【あなたの会社は大丈夫!?】平成30年4月開始!有期契約労働者の無期転換~導入ポイントから実務上の問題までまるっと解説~

 長期にわたりパートタイマーや契約社員などを有期労働契約で反復更新して雇い続けていると、来年の春(平成30年4月)には、法律によって、これらの社員からの一方的な申し込みだけで無期労働契約の社員に転換しなければならなくなる可能性があります。有期労働契約の社員を雇用している企業では、できるだけ早期から対策し、直前の混乱を避ける必要があるでしょう。

今回は、無期転換ルールの導入ポイントから実務上の問題までをまるっとご紹介したいと思います!

 

Ⅰ 無期転換の概要

1.無期転換ルールへの法改正の経緯と意義

 法改正へ至った経緯として、大きく以下の2つの理由が挙げられます。

①今日の有期社員の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を反復更新している現状がある。

②特に長期で働いている有期社員は実質的には、会社の事業運営に不可欠で恒常的な労働力であることが多く、ほぼ毎年「自動的に」更新を繰り返している。

 

このような理由から、有期労働契約社員を期間の定めのない実態と形式を合わせることにしたのが有期労働契約から無期労働契約への転換であり、平成24年8月に成立した「改正労働契約法」の内容の一部です。すなわち、この法改正はより適切な雇用関係にしていくための取組なのです。

 

企業側からすると、この法改正は『手続きが増えてめんどくさいよ!』と思われるかもしれませんが、以下のようなメリットもあります。

 

【企業側が無期転換するメリット】

①あなたの会社の実務や事情等に 精通する無期労働契約の社員を比較的容易に獲得できます。

②有期労働契約から無期労働契約 に転換することで、長期的な視点に立って社員 育成を実施することが可能になります。

③正規雇用労働者や多様な正社員等に転換すると助成金支援が受けられます。

 2.無期転換の要件と効果

 無期転換の要件は、以下の通りです。

①同一の使用者(企業)との間で、通算期間が5年を超えて反復更新されていること

有期契約労働者であること

③期間満了までに転換の申し入れがなされること

これらの要件が満たされる場合に、無期転換ルールが適用されます。以下詳しく見ていきます。

(1)通算期間が5年を超えて反復更新されるとは

無期転換の申込権が発生する時期は以下の通りです。

①契約期間が1年の場合:5回目の更新後の1年間

②契約期間が3年の場合:1回目の更新後の3年間

(2)有期契約労働者とは

有期契約労働者とは、1年や6か月単位の有期労働契約を締結、または反復更新している者を言います。一般には「契約社員」、「パートタイマー」、「アルバイト」などと呼ばれる社員です。

ただし、これらに限らず、各社が独自に位置づけている雇用形態(たとえば、準社員、パートナー社員、メイト社員など)についても、契約期間に定めのある場合は、その名称にかかわらず、すべて「無期転換ルール」の対象となります。

なお、「派遣社員」の場合は、派遣元の企業に無期転換ルールへの対応が求められます。

(3)期間満了までに転換の申し入れがなされることとは

この制度は、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたとき、社員が申込をすることで、期間の定めのない労働契約から無期労働契約に転換できるものです。転換の申し入れがなければ、有期契約での契約をすることができます。

(4)無期転換ルールの効果

(a)効果

通算5年を超えて締結(更新)された契約の期間内にいつでも申込ができ、申込んだ時点で契約成立となります。このとき、会社側に拒否権はありません。ただし、申込からすぐに無期契約に切り替わるわけではなく、申込が行われた契約期間終了日の翌日、つまり次の契約更新のタイミングで無期契約なります。

 

対象となるのは、施行日である平成25(2013)年4月1日以降に開始したまたは更新した)有期労働契約のため、1年を超える有期労働契約を除き最短で、平成30(2018)年4月1日を始期とする契約で無期転換の権利が発生します。

 

(b)転換権の行使・不行使の催告や行使期間の制限

契約期間満了の直前になって突然契約転換の申込みを受けたのでは、労働者に対する就労環境の整備・対応が間に合わないことがあるので、会社として労働者に対し転換の申込みを行うか否かの催告を行なうことができます。

