されている健康保険組合にご確認ください。
新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について(協会けんぽホームページ)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g1/r2-3/2020031001/
また、「帰国者・接触者相談センター」への相談結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について使用者の自主的判断で休業させる場合には「使用者の責に帰すべき事由による休業」(労働基準法第26条)に該当するため、休業手当の支払い(パート・アルバイト含む)が必要となります。
②休業手当の計算方法
1日当たりの休業手当=平均賃金×60/100 で計算されます。
※平均賃金とは
次の計算式により計算される金額のことを言います。計算した結果いずれか金額が高い方を休業手当の計算に使用します。
・過去3ヵ月間の賃金総額/過去3ヵ月間の日数
・(過去3ヵ月間の賃金総額/過去3ヵ月間の労働日数)×0.6
上記計算式の中の「過去3ヶ月間」とは、算定事由の発生した日(新型コロナウイルスの影響により休業することとなった日)は含まず、その前日から遡って3か月を指します。また、3か月とは暦日の3 か月で、 賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月となります。(労働基準法第12 条第2 項)
また、「賃金総額」には通勤手当、精皆勤手当、年次有給休暇の賃金、通勤定期券代及び昼食料補助等も含まれ、現実に支払われた賃金だけでなく、賃金の支払いが遅れているような場合は未払い賃金も含めて計算します。
尚、下記については「賃金総額」には含みませんので、除外して計算を行います。
・臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金等)
・3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
(四半期ごとに支払われる賞与など、賞与であっても3か月ごとに支払われる場合は算入されます)
・労働協約で定められていない現物給与
感染者が発生したら
①休暇の取り扱い
感染した社員について
新型コロナウイルスは指定感染症となっているため、感染した場合は都道府県知事により就業制限が行われることとなります。よって、感染して仕事を休む場合には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないため休業手当を支払う必要はありません(もちろん支払うことも可能です)。
その代わり、傷病手当金で補償を受けることが可能です。傷病手当金の支給金額は給与額の約2/3程度となるため、本人が有給休暇の取得を希望した場合には有給休暇を取得させることも可能です。ただし、会社側から一方的に有給休暇を取得したこととすることは違法(労働基準法第39条第4項)となりますのでご注意ください。
感染した社員以外の社員について
一方で、社内で感染者が発生したことにより感染拡大防止のために感染していないその他の社員についてもしばらく休業させる場合については、感染した社員とは異なり休業手当の支払いが必要となります。
②治療費についての手続き
新型コロナウイルスの検査費、および新型コロナウイルス感染症に罹患した場合の治療費は公費負担となっており、罹患した本人の負担はありません。
そのため、健康保険の高額療養費や限度額適用認定証の申請手続きは必要ありません。
まとめ
以上、新型コロナウイルス感染防止策、および感染した場合の対応策について紹介しました。今後も新型コロナウイルスの感染拡大の影響は続くと思われます。企業活動への影響を最小限にするために感染防止策を講じつつ、万が一社員が感染してしまった場合も想定して早めに対応方法を検討されることをお勧めします。
船水 希恵
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