労働安全衛生法に違反しないための、「5つの”S”」
昨年に引き続き、11月1日の渋谷の街は前日のハロウィン参加者が捨てたゴミによってとても汚れていました。ゴミを持ち帰るというマナーを守らない参加者が非常に多いこと、街の中にゴミ箱が余り設置されていないことが原因とされていました。
ゴミだらけになった街の写真を見ると、げんなりしますよね?
それは、職場についても同様です。ものが一面に散らかり放題で、汚れが目立っているような職場は、労働者の仕事へのモチベーションにも悪影響を与えてしまうだけでなく、労働災害が起きるきっかけにもなり得ます。
単なるマナーの問題だけではなく、事業者は、職場における労働者の安全と健康を守り、労働災害を防ぐことを目的とする「労働安全衛生法」を遵守する必要があります。
この法律に違反しないため、そして職場環境を改善するための施策として、「5s活動」を紹介します。
労働安全衛生法とは?
労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律」です。
この目的の達成のため、一定規模以上の事業場では、安全衛生業務を総括管理する責任を負う「総括安全衛生管理者」を選任しなければならないことや、常時50人以上が働く事業場に「産業医」(事業者に雇用され、事業場の労働者の健康管理を行う医師。)を選任しなければならないことが定められています。
さらに、特に危険な作業を必要とする機械を製造するには、労働基準局長の許可が必要で、製造時や輸入時に検査を受けなければならないこと、労働者の健康を害するような物質の製造、輸入、使用が禁止される場合があることなども定めています。
労働安全衛生法の主な罰則
労働安全衛生法には、罰則規定が設けられています。
ここでは、主な罰則規定を挙げていきます。
- 許可なく労働者に重大な健康障害を生ずる物を製造等した場合…3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
- 許可なく特定機械を製造した場合など…1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 危険防止措置をとらない場合、安全衛生教育を行わない場合、健康診断で知り得た秘密を漏えいした場合など…6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 総括安全衛生管理者・産業医等を選任しない場合、健康診断を行わない場合、労働安全衛生法に基づき作成した書類を保存していない場合など…50万円以下の罰金
一方で、この法律には、「~努めなければならない」と書かれた規定(努力規定)も多く見られます。
努力規定には罰則が定められていません。そのため、罰則がないのだから無理に規定を守らなくてよいと思ってしまうかもしれません。
しかしこの思考は誤りです。罰則規定が定められていなくても、規定は遵守していきましょう。
次の項からは、5s活動について見ていきます。
5s活動とは?
5s活動は、「職場環境の維持改善に用いられるスローガンで、職場において徹底される事項を5つにまとめたもの」です。
- 整理(SEIRI)
- 整頓(SEITON)
- 清掃(SEISO)
- 清潔(SEIKETSU)
- しつけ(SHITSUKE)
の5つの頭文字Sをとり、5sと呼ばれています。
1.整理
整理とは、「要るものと要らないものを区別して、要らないものを処分すること」です。
整理をするには、仕事において必要なものを明確にすることがとても大切です。
- 必要以上にものを用意してしまい、余ったものを無駄に保管してしまうことでスペースを圧迫する。
- 最新の情報があるのに、過去の不要な情報を処分していないので見間違いが発生する。
- 備品を共用化していないことで、1つの部署で同じ備品が数多く存在している。
このように不要なものが出てきてしまうのは、職場で本当に必要なものが明確になっていないことが原因です。
昔の情報はもちろん、後で必要になるかもしれないものも処分してしまいましょう。
そして、必要以上にものを増やさないようにします。
2.整頓
整頓とは、「要るものを使いやすい場所に、使いやすいようにきちんと置くこと」です。
ただ綺麗にものを整列させるだけでなく、仕事をやりやすいように置き場や置き方を改善していくことが整頓です。
- 仕事中、頻繁に使うものは手元に置く。
- 常時使う資料は机上やデスクトップに置く。
- 必要なものは取り出しやすい場所に置く。
- 仕事の進捗やプロジェクトに応じて情報を保管する。
- 閲覧後に迷わず元の場所に戻すことができるように、ファイルに通し番号を付ける。
- 使用後は簡単に元の場所に戻せるような配置にする。
整頓の例としてこれらのことが挙げられます。