しかし、催告時に労働者が回答を留保した場合、もしくは、回答を拒絶した場合には転換の申込みがなかったものと扱うことはできませんまた、就業規則や個別の同意等にてあらかじめ転換申込期間を設定する場合、労働者の転換権を制約することになりますので、転換申込可能期間(行使可能期間)を申込期間(通算5年を超えた契約期間)満了1ヶ月前までとするなど理的な期間を定め、就業規則だけでなく、個別労働契約書上予め明示しておくなどの工夫が必要となるでしょう。

3.クーリング期間と特別措置法

(1)クーリング期間とは

無期転換ルールには、有期労働契約期間を通算しなくてよい「クーリング期間」が定められています。このクーリング期間とは、有期労働契約の間に契約のない空白期間が6カ月(有期労働契約が1年未満の場合はその契約期間に2分の1を乗じて得た期間)以上ある場合は、前後の有期労働契約を通算しないことを言います。

また、定年再雇用の場合と高度専門職の場合は、無期転換の対象から除外できる特別措置法による特例があります。

(2)特別措置法の取り扱い

(a)特別措置法の対象者

無期転換ルールの特例の対象となるのは、下記に該当する有期雇用労働者です。

 

「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者(年収1,075万円以上)

※具体的には、次の(1)~(7)のいずれかに当てはまる方を指します。

 

・博士の学位を有する者

・公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会・保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士

・ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者

・特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者

・大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー

・システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント

・国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記(1)から(6)までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

 

②定年後に有期労働契約で継続雇用される高齢者

 

(b)特例措置における無期転換申込権の発生時期

無期転換申込権が発生しないのは、最初の有期労働契約からの通算契約期間が、プロジェクトの開始の日から完了の日までの”期間”(年数・月数)を超えない場合です。

例えば、

・ 「6年」を要するプロジェクトに従事している間は「6年」を超えない限り、

・ 「7年」を要するプロジェクトに従事している間は「7年」を超えない限り、

それぞれ、無期転換申込権は発生しないこととなります。すなわち、この期間を超えた場合無期転換申込権が発生します。

 

ただし、以下の場合には、その時点で通常の無期転換ルールが適用され、通算契約期間が5年を超えていれば、無期転換申込権が発生します。

・ プロジェクトに従事しなくなった場合

・ 年収要件(1,075万円)を満たさなくなった場合

・ 計画の認定が取り消された場合

(注1) 通算契約期間の算定は、平成24年労働

 

(c)即例措置の適用を受ける場合の手続き

無期雇用転換ルールの特例措置を受けるためには、高度専門職の場合には「第一種計画認定・変更申請書」、継続雇用高齢者の場合には「第二種計画認定・変更申請書」をそれぞれ提出し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

 

Ⅱ無期転換ルール導入ポイント

無期転換ルールの導入にあたっては、以下の点に気を付けて導入しましょう。

①有期社員の就労実態を調べる

②社内の仕事を整理し、社員区分ごとの任せる仕事を考える

③適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する

以下では、具体的内容について説明していきます。

1.有期社員の就労実態を調べる

まずは、自社で働いている有期社員の現状を把握する必要があります。有期社員の人数、職務内容、月や週の労働時間、契約期間、更新回数、勤続年数(通算契約期間)、今後の働き方やキャリアに対する考え、無期転換申込権の発生時期などを把握すると良いかと思います。

そのほか、会社の就業規則において、有期社員の定義が明確になっているか、正社員、有期社員の労働条件等が就業規則、給与規定等においてどのように規定されているかも確認する必要があるでしょう。

2.社内の仕事を整理し、社員区分ごとの任せる仕事を考える

有期社員が無期転換した場合、転換後の雇用区分に応じ、従来の「正社員」と役割や責任を明確にしておかないと、トラブルが発生する恐れがあります。

以下について見直す必要があります。

(1)仕事内容の分類

無期転換後の人材活用としては「直前の有期労働契約と同一の労働条件を適用する」「新たな社員区分を設ける」「正社員へ登用する」の3つのコースが考えられ、これらを組み合わせて運用することも可能です。いずれの場合も、労務制度・人事制度・正社員登用制度・人材育成の方針を検討する必要があります。

 

【無期への転換方法】

無期転換していく際に、下記の3タイプのいずれがふさわしいのかを社員本人の意向等を踏まえつつ決定していくと同時に、契約期間の変更⇒多様な正社員⇒正社員へ登用していく制度を設けるなど中長期的な視点を持ち、その後の登用のあり方をあらかじめ想定していくことが重要です。

