年末調整は「お金が戻ってくる」ものではない!? ~還付・徴収の理由を知ろう~
いよいよ年末が近づいてきました。多くの企業で各申告書の配布準備が行われ、本格的に年末調整業務が始まりますね。
人事の皆さんはここから3ヶ月くらいは気が抜けない時期になるかと思います。
今月は年末調整特集と題し、年末調整の細かい疑問を払拭していきたいと思います。
皆さんの会社には、「年末調整」=「お金が返ってくる」と認識している方はいませんか?
「年末調整」=「お金が返ってくる」ではない
年末調整では、一年間に支給した給与に対する所得税をまとめて計算し、毎月大まかに控除している所得税を調整する処理を行っています。ここで最終的に固まる所得税の金額を年税額と呼んでいます。(年税額には復興特別所得税が含まれます。)
この年税額が今まで徴収していた所得税額より少ない場合は、実際の年税額より多い金額を納付していたことになるため「還付」でご本人に戻します。
一方、今まで控除していた所得税額が年税額に満たない場合は、実際の年税額より少ない金額を納付していたことになるため「徴収」でさらに控除する必要があります。
このように、年末調整で行っているのは「その年に控除すべき所得税の金額と、おおまかに控除していた金額との差額を調整する」処理であるため、人によってはさらに徴収されることが往々にしてあるのです。
徴収になるのはどんなケース?
それでは、どんなときに徴収となってしまうのかを確認していきましょう。
◆家族が就職して扶養から外れていたが会社に伝え忘れていた
そもそも会社が扶養情報の変更を認識していなかったケースです。扶養に追加する場合は健康保険証の発行手続きが発生するため忘れにくいですが、外れる場合は会社に申請を出すのを忘れていたという話をよく聞きます。
その時の手間を惜しむことがまとまった所得税の控除につながりますので、都度会社への申請を行うべきでしょう。
◆配偶者を扶養に入れていたが、年末時点でパート収入が103万円を超え扶養から外れた
これは年末調整時までどうなるかがわからないのが困るところです。(社員の方の収入額によりますが、収入が103万を超えても、201万6千円未満までは配偶者特別控除を受けることができる可能性があります。)
◆離婚によって扶養人数が減った
これは会社や担当者が給与での処理を行わなかったか、会社として全て12月に調整すると決まっている場合に起こるケースです。離婚によって扶養人数が減ったことを会社に申告した場合、健康保険の扶養についてはほぼ確実にリアルタイムに行われると思います(保険証の回収等があるためです)。しかし健康保険の処理のみが行われ、給与計算では扶養家族がいる設定の少ない所得税のまま計算されていたとしたら、まとめて12月に徴収が発生します。
離婚されて、会社に言いづらくて年末調整のタイミングまで報告をしていなかった…という場合、12月に徴収が発生してしまいますので注意が必要です。
◆給与の金額に比べて賞与の金額が大きい
賞与からも所得税は引かれています。しかし、賞与の所得税は支給の前月の給与額から徴収税率を決定していますので、給与額と比較して賞与額が大きいという場合は天引き額が本来より少なく計算されていることがほとんどです。その調整も年末調整で行うのが通常の方法であるため、これは往々にして起こります。
◆そもそも所得税が0円であったため源泉徴収されていなかった
給与の金額を計算した後、社会保険料を控除した後の月の給料が88,000円未満の場合、所得税は0円となり源泉徴収は行われません。金額から考えてパートやアルバイトの方に多く発生するのではないでしょうか。年末調整はあくまで源泉徴収されすぎた所得税が還ってくる処理ですので、そもそも給与からの源泉徴収がなかった場合には還付は行われず、徴収するのみとなります。
上記の内容とは反対に、還付になる場合ももちろんあります。こちらもまとめました。
還付になるのはどんなケース?
還付になるのは、徴収の場合と反対のことが起こったときと考えるとわかりやすいかと思います。
◇結婚、同居等で扶養人数が増えた
上記の反対で、前回の年末調整で扶養控除等申告書を提出した後に扶養人数が増えた場合です。健康保険の扶養以外の処理が行われていないと、所得税の設定が高いまま給与計算が続いていますので、控除しすぎていた所得税が還付されることになります。
また、結婚により配偶者を扶養に入れた段階で、給与での税扶養は実施していなかったという場合も同様に還付されます。
◇生命保険や地震保険、共済、個人年金等に加入している
こちらは給与計算の段階では加味されない情報です。保険料控除申告書に生命保険・地震保険、共済、個人年金等の証明書の内容を記入の上、原本を添付することで、生命保険料控除や地震保険料控除が適用されます。
◇ご本人が障害者、または家族に障害者がいる
要件を満している場合、障害者控除の適用を受けることができます。
◇住宅ローン控除がある(2年目以降)
住宅ローン控除の申請は、2年目以降は会社の年末調整にて手続きすることができます。住宅借入金等特別控除証明書・金融機関からの借入金の年末残高等証明書が必要になります。(初年度には必ず確定申告が必要です!)
◇仕事をしながら学校に通っている
仕事をしながら学校に通っていて下記の要件全てに該当する場合、勤労学生控除を受けることができます。
(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額が65万円以下(令和2年分以降は75万円以下)で、(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3) 特定の学校の学生、生徒であること(学校教育法に規定する学校、国・地方公共団体・学校法人等により設置された専修学校、認定職業訓練を行う職業訓練法人)
◇給与の金額に比べて賞与の金額が小さい
上記の「徴収されるケース」の逆で、給与額と比較して賞与額が小さいというときは本来控除されるべき金額より多く計算されている場合があります。その際は控除しすぎていた所得税を年末調整で還付することとなります。
まとめ
毎月の給与から控除されている所得税は、予め少し多めに設定され、控除されています。そのため、還付されるケースが多くなります。
しかし、年末調整は給与額以外の要件を元にして計算をするものですので、例え同じ給与額の人であっても還付金額に違いが出てきます。また、元々の税額が多いからといって必ずしも還付金額が高くなるとは限りません。
もしも従業員の方から「なんで私の還付額は○○なのか?」という問い合わせを受けた場合は、上記の内容を元にご説明をしていただければと思います。
年末調整の本格稼動まであと少し。一緒に頑張っていきましょう。
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