仕事中の無駄な時間を減らすためにも、一番使いやすい作業環境を目指しましょう。その際、使い終わったものを戻すのが面倒な配置にならないように注意しましょう。
3.清掃
清掃とは、「身の回りのものや職場を、きれいに掃除して、いつでも使えるようにすること」です。
単にゴミを掃除するだけでなく、整理、整頓された状態を維持する目的で行います。
1つの作業が終わったらそのまま次の作業に移行するのではなく、一度清掃を行いましょう。
作業ごとの片付けを怠ると、
- 使い終わった材料がそのままになっており、次の作業で使う材料の置き場がないので、前の材料の上に積み上げざるを得なくなる。
- 新しくファイルを閲覧するような時に置き場がなくなり、前の作業で使っていたものの上に重ねていくようになり、どんどん清掃が大変になっていく。
といった問題が起こります。
整理、整頓された正常な状態が維持できていないと、作業環境に異常があったときに気付くことができないという事態も発生するため、ものの置き場を確保できる程度の最低限の片付けは必ず行いましょう。
また、職場の汚れやゴミをそのままにしないためには、定期的な掃除が必要です。使い終わった会議室を掃除するなど、普段から職場を綺麗にするように心がけましょう。
4.清潔
清潔とは、「整理、整頓、清掃を維持し、誰が見てもきれいで、わかりやすい状態に保ち、きれいな状態を保とうという気持ちにさせること」です。
整理、整頓、清掃を一時的な行動にするのではなく、常に5s活動を維持できるような気持ちを社員に持ってもらわなければなりません。
汚れが目立ちやすいように床や機材を明るい色にする、正常な状態と異常な状態の判別が一目で分かるように機材に目立つ色を取り入れるなど、社員が職場を汚さないように気を付けるような工夫が大切です。
資料室のファイルが常に整列していれば、わざわざ雑に片付けようとする社員は少なくなるはずです。
清掃と同様に、会社全体で普段から職場を綺麗に使うように心がけていきましょう。
5.しつけ
しつけとは、「職場のルールや規律を守り、習慣づけること」です。
守るべきルールを分かりやすくするためには、写真や絵を用いて正常な状態をイメージさせることで社員が異常な状態に気付きやすくしたり、チェックシートを用いて5s活動の改善点を社員に提示させ、社員同士がシートを評価し励ましあったりさせることが挙げられます。
5s活動の目的
・安全、快適な職場を作る
安全な職場であれば、社員が労災事故に遭う可能性を低くすることができます。
また、社員が気持ちよく働ける職場を作ることで、社員や経営者が快適な心で働く事ができます。
・効率的な職場を作る
5s活動によって不要なものをなくし、働きやすいものの置き方をマスターできれば、資料を探すのに要する時間を減らし、最新の情報と古い情報を見間違うようなことを少なくすることができ、より効率的に業務を遂行することができます。
・社員の心を綺麗にする
仕事で使う備品が普段からぐちゃぐちゃに保管されていると、使用後に片付ける際に「どうせ元からぐちゃぐちゃだったのだからテキトーに直してもいいだろう」という心情になり、いつまで経っても保管方法が改善されません。
それだけでなく、仕事で頻繁に使用するものがいい加減に扱われていると、仕事もテキトーにこなせばいいと思ってしまう社員も出てくるかもしれません。
普段から整頓して備品を保管することは、仕事をきちんとこなす、という社員の心にも働きかけることができます。
・社員の頭の中を整理させる
5s活動によって、必要なものと不必要なものを判断する力を身に付けた社員は、作業に必要な道具や使用頻度を頭の中で整理しやすくなり、状況に応じて適切に道具を使用し、作業をスムーズに行いやすくなります。5s活動はそのための訓練となります。
5s活動の事例
・枚岡合金工具株式会社
1999年から徹底した3s(整理、整頓、清掃)活動に取り組んでいる会社です。
各社員が「いつまでに」「何をする」という目標をメモに書きこませることで現状分析を行う「誰いつメモ制度」を導入したり、ものを元の場所へ正しく戻せるように整頓させる写真を貼ったりするなど、社員が5s活動に積極的になれるような策を施しています。
枚岡合金工具株式会社によって「5s活動と3s活動の手引き」が公開されています。(http://www.sg-loy.com/)
まとめ
労働災害を引き起こす危険が排除されておらず、労働者の健康が守られていないのは、法律違反であるということを改めて認識しましょう。
5s活動は製造業・サービス業で用いられるスローガンですが、その考え方はオフィス業務でも十分に活かしていけると思います。大量のファイルを扱っているのにいまいち整理整頓できていないと感じるような場合には、5s活動に取り組むと問題の解決に繋がるかもしれません。
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