 

①雇用期間の変更

契約期間のみを有期契約から無期契約へ変更する転換です。賃金や労働時間など、その他の労働条件は変更されません。無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない社員が対象です。

 

②多様な正社員への転換

いわゆる「正社員」と比較して、勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた正社員(「多様な正社員」)への転換です。多様な正社員では、転勤がない、残業時間に制限を設けるなどにより、働き方に制約がある社員が働き続けやすいなどのメリットがあります。

 

③正社員への転換

業務内容に制約がなく、入社後定年に達するまで勤務することを想定した、一般に「正社員」「総合職」等と呼ばれるいわゆる「正社員」への転換です。キャリアアップを図り、中核的な労働力として会社に貢献したいと考える社員が活躍できます。

(2)転換権を行使しない合意の可否

 会社として、契約社員の正社員化(有期労働契約の無期労働契約への転換)を避けるためには、そもそも、契約期間が通算して5年以上にならないようにするしかありません。ただし、契約期間が通算して5年未満であっても、雇止めの法理は適用され、労働者に契約更新の合理的期待が認められる場合には、契約は更新されることになります。

したがって、会社としては、以下のように労働者に契約更新の合理的期待が生じない客観的状況を作ることが必要となります。

 

最初の労働契約締結の際に、契約更新回数を制限する契約通算期間の上限を5年未満と する等の合意をしておく(制限回数・上限の設定にあたっては、契約更新回数が増えれば増えるほど、通算期間が長ければ長くなるほど、契約更新の合理的期待が高まることには留意してください)。

契約更新のルールは毎年厳格に運用することとし、契約期間終了の都度、更新事由の有無を厳密に判断し、更新契約書を作成する。

③①の合意をしている場合には、通算して5年を超える契約の更新は行わず、転換権行使による契約社員の正社員化の既成事実を作らない。

④契約社員を正社員化したい場合には、たとえば、通算期間が5年になる前の時点で、一定の条件を満たせば正社員として登用するなどの仕組みを別途作り、厳格に運用する。

⑤正社員と契約社員については、業務内容、権限、義務(残業の有無、勤務地制限の有無)、賃金の額、退職金の有無等の労働条件について、厳密に区別し、正社員と契約社員とで労働実態が同じとならないよう留意する。

3.労働条件の検討と就業規則の作成

転換後の無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間等)は、別段の定めのない限り、従前の有期労働契約と同一となります。

「従前の有期労働契約と同一」とされている以上、無期労働契約に転換されたからといって、無期転換労働者に、通常の正社員と同様の高額の賃金等が直ちに保障されることにはなりません。ただ、会社としては転換者とトラブルにならないためにも予め、無期転換労働者の労働条件を定めておき「別段の定め」として、無期転換労働者用の就業規則を作成するとともに、労働者が無期転換権を行使するか否かを適切に判断できるように、労働契約締結や契約更新の際に、無期転換を行った場合の労働条件について明示し予め説明しておいた方がよいでしょう。

なお、無期転換労働者の労働条件を決定するにあたっては、職種、権限、義務、賃金等の労働条件につき、契約社員、通常の正社員との関係でバランスのとれたものにしておく必要があります。この点につき、厚生労働省から、平成28年12月20日に「同一労働・同一賃金のガイドライン案」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdfが出ています。

無期転換労働者に対し、①従来どおり、労働時間、職種、勤務地に制限を加えつつ、契約社員時と同様の低廉な賃金を支払う、②通常の正社員と同じように、職種変更や転勤の義務を課しつつ、他の正社員と同様の高い賃金を支払うとの二つの労働条件を提示し、労働者に選択させるとの対応をとることも考えられます。

おわりに

契約社員を雇用したり、雇用を予定している会社としては、遅くとも、最初の無効転換の申込みが生じうる平成30年4月1日までに、何らかの対応をとっておく必要があるでしょう。

厚生労働省では、労働契約等のセミナーを行っていたり、無期転換への対応がスムーズに行えるように、様々な支援を行っていますので、対応が困難だと感じている企業はぜひ支援策を活用してみてください(有期労働契約の無期転換ポータルサイト:http://muki.mhlw.go.jp/)。

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