30%を超え続ける新卒3年後離職率、原因と対策は?
2014年3月に大学を卒業した人の約3割が、入社した企業を退職していることが厚生労働省の発表で明らかになりました。
大学新卒者の3年後離職率が3割を超えていることはそれほど珍しいことではありませんが、やはり初めて入社した企業をすぐに辞めてしまう背景は気になるところです。今年の発表を機に、新卒者の早期退職について述べていこうと思います。
2014年大卒者の3年後離職率
厚生労働省によると、2014年3月大卒者の3年後離職率は32.2%で、前年を0.3%上回っており、2010年以降5年連続で30%を超える結果となりました。
また、産業別の離職率は以下の通りです(括弧内は前年の3年後離職率)。
2014年新規大卒就職者の産業分類別3年後離職率
1位 宿泊業、飲食サービス業 …50.2% (50.5%)
2位 生活関連サービス業、娯楽業 …46.3% (47.9%)
3位 教育、学習支援業 …45.4% (47.3%)
4位 小売業 …38.6% (37.5%)
5位 医療、福祉 …37.6% (38.4%)
6位 サービス業(他に分類されないもの)…35.4% (36.4%)
7位 不動産業、物品賃貸業 …34.9% (35.9%)
8位 学術研究、専門・技術サービス業 …32.9% (32.2%)
9位 建設業 …30.5% (30.4%)
10位 卸売業 …29.2% (28.5%)
11位 運輸業、郵便業 …26.8% (26.0%)
12位 情報通信業 …26.6% (24.5%)
13位 複合サービス事業 …24.5% (23.2%)
14位 金融・保険業 …21.8% (21.0%)
15位 製造業 …20.0% (18.7%)
16位 鉱業、採石業、砂利採取業 …11.9% (12.4%)
17位 電気・ガス・熱供給・水道業 … 9.7% (8.5%)
全体的な傾向は例年と同じであることが分かります。
1位の宿泊業、飲食サービス業では、不規則な労働時間を強いられることにうまく適合できずに退職する労働者が多いことが推測できます。
逆に、16位の鉱業、採石業、砂利採取業と、17位の電気、ガス、熱供給、水道業では、転勤が比較的少ないことや、シフトがしっかり組まれていることが離職率の低さに繋がっていると思われます。
早期離職が起こるワケ
1.労働条件・休日・休暇の条件がよくない
長期残業や過労死問題は頻繁にニュースにもなっており、新卒者は企業選びをする際に労働時間や休暇を重視しやすいです。
会社の説明会や面接だけでは残業時間、休日労働がどれほどのものであるかを伝えることは難しく、入社後自分の理想の働き方から離れすぎていると感じて早いうちに退職してしまうのでしょう。また、会社の風土として残業が常態化してしまうと、人によっては自分に合わないと思い辞めてしまうこともあるかもしれません。
宿泊業、サービス業、娯楽業における離職率が高めなのも、休日が少なく労働時間が長くなりやすいことが原因であるといえます。
2.人間関係
せっかく働くのなら、同輩や上司と良好な関係を保ちながら働きたいという人がほとんどと思われます。これは、単純に険悪な関係を築いてしまうことや、コミュニケーションがあまりない職場が苦痛であるというだけでなく、いわゆる「パワハラ」、「セクハラ」を受けて仕事を辞めざるを得ないという事態に陥ることがあります。
3.仕事の内容が合わない
これについても1と同じく、どのような仕事に就くかは実際に入社した後でないと分からないことから、会社が労働者にやってほしい仕事と、内定者が持っていた情報や理想がうまく噛み合わないために起こってしまうと考えられます。
早期離職を少しでも減らすためには
・労働条件の見直し
労働時間に対する不満を減らすためには、休日や残業時間を見直すことはもちろん、有給休暇を申請しやすい職場づくりを目標に掲げることが大切です。特に、風土として残業が常態化している場合、これを変えていくことは容易ではありません。新入社員が長時間労働に耐えきれず退職してしまう状況を打開するには、会社全体で残業に対する意識を変化させるような研修を用意するといった対策が必要です。
・コミュニケーション不足の改善
良好な社内の人間関係を築くことは、仕事に対するモチベーションの上昇に繋がります。職場のコミュニケーション不足を改善するには、報告、連絡、相談をメールだけではなく口頭でも行わせることです。単にコミュニケーションを活発にさせるだけではなく、情報が職場全体に伝わっていないという事も防ぐことができます。また、飲み会や社員旅行を定期的に行うことももちろんコミュニケーションの活発化に繋がりますが、そういったものに参加することが苦手な社員もいるはずなので、強制的に参加させることは控えたほうが良いかもしれません。
さらに、新人社員が先輩社員に1対1で相談できるような状況を生み出していくことも必要です。多くの人の前では言えない仕事に対する不安も、信頼できる上司に相談することで、新入社員が会社についてどのような不満を持っているのかを明らかにできる可能性もあります。
実際に離職率の低下に成功した例
・カネテツデリカフーズ株式会社
「仕事は見て覚えろ」という会社の風土があったために現場での新人へのコミュニケーション不足が起こり、入社3年以内離職率が50%近くになっていました。しかし、現場の若手の先輩が新人をマンツーマンで教育するという「新入社員指導員制度」を作り浸透させることで、職場内のコミュニケーションが活発になり、離職率の大幅な低下に成功しました。
・株式会社レオパレス21
研修をあまり行わず教育を現場任せにしていることが高い離職率に繋がっていると判断し、管理職研修や営業力強化研修を始めとした様々な研修を用意したそうです。さらに、「労働時間イコール評価ではない」として評価制度を改め、長時間労働している人が偉い、という意識を改善したことで、残業時間を減らすことにも成功しています。
まとめ
厚生労働省の発表の通り、3年後離職率は例年30%前後を推移しており、どのような対策をしても退職してしまう新卒者も一定数存在していることから、何が原因で自社の離職率が高くなっているのかを把握することが難しいこともあると思います。そのような場合には、まず、早期退職をしてしまう人が、労働条件、人間関係、仕事に対するモチベーションのどこに不満を持つ傾向にあったのかを明らかにすることが大切です。
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